- 春日部で40年。あなたの街の音楽教室。ミュージックファームぷりま

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黒鍵ペンタトニック「ファイアークラッカー」(Y.M.O.)

「ファイアークラッカー」(Y.M.O.)

さて今回からいよいよY.M.O.(イエロー・マジック・オーケストラ)を取り上げたいと思います。次世代に与えた影響もあわせてみていきたいと思います。

1978年2月、細野晴臣は自身のソロアルバムの録音作業を終えると、そこに参加していたミュージシャン、坂本龍一と高橋幸宏を自宅に招きます。そこで新バンドY.M.O.の構想についてメモ書きを見せ両名に参加を要請します。そこには『マアティン・デニーのオリジナル作品を、シンセサイザーを使用したエレクトトリック・チャンキー・ディスコとしてアレンジした”ファイア・クラッカー”に決定!~略~本邦から初の世界的大ヒットを自信をもってネラッちゃうのであります。目標、400万枚』と記されていました。

なおマーティン・デニーとは1950年代に流行したエキゾチカの代表的なアメリカの作曲家です。非西洋圏に対する欧米人の妄想的な異国情緒を表した音楽がエキゾチカともいえ、Y.M.O.以前の細野のソロ作品「トロピカル三部作」にも多大な影響を与えていました。上記の「ファイアークラッカー」も主要部もペンタトニック(5音階)でその異国情緒間に一役買っています。

この曲のカバーをを含むアルバム「イエロー・マジック・オーケストラ」で1978年11月に国内デビューを果たしますがそこでは余り話題にならず。翌年5月にアメリカ盤が発売され、8月のロサンゼルスでの初の海外公演で成功をおさめると、国内でも大きく報道されるようになりその人気に火が付きます。逆輸入的な人気を背景に、Y.M.O.はテクノポップというポップミュージックの新機軸を打ち立てることになります。

黒鍵ペンタトニック「イエローマジックカーニバル」(作曲:細野晴臣)

「イエロー・マジック・カーニバル」(ティン・パン・アレー 作曲:細野晴臣)

1978年に、Y.M.O.(イエロー・マジック・オーケストラ)を結成するまでの期間で、細野晴臣の作品で触れておきたいのが、『トロピカル三部作』(「トロピカルダンディー」「泰安洋行」「はらいそ」)です。特に3枚目の「はらいそ」は「ハリー細野とイエロー・マジック・バンド」名義で、直後のY.M.O.の萌芽ともいえる作品でした(この作品にはY.M.O.のメンバーとなる坂本龍一、高橋幸宏の両名も参加)。一連の3作品は非西洋的でエキゾチック(異国情緒的)、どこか「民謡」的な要素も含んでいたように思います。

さて上記の曲は細野から「イエロー・マジック」なるアイディアが飛び出した最初の曲です。トロピカル三部作と同時期の1975年「ティン・パン・アレー」名義で発売されたアルバム「キャラメル・ママ」に収録されました。細野は魔術を引き合いに『“黒と白”という西洋の分け方に日本人は入れない、と思ったわけ。特に音楽やってるぼくの場合、西でも東でもない状態に片足突っ込んでいる真っ只中なんで。じゃあ、自分はどこなのか、と悩んだな』と述懐。そして子供の頃に読んだ西遊記を思い出し『西遊記には黄魔大王というのも出てきたなあ、なんてことを思い返して、黄色いイメージが浮かんだ。黄魔術。』(CD「HOSONO BOX」ライナーノーツP.25)かくのごとくイエロー・マジックが誕生するのです。

なお上記の曲、最初のAメロディは5音階(ペンタトニック)で作られています。5音階と黄魔術、その関係は浅からずといえそうです。

黒鍵ペンタトニック 「風の谷のナウシカ」(安田成美 作曲:細野晴臣)

風の谷のナウシカ」(安田成美 作曲:細野晴臣)

アルバム「風街ろまん」で作曲に開眼した細野は、「はっぴいえんど」解散後もソロや音楽集団「ティン・パン・アレー」等で精力的に活動していきます。そして1978年に結成した「Y.M.O.(イエロー・マジック・オーケストラ)」で世界的な人気を獲得することになります。

細野の音楽的なインテリジェンスは非常に高く、博覧強記で知られた同じく「はっぴいえんど」のメンバーであった大滝詠一ですら「細野さんには敵わない」と舌を巻くほど。その豊富な音楽的な引き出しを活かし、歌謡曲での作曲でも細野は活躍します。歌唱力のある歌手には実力相応の難曲を提供。松田聖子には、転調著しい「天国のキッス」、中森明菜には独特のコード進行で厄介な「禁区」といった具合です。ただし難曲にもかかわらずポップに聞こえてしまうのが細野マジックと言えるのかもしれません。

ただ細野の作曲術の真骨頂は、歌唱力があまり高くない歌い手に提供する曲にあると思います。自身が歌唱で苦労した経験があるせいか、歌い手に優しい曲を作るのです。その好例が上記、後に女優として成功する安田成美の歌手デビュー曲です。歌い慣れない安田が安心して歌えるためか、冒頭のAメロディとサビの歌いだしはペンタトニック(5音階)で出来ています。そしてやや不安定な歌唱をもサウンド全体でつつみ込み魅力的な曲に仕上げてしまうのです。これは前回紹介した「風をあつめて」でも共通するとと同時に、こうした歌い手への配慮は筒美京平の作曲術にも通底すると思います。なおこの曲の編曲は筒美からも全幅の信頼を得ている萩田光雄が担当しています。

今回は今年2024年に発表された再録バージョンを紹介します。発表されて40年、名曲は色あせません。

黒鍵ペンタトニック 「風をあつめて」(はっぴいえんど:細野晴臣)

「風をあつめて」(はっぴいえんど

前々回のエントリーで触れた「はっぴいえんど」に話は戻ります。

1971年、アルバム「はっぴいえんど」(通称ゆでめん)が発表され、大滝詠一のボーカル曲がバンドを牽引する中、ひそかに苦しんでいたのがリーダーの細野晴臣でした。

細野はスタジオミュージシャンとしても日本屈指の名ベーシストですが、作曲した本人がマイクをとるこのバンドで、生粋のボーカリストである大滝と歌唱力で比べられるのはやはり気の毒といえました。細野の低声を活かしつつも、楽器(バンド)との絶妙なサウンド・バランスで曲を構築する細野ボーカル曲のスタイルを徐々に構築していきます。

そして興味深いのは、大滝の作った曲には、二六抜き短音階(マイナーペンタトニック)の曲が多いのに対し、細野の作った曲は四七抜き長音階(メジャーペンタトニック)の曲が多いのです。ただ四七抜き長音階だとどうしても田舎節になりやすいのが玉にきずと言えます。

「はっぴいえんど」のセカンドアルバム「風街ろまん」に収録された、このバンドの代表曲ともいえる上記の曲で細野のボーカル曲のスタイルが確立したといえます(この曲はほぼ四七抜き長音階の曲です)。実はこの曲は、難産の上、誕生しています。当初は似た内容の詞にカントリー調の全く異なるメロディの曲で録音まで済ませました(こちらの曲も四七抜き長音階です)。ですが、その出来に納得いかず、一旦はお蔵入りとなります。詞曲とも再度練り直した結果、シティポップの祖ともいえるこの曲が生まれたのです。四七抜き長音階なのに都節、これまでの歌謡曲にはないまさに「ニュー・ミュージック」と言えました。

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