「公共的」音楽体験のありがたさ
ソニーのウォークマンが発売されたのが、40年以上前の1979年。小型の機器でしたが、音楽の従来からのあり方を大きく変えた革命的で画期的な製品でした。(こちらの記事もぜひお読みください。)
従来、音楽を聴くには「場」が必要で、それはどこか「公共的」な体験でした。その場でいる人で聴く(聞こえる)ことが前提でした。ですがウォークマンでは、イヤホン等で一人で音楽を聴ける上、持ち運びも可能、「場」を必要とせずどこでも聴けるのです。「公共的」な体験だった音楽を聴くことが、「個人的」な体験へと変化したのだと思います。
メディアがカセットからCDやMDなどを経て、スマートフォンに変化した現在、いっそうその個別化は顕著だと思います。例えば、今やイヤホン等は、キラ星の如く多種で、数十万する高価なものから、百均で買える廉価なものまで、お洒落でカラフルなものから、業務用の武骨なものまで、実に百花繚乱。個々のライフスタイルに応じて音楽を聴けるのです。当然、思い入れのある曲もそれぞれ異なってきますので、昨今、社会全体で流行する曲が少なくなってきているのもうなずけます。
かつて当然だった「公共的」な音楽体験は、今や希少でむしろ特別になってしまったのです。コンサート・ライブ・発表会・複数人でのカラオケ等がそうしたものに該当するでしょう。特にコロナが流行中は、これらはかなりの制限を受けてしまったため、「公共的」な音楽体験の貴重さをあらためて身に染みたのでした。当教室も発表会等のイベントでみんなで楽しむ「公共的」な音楽体験の場をつくっていきたいと思います