独立独歩で自己完結
以下「おたより」2020年8月号(第11号)の内容を掲載いたします。
緊急事態宣言が解除され、感染対策は欠かせないものの教室も再開し対面レッスンが出来るようになりました。自粛休業のウツウツとした時に比べ、レッスンが出来る喜びを噛みしめています。舞台等の実演を主にする音楽家の多くがまだまだ先の見えない厳しい状況にある中、以前と比べほぼ遜色なくレッスン出来る状況はありがたく、感謝に堪えません。
とはいえ、社会活動の中でウィルス感染の不安は、どこか頭の片隅に残っています。予防策の一つ一つにそれほど神経を使いませんが、それが積み重なるとボディーブローのように効いてきます。いつしか神経も擦り減り、気付く頃にはかなり疲労が蓄積してしまっているようです。「ウィズ・コロナ」と言葉にすれば簡単ですが、実際はそう楽でもなく、まさに「言うは易く行うは難し」を強く実感する次第です。
ですから、最近では完全に一人になった時に、感染の不安からも解放されホッとするようになってしまいました。特に一人になってピアノに向かって没頭して弾く時間に無上の喜びを感じるようになりました。これはコロナ以前にはなかった新感覚で自分でも驚いています。
ピアノはメロディ、リズム、ハーモニーを全て一人で担えます。合奏を基本とする楽器が多い中、それは特異な性質ともいえます。そのため、ピアノは独善的で、自分勝手になりやすいマイナスの面も持ちます。ですが、このコロナ禍では、それが独立独歩で、自己完結できるというプラスの面へと働いているように思います。