虎視眈々と次なる準備
ジャズでは第二次世界他薦中に、突如としてビバップという新たな形態が登場します。それまでは、大編成のビックバンドによるダンス音楽であるスウィングがジャズの中心でした。対してビバップは小編成の即興演奏で、テンポも速く、音楽に合わせて踊ろうにも踊れない。人々は音楽に注意深く耳を傾ける他ありません。ジャズが「踊る」音楽から「聴く」音楽へ変化したのです。
元々ビックバンドで演奏していたメンバーは譜面通りに演奏するスウィングに飽きていました。ステージ仕事の後、そのウサ晴らしのためにジャムセッションをしたのが、ビバップのきっかけです。録音技術の発展と共に歩んできたジャズはその最初期から録音が残っています。が、ビバップの草創期は中抜けしてしまいます。なぜなら1942年8月から2年強、音楽家ユニオンがストライキを起こし、録音を拒否したからです。
ストライキ明けの戦後、それまで潜伏して熟成されたビバップのジャズレコードが一挙に発売され、人々は驚かされたのです。そしてここからモダンジャズの時代の幕が上がるのです。
さて、ここからは私の勝手な空想です。当時と現在のコロナ禍の状況はどこか似通っているように感じています。現在、音楽家の多くは潜伏せざるを得ない状況が続いています。が、コロナ収束後、それまで地下で蓄えられたエネルギーが一気に噴出し、新たな音楽の時代がやってくるのではないか?
そして今、新時代に向けて虎視眈々と準備を進めていくことこそ大切なのだと思っています。あくまでも前を向いていこうと思います。
ビバップ草創期1941年5月の貴重な録音「スウィング・トゥ・バップ(別名:ミントン・ハウスのチャーリー・クリスチャン)」