- 春日部で40年。あなたの街の音楽教室。ミュージックファームぷりま

ピアノ・声楽・ギター・バイオリン・フルート・クラリネット

黒鍵ペンタトニック 「春よ、来い」(松任谷由実)

「春よ、来い」(松任谷由実)

さて「春よ来い」がタイトルになる曲を紹介するのはこれで3回目(正確には今回の曲名には句点が入ります。)。やはり春を待ち乞う気持ちはつい5音のペンタトニックで表したくなってしまうのでしょう。

さてこの曲の作者は「ユーミン」こと松任谷由実です。ユーミンと前回触れた「はっぴいえんど」とは縁が深く、荒井由実としてデビューしてからしばらくバックバンドを務めたのが、解散した「はっぴいえんど」の細野晴臣・鈴木茂が新たに立ち上げた音楽ユニットであるキャラメル・ママ(ティン・パン・アレー)。ちなみにドラムに林立夫、キーボードに松任谷正隆が参加します。ジブリ映画でもおなじみの「ひこうき雲」「やさしさに包まれたなら」の演奏はこのメンバーの手によります。さらに「はっぴいえんど」の元ドラマーで、作詞家に転身した松本隆が実質的にプロデュースした松田聖子プロジェクトにもユーミンは、呉田軽穂のペンネームで作曲陣に加わり、「赤いスイートピー」等のヒット曲を連発。

さてこの曲は1994年に発表された松任谷由実名義のシングル曲です。曲全体は自然短音階(ラシドレミファソラ)で出来ています。自然短音階の名曲は多く、藤山一郎「青い山脈」、ジュディ・オング「魅せられて」等、枚挙にいとまがありません。そしてこの曲はサビで二六抜き短音階となり、上記の譜面は黒鍵だけで弾けるのです。

黒鍵ペンタトニック 「春よ来い」(はっぴいえんど 作曲:大滝詠一)

「春よ来い」(はっぴいえんど

前回に引き続き大滝詠一です。大滝詠一は伝説の「日本語ロック」バンド、「はっぴいえんど」のボーカルでデビューします。他のメンバーはベース、後にY.M.O.でも名を馳せる細野晴臣、ドラム、後に人気作詞家となる松本隆、ギターは編曲家・スタジオミュージシャンとして活躍する鈴木茂の4名です。

松本が作る日本語詞に、残りのメンバーで作曲し各々が歌うのが、このバンドの基本形態でした。そして1970年のデビュー当時、バンドの方向性を決定づけたのが、大滝の作曲術だと考えます。従来の歌謡曲にない和音進行や転調と難しい技術を駆使しますが、かといって聞き馴染みしやすいメロディを紡ぎ、まるで魔法のような作曲術といえます。そこで肝になるのが曲中で使用される音階です。特に初期の大滝作「12月の雨の日」「春よ来い」「かくれんぼ」のメロディには一般的な長調や短調ではなく、「レ」から始まる「ドリア旋法」(レ ミ ファ ソ ラ シ ド レ)が使用されています。なおこのドリア旋法はイギリス民謡の「グリーンスリーブス」や日本の「君が代」でも用いられています。

さらに「春よ来い」「かくれんぼ」は「二六抜きのドリア旋法」(レ ファ ソ ラ ド)で二六抜き短音階と同じ音程構造になります。ですから上記、黒鍵だけでメロディが弾けるのです。

半音程がない5音階での曲では、ロマンティックな声質も持ち合わせる大滝詠一のシンガーとしての魅力が最大限引き出せず、少し勿体ないようにも個人的には思います。

今月の一冊 『ニッポンの音楽(増補決定版)』(佐々木敦)

『ニッポンの音楽(増補決定版)』(佐々木敦)

昨今の出版不況で文庫・新書であってもすぐに絶版になってしまう中、元々新書だったものが文庫として増補版で復活したのがこの本です。

昭和40年代の「はっぴいえんど」を出発点に「J-pop」がどのように生まれ、変化し、そして現在に至っているのか?おおよそ日本のポピュラー音楽の半世紀の歴史を眺めています。

今度は絶版にならず何とか踏みとどまってほしいものです。

黒鍵ペンタトニック 「イエローサブマリン音頭」(PD 大瀧詠一 )

イエローサブマリン音頭」(PD 大瀧詠一

前回も触れたように昭和末ぐらいまでは地域の夏の盆踊りも盛んで新作音頭も作られたものでした。

とりわけその中で取り上げたい新作音頭の作者が大滝詠一です。「風立ちぬ」「夢で逢えたら」等のヒット曲の作者として知られ、自身のアルバム「ア・ロング・バケイション」も大ヒットします。そしていまだにJポップの金字塔として君臨する作品でもあります。

ですがこの直前に大滝が手がけたアルバムが「レッツ・オンド・アゲン」という新作音頭を中心にしたアルバムなのです。残念ながらまるでうれず、稀代の迷盤として一部に熱く支持されるにとどまります。そこで次こそは「売れる音頭」を目標に目をつけたのが、かのビートルズの「イエローサブマリン」。「ア・ロング・バケイション」がヒットした翌1982年にこの曲を音頭に仕立てます。

大滝はプロデューサーとして、この曲中に「軍艦行進曲」「おけさ節」等の日本の古い曲や「抱きしめたい」「デイトリッパー」等、ビートルズの曲の一部を引用することを提案します。それを実行し、実際に編曲をしたのは、大滝が敬愛するクレイジーキャッツでおなじみの萩原哲晶(ちなみにこの作品が遺作に)。日本語訳詞は大滝の盟友である松本隆が担当します。

この曲は中山晋平がいうところ、日本と西洋の「あひ」を狙った和洋折衷の大傑作カバーといえるでしょう。なおこの曲は四七抜き長音階が基調ですのでほぼ黒鍵だけで弾けます。

今月の一冊 文藝別冊『大瀧詠一』(増補新版)

文藝別冊『大瀧詠一』(増補新版)

 

歌手・大滝詠一は作曲家としての実績はさることながら、音楽研究家としての功績も見逃せません。特にこのムック中の「分母分子論」は明治以来、日本でどのように洋楽を受容し、そして邦楽としてどう消化・定着していったかを知る面白い音楽文化論です。

こちらの「黒鍵ペンタトニック」もこの論に刺激を受けたところ思いついたものです。なお1995年と1999年にNHKラジオで放送された「大瀧詠一の日本ポップス伝」はこの論のラジオ実践版です。あわせてお薦めいたします。

最新ブログ

2024年11月3日
ピアノで「カンタービレ」に弾く
image
知っていそうで実は知らない音楽用語「ソナタ」。その意味はイタリア語で「器楽曲」です。そして「ソナタ」の対義語が「カンタータ」です。その意味は「声... 続きを読む
2024年10月28日
黒鍵ペンタトニック 「春よ、来い」(松任谷由実)
image
「春よ、来い」(松任谷由実) さて「春よ来い」がタイトルになる曲を紹介するのはこれで3回目(正確には今回の曲名には句点が入ります。)。やは... 続きを読む
2024年10月20日
ぷりま音楽歳時記 2-18.嬰ト短調
image
<嬰ト短調> 嬰ト短調の調号は♯が5つ。黒鍵を5つ全て使うので、ピアノ曲に人気がありそうだけれど今一つです。導音(第7音)ファがダブルシャ... 続きを読む

ブログをすべて見る

最新ブログBlog

2024年11月3日
ピアノで「カンタービレ」に弾く
image
知っていそうで実は知らない音楽用語「ソナタ」。その意味はイタリア語で「器楽曲」です。そして「ソナタ」の対義語が「カンタータ」です。その意味は「声... 続きを読む
2024年10月28日
黒鍵ペンタトニック 「春よ、来い」(松任谷由実)
image
「春よ、来い」(松任谷由実) さて「春よ来い」がタイトルになる曲を紹介するのはこれで3回目(正確には今回の曲名には句点が入ります。)。やは... 続きを読む
2024年10月20日
ぷりま音楽歳時記 2-18.嬰ト短調
image
<嬰ト短調> 嬰ト短調の調号は♯が5つ。黒鍵を5つ全て使うので、ピアノ曲に人気がありそうだけれど今一つです。導音(第7音)ファがダブルシャ... 続きを読む

ブログをすべて見る