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コロナ禍での新習慣

さてコロナ禍になって、接触感染対策の一環として、私はレッスンでの楽譜への書き込みをやめました。

その代わりに始めたのが、皆さんのレッスン曲の楽譜を予めスキャンしてiPadに取り込み、タッチペンで画面上にする書き込みです。その書き込みをレッスンの終了時にプリントアウトして皆さんにお渡ししています。(自分でプリント出来る環境がある方にはメールでデータを送っています。)

かれこれ2年以上続けてきましたが、コロナが収束した後もこの方法を継続しようと思っています。

その理由の第一は、レッスンの記録がしっかりと手元に残るからです。従来の直接書き込みだとレッスンを受けた皆さんには記録が残りますが、私の手元には残りません。ですから、次のレッスンでは、前回のレッスンで何をやったかを思い出すことから始めなければなりませんでした。ところが記録が手元に残っていれば、その作業は不要。前回からの引継ぎがスムースにできます。

理由の第二が皆さんの楽譜を汚さずに済むからです。やはり自己所有ではない楽譜に私の汚い字で書き込みをするのは、どこか抵抗がありました。ですが、今ではのびのびと遠慮なくタッチペンで自由に書き込みができ、私の精神衛生上とても良いのです。

我ながら面倒かつ回りくどい方法だと思いますが、今後もどうぞお付き合い頂ければ幸いです。

 

黒鍵ペンタトニック 「木綿のハンカチーフ」

「木綿のハンカチーフ」

前回の今月の一冊で取り上げた『ニッポンの編曲家』で歌謡曲における編曲家やスタジオミュージシャンにスポットライトを当てましたが、やはり何と言ってその中心は作曲家です。特に2020年10月に亡くなった筒美京平は、まさに「歌謡曲の大巨人」でした。氏の曲は私にとって幼少期からテレビなどで浴びるように聴いてきました。いわば私のルーツミュージックといっても過言ではありません。ですから以後、ここでは敬愛を込め「京平先生」と呼称します。

京平先生の作る曲は、世界最先端で流行するサウンドを取り入れつつも、日本人になじみやすいメロディであることが特徴の一つといえます。いわば洋食メニューなのに、ご飯とみそ汁がでてくる、いわば「定食」のような親しみがあります。そして数多くあるヒット曲では、ペンタトニック(5音階)で作ったものもかなりあり、この「黒鍵ペンタトニック」では、今後何曲も紹介することになるでしょう。

そのスタートを飾るのにふさわしいのが、「かすかべ親善大使」である太田裕美さんが歌う「木綿のハンカチーフ」でしょう。この曲は男女の手紙の往復でストーリーを紡ぐ松本隆氏の画期的な歌詞が注目されますが、京平先生の作曲技術も負けていません。冒頭の都会へ旅立つ男性のパートには、素朴なペンタトニックを充て(上記譜面)、田舎に残っている女性が登場するサビになると通常の7音階に切り替わり、男女の心象風景のコントラストを見事にメロディで表現しています。

このペンタトニック(5音階)と通常の音階(7音階)で対比する方法は、「上を向いて歩こう」とも共通し、ヒット曲の黄金パターンの一つといえるでしょう。

今月の一冊  川瀬泰雄他著 『ニッポンの編曲家』

『ニッポンの編曲家』

川瀬泰雄他著/DU BOOKS/ISBN(13)978-4907583798

歌謡曲において、作曲家・作詞家が注目されることは、ままあります。ですが、その周囲の編曲家やスタジオミュージシャンまでは、なかなかスポットライトは当たりません。この本では70&80年代に歌謡曲を支えた、そうした裏方スタッフの皆さんのインタビューを中心にまとめています。1曲がどのようなチームワークによって完成へ向かっていくのかが分かる良著です。

ぷりま音楽歳時記 15.ロ短調

<ロ短調>

ロ短調は、♯が2つ。白鍵の中でも特に不安定な「シ」が主音。16世紀以降になり、ようやく実際の曲でも用いられるようになりました。

<ロ短調の曲>

「白鳥の湖」より「情景」(チャイコフスキー)

言わずと知れた、チャイコフスキーの三大バレエの中の一つ。湖で泳ぐ優雅で儚い白鳥のイメージとロ短調のもつどこか不安定で物憂げな感じはとても相性がよいと思います。今回紹介するのは、カラヤン指揮、ベルリン・フィルによる1971年録音の演奏です。

心身ともに健康を目指して

ピアノレッスンの仕事はほぼ内勤といえます。弾く時に辛うじて上半身は使うものの、どうしても運動不足になりがちです。人間の筋肉の7割が下半身に集まっているそう。ですから、ここ数年、意識的に下半身を動かし運動不足の解消に努めるようになりました。ただランニングだとハード過ぎて嫌なので、もっぱらのんびりとウォーキングしています。この1年は1日1万歩を目標にスマホの万歩計アプリを頼りに何とか継続しています。

歩くコースはどうしても似通ってしまい飽きがくるので、いつも新鮮な気持ちでいるために、ヘッドホンやイヤホンで、音楽を聴きながら歩いています。「今日は筒美京平にしよう、70年代のディスコ歌謡がいいな。」などと、聴く曲も日替わりにしています。すると「今日は何を聴くか?」ということがモチベーションとなり、今やウォーキングはすっかり日常の楽しみになってしまいました。いつも歩いているコースも、聴く曲が変化すると、風景も少しだけ違って見え、新たな発見もあったりします。この聴く曲の変化のおかげで飽きずに何とか継続できている気がします。

歩くようになって、夕食を終え、歯磨きを済ます頃には、強烈な睡魔に襲われるようになりました。本当なら、もう一仕事して考え事などもしたいところですが、とりかかってもいつの間にか寝落ちしていることが多くなりました。「コロナうつ」など取り沙汰されますが、心身ともに何とか健康をキープできているのも、運動と音楽のおかげといえましょう。こんな情勢ですが、少しでも元気にやっていきたいものです。

黒鍵ペンタトニック 「ゴンドラの唄」

「ゴンドラの唄」

前回記した山田耕筰は、歌曲の作曲のみならず、日本初の交響曲を作り、交響楽団を率いるなど正統的にクラシック音楽の道を歩んでいきました。

その山田と、同い年で、同じ東京音楽学校出身の作曲家が中山晋平です。(ちなみに1908年に山田は卒業、入れ違いで同年、中山が入学しています。)

中山の歩みは山田とは対照的でした。中山は音楽か文学科で進路に悩む青年で、劇作家の島村抱月の書生を務めました。その傍らに音楽学校に通うという少し変わり種の音楽学校生でした。

その中山の作曲家としてのキャリアは島村主宰の劇団「芸術座」の舞台での劇中歌(現在でいうドラマ主題歌に相当)の作曲から始まります。「カチューシャの唄」「ゴンドラの唄」「さすらいの唄」と立て続けに、レコード・楽譜販売でヒットを飛ばします。今回はその中からペンタトニック(5音階)で作られたゴンドラの唄を取り上げます。

なおこの3曲とも歌唱してレコードに吹き込んだのは、「芸術座」の看板女優、松井須磨子でした。須磨子は1918年にスペイン風邪を患い急逝した島村の後を追ってしまいます。座長と看板女優を失った「芸術座」はそのまま解散します。

ですが中山晋平はこの一連の劇中歌のヒットを足がかりに近代日本の流行歌の礎を築いていきます。

 

1915年(大正14年)6月 松井須磨子歌唱によるレコード(ニッポノホン) 

1952年(昭和27年) 映画「生きる」劇中 志村喬による歌唱

 

 

今月の一冊  黒澤明監督 映画『生きる』

映画『生きる』

黒澤明監督/東宝/EAN:4988104095794

今回紹介するのは、1953年公開、黒澤明監督の映画「生きる」です。作品中で主人公の志村喬が「ゴンドラの唄」を2度歌います。物語の中盤にジャズバーのシーンで市村俊幸のピアノ伴奏で歌うシーンがとても印象深く、私の心の中に残っています。この曲の作曲家、中山晋平は、公開年の12月2日にこの映画を鑑賞しています。「ひどく感動したようだ」という周囲の証言も残っています。この映画を見届けた晋平は同年12月30日にこの世を去っています。

ぷりま音楽歳時記 14.ホ短調

<ホ短調>

ホ短調は、♯が1つ。平行調のト長調と同様に開放弦が使えるので弦楽器で演奏しやすい調。音楽理論家マッテゾンはこの調を「深く沈み考えこむ調」と性格づけてもいます。

<ホ短調の曲>

ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 Op.64(メンデルスゾーン)

ホ短調の代表曲といったらまず挙げられるのがこの曲。ドイツロマン派、メンデルスゾーンによる大名作です。今回紹介する演奏は、ヴァイオリンがアイザックスターン、ガリー・ベルティーニ指揮、イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団による1986年のライブ録音です

一言でレッスンといっても

一言でテレビドラマといっても様々です。NHK朝の連続テレビ小説のように毎日15分ずつ半年間放送するもの、3か月を1クールで毎週1時間ずつ放映するもの、はたまた2時間以上の長尺でじっくり放送するものと様々です。内容にしても、紆余曲折の恋愛ドラマ、いつも通りの時間に解決する刑事ドラマ、謎が謎を呼ぶサスペンス、壮大なスケールの時代劇、きっと皆さんにも好みのタイプのドラマがあると思います。

こうしたドラマとレッスンは少し似たところがあると思っています。例えば長大な曲を丸一年かけて練習したい大河ドラマタイプの方。逆に1回のレッスンで1曲を済ませたい「水戸黄門」タイプの方もいます。また、3,4か月を1クールで1曲仕上げるペースで複数曲を同時併行していく方もいます。

一言でレッスンといっても、生徒さんそれぞれタイプも異なり、その内容も実は多岐に渡ります。一つのテクニックについて説明の仕方も人それぞれです。100%納得いくまで徹底的に伝えるケースもあります。また80%程度理解できたところで留めるケースもあります。

ただしそこでミスマッチが生じるのはよくありません。マッサージでいえば、患部を揉み足りないのは駄目ですが、強く揉み過ぎて痛くしても駄目なのと同じです。何事も丁度よい加減が肝要です。やはり気持ちよくレッスンが進んでいくのが理想です。それには教わる側、教える側の双方のコミュニケーションが欠かせません。レッスンにおける過不足等ありましたら、ご遠慮なくお声かけ下さい。

黒鍵ペンタトニック 「赤とんぼ」

「赤とんぼ」

前回も触れたNHK朝の連続テレビ小説「エール」が遺作となってしまった志村けん演じるのは小山田耕三。そのモデルは言わずと知れた山田耕筰です。ちなみに柴咲コウが同ドラマで演じるオペラ歌手、双浦環のモデルは三浦環。実際の二人の年齢はドラマとは逆で、三浦環の後輩が山田耕筰。東京音楽学校時代、「自転車美人」として学内のアイドルだった三浦。その憧れの先輩にとうせんぼうなどの悪戯をして冷やかすガキ大将の後輩たちの中に、山田がいたと三浦は述懐しております。

さて山田耕筰は、日本歌曲のモデルを確立した第一人者です。ここからは山田の弟子の作曲家、團伊玖磨の言葉を借ります。『山田耕筰は日本の作曲家として初めて、言葉と音の結びつきについて真正面から取り組み、そして考えぬいた末に「言葉の抑揚と旋律の抑揚の一致」「一音符一語主義」というシステマチックな理論を独力で作り上げました。さらに、その実践として膨大な歌曲を作曲しました。』(團伊玖磨:「私の日本音楽史」<P.273~274>)

言葉の抑揚とメロディラインが一致すると歌詞の意味が格段に伝わり易くなります。「赤とんぼ」はその好例で、後世に残したい童謡で、常に上位にランクするのもその証左といえます。ただし「一音符一語主義」はこのようなゆっくりとした曲には適するものの、より速い言葉、より速い音楽の動きが生まれなくなってしまうと團氏は指摘しています。このことは、日本語でロックンロールを唄う時に再びクローズアップされることになるのですが、それはまた別の機会で。

この「赤とんぼ」は明治の唱歌の作曲手法に倣って四七抜長音階の五音(ペンタトニック)で作られています。ですが、山田の作品で純然な五音階による曲は少数です。ドイツ留学で本格的に西洋クラシック音楽を学んだ影響もあり、あえてその使用を避けたのかもしれません。

1955年の映画「ここに泉あり」では本人役で山田耕筰が出演

映画中、「赤とんぼ」の演奏シーンも

今月の一冊 團伊玖磨著『私の日本音楽史』

『私の日本音楽史』

團伊玖磨著/NHK出版/ISBN(13)978-4140841013

この本は、1997年にNHKで放送された、作曲家・團伊玖磨氏によるテレビ講座のテキストに加筆したものになります。團氏は、「ぞうさん」「ラジオ体操第二」の作曲家としても私たちにもおなじみです。また、雑誌「アサヒグラフ」でエッセイ「パイプのけむり」を36年間に渡り長期連載するなど、随筆家としても筆が立ちました。なおこの本は絶版本ですが、中古本であれば比較的入手しやすいと思います。(2022年5月現在)

ぷりま音楽歳時記 13.イ短調

<イ短調>

今回より短調です。さて最初は調号なしのイ短調です。同主調が非常に明るいイ長調(♯3つ)なので、そのコントラストで一層悲しみが増すように感じます。

<イ短調の曲>

ピアノ協奏曲 作品16 第1楽章(グリーグ)

ノルウェーの作曲家グリーグによるこの曲、冒頭の劇的なピアノソロは、テレビなど「悲劇的」なシーンのBGMでよく耳にするように思います。今回紹介するのは、ルービンシュタインの演奏。1975年の映像で、当時88歳!翌年には演奏活動から引退、晩年の見事な演奏です。

アポロ的・ディオニュソス的

以下「おたより」2020年10月号(第13号)の内容を掲載いたします。

以前、ニーチェの処女作、「悲劇の誕生」を読みましたが、私には難解で内容の理解には程遠かったものの、芸術における「アポロ的」「ディオニュソス的」という対概念を知りました。

アポロとディオニュソスは共にギリシア神話に登場し、アポロは光明と明晰の神で、ディオニュソスは酒と陶酔の神です。ニーチェは『芸術の発展というものは、アポロ的なものとディオニュソス的なものという二重性に結びついているということだ。それはちょうど生殖ということが、たえずいがみあいながらも周期的に和解する男女両性に依存しているのに似ている。』と述べています。つまり理知的な「アポロ的」な面と、本能的な「ディオニュソス的」な面は、芸術にとって車の両輪でどちらも不可欠で、絶妙なバランスで共存した時に、芸術の華が大きく開くのだと、勝手に理解したつもりでいます。

そうなると、このコロナ禍で分が悪いのは「ディオニュソス的」な面です。三密空間で気分を上げて盛り上げるというのは、どうにもはばかれます。どこか冷静になって水を差さねばならず、つい「アポロ的」な面に偏りすぎるかもしれません。すると、どこかつまらぬものに、なってしまわないか?

来年の3月を目標に、発表会イベントを再開させようと思います。現段階では具体的な詳細までは見通せませんが、いずれにしてもコロナ対策を万全に期したいと思います。ただ、その時に気分がしらけず、少しでも心温まるよう工夫して実施したいと思います。(コロナ感染が収束するのがベストなのですが…)

黒鍵ペンタトニック 「船頭可愛や」

「船頭可愛や」

作曲家、古関裕而を主人公のモデルにしたNHK朝の連続テレビ小説「エール」の劇中にも度々登場した曲、「船頭可愛や」を今回は取り上げようと思います。

この曲は「利根の舟歌」に続いて作詞家、高橋掬太郎とのコンビで作った曲で、古関裕而にとっては出世作となりました。「『利根の舟歌』は短調だったが、『船頭可愛や』は瀬戸内海あるいは、遠洋漁業の男を想う歌なので、長調でいわゆる田舎節で作曲し、間奏には再び尺八を使ってみた」(『鐘よ鳴り響け』<54~55頁>)と古関氏が述べている通り、この曲は田舎節つまり「四七抜き長音階」のペンタトニックで作られています。

ただし古関氏の戦後の代表曲、東京五輪の「オリンピックマーチ」や高校野球の「栄冠は君に輝く」などでは、素朴なペンタトニックは使わず、半音階的なモダンな音使いで作曲しています。それもそのはず。古関氏は若かりし頃、近代フランス・ロシアの音楽に夢中で、地元・福島で開催されたレコードコンサートには欠かさず通ったとのこと。また、近代的なの管弦楽法の規範ともいえる作曲家リムスキー=コルサコフの弟子、金須嘉之進にも古関氏は師事し、モダンな音作りにも精通していました。

音丸による歌唱でヒットしました(1935年、昭和10年)。

それを気に入り、世界的なプリマドンナ三浦環もレコーディングしました。(1939年 昭和14年)

今月の一冊 古関裕而著『鐘よ鳴り響け』

『鐘よ鳴り響け』

古関裕而著/集英社文庫/ISBN(13)978-4087440591

今回は、NHKの朝の連続テレビ小説「エール」の主人公のモデルになった、作曲家・古関裕而の自伝を。私の勝手なイメージでは古関氏は「応援歌」の達人。プロ野球、巨人の「闘魂こめて」、阪神の「六甲おろし」も古関氏が作曲しています。(ちなみに中日の初代応援歌も。)たとえライバル同士であっても、党派を越えて作曲依頼に応じる古関氏の応援精神の由来に興味を持ち、この自伝を読みました。後半の劇作家・菊田一夫氏との対談で、古関夫妻の仲睦まじさを、菊田氏に暴露されているのが、大変ほほえましかったです。

ぷりま音楽歳時記 12.へ長調

<ヘ長調>

ヘ長調は♭が1つ。この調は、のどかな自然風景を描写するのに適していると思います。どこかオーガニックな雰囲気を感じます。

<ヘ長調の曲>

イタリア協奏曲 第1楽章(J.S.バッハ)

この曲は強弱の変化をつけられる2段鍵盤のチェンバロを想定してバッハが作曲。バッハの鍵盤曲には珍しく作曲者本人が、f、pの強弱記号を明記しています。今回紹介する演奏は、カナダのピアニスト、グレン・グールドによる1959年の録音です。

以下この演奏の録音時の模様を記録したドキュメンタリー・フィルムです。

虎視眈々と次なる準備

ジャズでは第二次世界他薦中に、突如としてビバップという新たな形態が登場します。それまでは、大編成のビックバンドによるダンス音楽であるスウィングがジャズの中心でした。対してビバップは小編成の即興演奏で、テンポも速く、音楽に合わせて踊ろうにも踊れない。人々は音楽に注意深く耳を傾ける他ありません。ジャズが「踊る」音楽から「聴く」音楽へ変化したのです。

元々ビックバンドで演奏していたメンバーは譜面通りに演奏するスウィングに飽きていました。ステージ仕事の後、そのウサ晴らしのためにジャムセッションをしたのが、ビバップのきっかけです。録音技術の発展と共に歩んできたジャズはその最初期から録音が残っています。が、ビバップの草創期は中抜けしてしまいます。なぜなら1942年8月から2年強、音楽家ユニオンがストライキを起こし、録音を拒否したからです。

ストライキ明けの戦後、それまで潜伏して熟成されたビバップのジャズレコードが一挙に発売され、人々は驚かされたのです。そしてここからモダンジャズの時代の幕が上がるのです。

さて、ここからは私の勝手な空想です。当時と現在のコロナ禍の状況はどこか似通っているように感じています。現在、音楽家の多くは潜伏せざるを得ない状況が続いています。が、コロナ収束後、それまで地下で蓄えられたエネルギーが一気に噴出し、新たな音楽の時代がやってくるのではないか?

そして今、新時代に向けて虎視眈々と準備を進めていくことこそ大切なのだと思っています。あくまでも前を向いていこうと思います。

ビバップ草創期1941年5月の貴重な録音「スウィング・トゥ・バップ(別名:ミントン・ハウスのチャーリー・クリスチャン)」

黒鍵ペンタトニック 「うちで踊ろう」(星野源)

「うちで踊ろう」(星野源)

これまでの災害であれば、チャリティイベントなどで音楽はいち早く社会貢献出来ました。ですがこのコロナ禍では、「三密」の問題もあり、その力が発揮しにくかったといえます。

そんな中ミュージシャン星野源氏がインスタグラムで発表した「うちで踊ろう」は多くの人とのコラボレーションで明るい話題となり、音楽が果たした数少ない社会貢献だったと思います。

ではなぜコラボレーションが多くの人にされたのか?この曲のメロディがたった4音でできているのがその要因と考えます。しかも四七長音階のペンタトニック(5音階)の中にこの4音は含まれます。

ブルースやジャズの即興演奏(アドリブ)の基礎はペンタトニックです。5音だけで即興をする分には、どれだけ無茶をしても破綻することなくセッションはできます。こうしたブラックミュージックをルーツに持つ星野氏が、このようなことを踏まえ即興的にコラボレーションし易くするためにあえて4音で作曲し、「お題を出した」のだと思われます。

「恋ダンス」でもおなじみの『恋』をはじめ、星野氏は数々の曲で五音階で作曲するペンタトニックの使い手です。なお元々バンド活動をしていた星野氏のソロデビューを促したのが、前回の「星めぐりの歌」の時にも触れた細野晴臣氏でもあります。なかなかいろいろと意味深な気もします。

今月の一冊 渡辺裕著『聴衆の誕生』

『聴衆の誕生』

渡辺裕著/中公文庫/ISBN(13)978-4122056077

今回は、四半世紀ぶりに私が読み直したばかりの本を紹介いたします。このコロナ禍で音楽の聴取には大きな変化が生じています。これまでは当たり前のようにあったコンサート文化は今、大きな打撃を受けています。この本はバブル全盛期に書かれたポストモダンの音楽文化論で、近代でのコンサート文化の成立について丁寧に記されています。コロナ後の音楽文化を考える上で、手がかりになる何かがこの本には潜んでいる気もします。

ぷりま音楽歳時記 11.変ロ長調

<変ロ長調>

変ロ長調は♭が2つ。ドと吹くとシ♭が実音として鳴るB♭(ベー)管を中心に管楽器が得意とする調。ストレスなく気持ちよくブラスが響きます。

<変ロ長調の曲>

『展覧会の絵』プロムナード(ムソルグスキー=ラヴェル)

ムソルグスキーが作ったピアノ曲を「管弦楽の魔術師」としても名高いラヴェルがオーケストラのためにアレンジ。冒頭の管楽器トランペットの響きがとても印象的です。1980年4月東京のNHKホールでのチェルビダッケ指揮、ロンドン交響楽団の演奏を今回は紹介いたします。

独立独歩で自己完結

以下「おたより」2020年8月号(第11号)の内容を掲載いたします。

緊急事態宣言が解除され、感染対策は欠かせないものの教室も再開し対面レッスンが出来るようになりました。自粛休業のウツウツとした時に比べ、レッスンが出来る喜びを噛みしめています。舞台等の実演を主にする音楽家の多くがまだまだ先の見えない厳しい状況にある中、以前と比べほぼ遜色なくレッスン出来る状況はありがたく、感謝に堪えません。

とはいえ、社会活動の中でウィルス感染の不安は、どこか頭の片隅に残っています。予防策の一つ一つにそれほど神経を使いませんが、それが積み重なるとボディーブローのように効いてきます。いつしか神経も擦り減り、気付く頃にはかなり疲労が蓄積してしまっているようです。「ウィズ・コロナ」と言葉にすれば簡単ですが、実際はそう楽でもなく、まさに「言うは易く行うは難し」を強く実感する次第です。

ですから、最近では完全に一人になった時に、感染の不安からも解放されホッとするようになってしまいました。特に一人になってピアノに向かって没頭して弾く時間に無上の喜びを感じるようになりました。これはコロナ以前にはなかった新感覚で自分でも驚いています。

ピアノはメロディ、リズム、ハーモニーを全て一人で担えます。合奏を基本とする楽器が多い中、それは特異な性質ともいえます。そのため、ピアノは独善的で、自分勝手になりやすいマイナスの面も持ちます。ですが、このコロナ禍では、それが独立独歩で、自己完結できるというプラスの面へと働いているように思います。

黒鍵ペンタトニック 「星めぐりの歌」

「星めぐりの歌」

宮沢賢治といえば、詩人・童話作家として有名なのはもちろん、「セロ弾きのゴーシュ」と作品中に楽器を登場されるぐらい音楽愛好家としても有名です。それにとどまらず、自らも音楽制作に携わり、自身で作詩または作曲した歌曲は、全27曲にものぼります。

その中で最もよく知られ、賢治が作詞・作曲共につとめたのが、この「星めぐりの歌」です。1918年(大正8年)、童話「双子の星」の作中で、歌詞が発表され、メロディ譜は、賢治の死後、1932年(昭和10年)に発刊された「宮沢賢治全集第2巻」(文圃堂刊)が初出。それも本人の自筆による楽譜ではなく、賢治が口唱したものを弟の清六が採譜をしたものだそうです。この曲は同時代の多くの童謡・唱歌などと同様に、メロディはペンタトニック(四七抜き長音階)で作られ、リズムも付点で跳ねる「ピョンコ節」が用いられ、朴訥で賢治らしさがよく表れている曲と思います。

前回紹介した映画「銀河鉄道の夜」でも登場し、主人公ジョバンニは「星めぐりの口笛」を度々、作中で吹きます。(映画ではオルゴール。)なおこの映画で音楽を担当したのは細野晴臣氏。5音階(ペンタトニック)での曲作りについては、日本ポップス界における最重要人物と勝手に私は目しております。

なお、昨年2021年のオリンピックの閉会式でもこの曲は歌われたのは記憶に新しいところ。また連続テレビ小説「あまちゃん」でもBGMとして登場したり、何かと耳にする機会の多い人気曲です。

今月の一冊 映画『銀河鉄道の夜』

『銀河鉄道の夜』

杉井ギサブロー監督/角川書店/EAN ‏ : ‎ 4988126428976

今回は「一冊」ではなく「一枚」。アニメ映画のDVDです。言わずと知れた童話の名作、宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」を紹介いたします。

このアニメ版と原作の大きな違いは登場人物が人間ではなく、猫だということです。この設定変更に賛否は色々あると思いますが、私は一層、想像力が膨らむように感じ、気に入っています。

劇中で賢治が作曲した「星めぐりの歌」がオルゴールで奏でられるのも印象的です。

ぷりま音楽歳時記 10.変ホ長調

<変ホ長調>

変ホ長調の調号は♭が3つ。管楽器がとても得意とする調です。特に低音楽器は朗々と鳴り響き、その迫力には強い威厳が感じられます。

<変ホ長調の曲>

ピアノ協奏曲第5番「皇帝」第1・3楽章(ベートーヴェン)

ベートーヴェンは「ヒーロー」を描く時、好んで変ホ長調を用いて作曲します。この「皇帝」もそうですが、交響曲第3番「英雄」でもこの調を用います。今回はツィメルマンのピアノ、バーンスタイン指揮、ウィーンフィルハーモニーによる演奏を紹介いたします。

二歩下がって三歩進む

ピアノの上達のコツは「二歩下がって三歩進む」にあると思っています。

ピアノは他の楽器に比べてややハードルが低く、習い始めて両手で弾けるようになるまで、比較的トントンと上昇気流に乗っていきます。が一旦その上昇気流が止むと、第一の大きな壁が立ちはだかります。その時期に個人差はあるものの誰にもそれは訪れるように思います。練習しても練習しても思うように上達せず、ピアノに触れることすらつい嫌気がさしてしまいます。

ピアノは一人でメロディ・ハーモニー・リズムの全てを担います。どの要素も欠かせず、そのバランスが悪ければ、当然不調をきたします。壁にぶつかる時は大体そのバランスが崩れた時に多いようです。そんな壁にぶつかった時にお奨めなのが「二歩下がって三歩進む」練習です。

具体的な例を一つ。両手でどうにか弾けるようになったものの、ところどころでつかえる場合。このような時は一旦、両手練習を止めて片手練習に戻ります。すると意外に弾けていない部分があることに気づきます。(特に伴奏がきちんと弾けていないケースが多いように思います。)片手練習の再点検を終えたら、また両手練習に戻り再チャレンジするのです。

行き詰まったら即、前進を止め「二歩下がる」のがコツです。その時にただ下がるのではなく、問題点を冷静に見直します。着眼点を少し変えてリフレッシュできれば最高です。そしてエネルギーを充分に蓄えたところで、また大きく踏み出し「三歩進んで」いきましょう。

黒鍵ペンタトニック 「SUKIYAKI(上を向いて歩こう)」

「SUKIYAKI(上を向いて歩こう)」~抜粋~

今回はペンタトニックのアメリカ曲の「やや」番外編といえます。アメリカで人気を博した日本の曲「スキヤキ」を紹介。「六八九トリオ」(永六輔作詞、中村八大作曲、坂本九歌唱)でおなじみの「上を向いて歩こう」です。

この曲はまず、1961年の11月から3ヵ月連続で日本のレコードランキングで1位になります。翌年、まずはヨーロッパ各国で紹介され人気に。そして1963年5月「SUKIYAKI」のタイトルでアメリカにて発売。「ビルボード100」で6月15日から3週連続で全米第1位となります。日本の曲が全米を制したのは後にも先にもこの曲だけになります。

では、なぜこの曲がアメリカで人気を博したのでしょうか?これはあくまで私論なのですが、前回紹介したフォスターの曲の構成との類似性を挙げます。フォスターは曲の「起承転結」の「転」以外はペンタトニック(5音階)を用いていましたが、この曲の構成も同じです。「幸せは雲の上に 幸せは空の上に」とのサビ(「転」の部分)以外はペンタトニックで作られています。

明治維新以降、西洋音楽に憧憬を抱き続けた日本の音楽界にとって、この曲の世界的な人気は「坂の上の雲」に到達した瞬間であったといえましょう。

 

今月の一冊 小澤征爾・武満徹著『音楽』

『音楽』

小澤征爾・武満徹著/新潮社/ISBN(13)978-4101228037

日本を代表する指揮者、作曲家による対談集です。出版されて40年以上も経つのに、その問題提起はまったく古びることなく、現在に通じることが多いと思います。特に「音楽の聴き方、習い方」(67頁)そこで小澤氏は、「僕も音楽の本質は公約数的なものではなく非常に個人的なもので成り立ってると思うんだよ。」と述べております。私もレッスンを進める上で、とても大切なことだと思っております。

ぷりま音楽歳時記 9.変イ長調

<変イ長調>

 

変イ長調の調号は♭が4つ。長調の明るさの中に、深い憂いを潜めている、とても味わいのある渋い調だと、個人的には思っています。

<変イ長調の曲>

ピアノソナタ第8番「悲愴」第2楽章(ベートーヴェン)

味わい深い変イ長調の代表して、この曲上げないわけにはいかないでしょう。今回紹介するのはウラディミール・ホロヴィッツの演奏。指を伸ばして弾くホロヴィッツ独特のタッチとこの曲の相性がとても良いと思います。

コロナが終息した暁には

以下「おたより」2020年6月号(第9号)の内容を掲載いたします。

今回の新型コロナウィルス感染にはホトホト参ってしまいました。今まで何気なく出来ていた対面レッスンが、まさか出来なくなる日が来るとは、つい数カ月前には想像することさえ出来ませんでした。

そして、非常事態宣言の中、対面制限を余儀なくされ、それに対応せざるをえませんでした。個人的にはLINEも始め、メールも今まで以上に使って苦手な文字コミュニケーションにも励むようになりました。そしてオンラインレッスンのテストのため、渋々ビデオ通話も始めることになりました。ところがメールやSNSに比べて、以外にも気楽に使えたので自分自身とても驚いています。やはり文字情報だけではどこか不安なのかもしれません。顔を見て声が聞けるビデオ通話の方が私にとっては安心感が強いようです。かくしてこのコロナ禍に、私のコミュニケーション法に大変革がおとずれたのでした。

さて14世紀半ば、ペストが流行したヨーロッパではカトリック教会の権威が失墜し中世が終焉、ルネサンス(文芸復興)に至ります。このコロナがペストほどの脅威かは一旦おき、なるほどパンデミックが人の意識に大きく影響することを、この度身をもって実感しました。

コロナが終息した暁には、もしかしたらルネサンスのように世界の価値観が変わり、その歴史的瞬間に立ち会えるかもしれない。そう思えば悪いことばかりでもなく、明るい希望もあるのかもと、少しばかり強がっています。一先ず対面レッスンは再開しました。やはり対面レッスンが一番いいですね。

黒鍵ペンタトニック 「草競馬」

「草競馬」

前回に引き続き今回もペンタトニックのアメリカ曲を取り上げます。

今回紹介するのはおなじみの作曲家、スティーブン・フォスター(1826-1864)です。フォスターが作曲した歌曲の多くは、ミンストレル・ショーのために作られました。ミンストレル・ショーとは、白人が顔を黒く塗り、黒人に模し面白くおかしく演じるといった、現代では考えられない大変差別的なものでした。次第にフォスターはその低俗さに悩むようになり、奴隷的に扱われる黒人の深い悩みに対して共感を示す作風に変化していきます。

ただし白人であったフォスターの作曲スタイルはあくまでも出身のアイルランド移民らしいものであり、それに対する賛否両論もありました。しかし彼の黒人文化に深く寄り添おうという姿勢こそ、フォスターが「アメリカ音楽の父」と呼ばれる所以だと思います。

そのフォスターもペンタトニック(5音階)を多用しています。今回紹介する「草競馬」は全曲を通してペンタトニックで作られています。そのほか、「おおスザンナ」「故郷の人々」では、曲の「起承転結」の「転」の部分では普通の7音階が使われていますが、残りの部分ではペンタトニックで作られています。

1939年のフォスターの自伝映画「スワニー河」よりアル・ジョルソンの歌唱による「草競馬」

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