黒鍵ペンタトニック 「鉾をおさめて」(中山晋平)
「鉾をおさめて」(中山晋平)
「東京行進曲」をはじめ、中山晋平のヒットした流行歌の多くは四七抜き音階でも短音階を使ったものが主流となります。代表曲「船頭小唄」や「波浮の港」も四七抜き短音階で作られています。
さて四七抜き短音階とは?白鍵の音だけで示せるイ調の短音階で見てみます。音階の4,7番目の音を抜くと「ラシドミファラ」との5音階になります。この音階での有名曲を上げると、「さくらさくら」「美しき天然」など、音階中の半音「ミファ」「シド」の音程が何とも言えない哀愁を漂わせるように思います。晋平が得意とした四七抜き短音階による曲作りは、古賀政男に引き継がれ「人生劇場」「悲しい酒」等々、いわゆる演歌の基礎となります。不思議なもので前世代の晋平の曲の方がモダンに聴こえ、後世の古賀の曲の方が復古調に聴こえてしまいます。
これはどうも歌唱法にも原因があると思います。晋平の曲をレコードに吹き込む常連歌手、佐藤千夜子は東京音楽学校声楽科出身、西洋式の発声法で歌うためモダンに聴こえるのかもしれません。今回紹介するのは、その男性版、オペラ、藤原歌劇団の創設者、藤原義江が歌唱する晋平作曲の「鉾をおさめて」(1928年)です。なおこの曲は全編、四七抜き長音階で出来ているので、黒鍵だけで弾けます。