黒鍵ペンタトニック 「アメイジング・グレイス」
「アメイジング・グレイス」
ペンタトニック(5音階)によるメロディは何も日本の童謡・唱歌だけに限られません。前回アメリカ民謡の「メリーさんの羊」を取り上げたように、様々な人種が集まるアメリカでも好まれます。今回よりしばらくアメリカの曲でペンタトニックを用いている例をみていきたいと思います。
まずは、カール・パーキンスが歌うロックンロール・ナンバーの「ブルー・スエード・シューズ」(1956年)はペンタトニックのメロディです。
この曲はビルボードのカントリーチャートで第1位、R&Bチャートで第3位を獲得します。白人に人気のカントリーと黒人に人気のR&B、共にチャートインしたのは、当時はとても珍しいことでした。そしてこの曲はエルヴィス・プレスリーにもカバーされ、さらに認知度を上げて異なる文化の融合音楽である、ロックンロールのスタンダードナンバーになります。
さて今回紹介する「アメイジング・グレイス」ですがこの曲もまた異なる文化が融合した結晶と言えます。1772年、イギリスの牧師J.ニュートンにより作詞されます。黒人奴隷貿易に手を染めた彼の後悔が歌われています。作曲者は不詳で、アイルランドかスコットランドの民謡を基にしたという説、またはアメリカ南部の黒人労働者の歌を基にしたという説もあります。
ペンタトニックはこのように異なる文化背景の音楽が混ざり合うときに、触媒のような役割を果たすのかもしれません。