「楽云楽云鐘鼓云乎哉」をめざして
今月より毎月おたより出すことにしました。
普段のレッスンではどうしても弾くことの指導に目一杯時間を使ってしまいます。本当は少し脇道にそれて、音楽を聴いてみたり、音楽に関係する本や映画、音楽理論などの話が出来れば、より彩りある充実したレッスンになると常々思っておりました。このおたよりがその役目の一端を担ってくれればと思っています。拙い文章になりますが、どうぞおつき合い下さい。
さて、タイトルの漢文は、孔子の論語からの引用です。読み下すと「楽(がく)と云(い)い楽(がく)と云(い)うも鐘鼓(しょうこ)を云(い)わんや」となり、意味は「音楽、音楽というが、ただ鐘や鼓を鳴らせばよいのではない」と訳せるのだそうです。2000年以上も前の言葉ですが、現在、私達がピアノ弾く場合にも充分あてはまるように思えてなりません。
ピアノは所定の鍵盤を押せば、ひとまず音は出るので、何となく音楽らしくなるまでは比較的簡単な楽器です。ですが、きちんと仕上げようとすれば奥深く、どこまでも掘り下げられる難しい楽器になります。下手にその深みにハマるとすぐに息詰まってしまいます。
上手に「深める」ためにも、同時に進めたいのが「広げる」作業です。CD、TV、ラジオ、インターネット、コンサートなどで積極的に音楽に触れてみましょう。そして未知なる音楽への興味・関心も大きく広げていきましょう。広く知識や経験が培われれば、多少深みにハマったとしても、また別の角度からアプローチして掘り下げ直すこともできます。
このおたよりが、少しでもみなさんの音楽経験を豊かに「広げる」きっかけになれれば幸いです。
(2019年10月第1号)