日本の音楽に貢献したウクライナ人音楽家「メッテル先生」
以下2022年7月号の「おたより」から転載です。
大体、戦争なんてごく一部の権力者や戦争で利潤を獲得する死の商人他除くと誰の得にもなりはしない。何よりそれに巻き込まれる市井の人々は本当に悲惨の一語に尽きます。ただでさえコロナで面倒だったのに、どうしてさらなる厄介が生じてしまうのか?このような人の業の深さは歴史を知ることで、その一端は学べるでしょう。ですが、今からウクライナやロシアの歴史を一から学ぼうにもとても追いつきそうもありません。やはり私には音楽がとっつきやすく、そこでたどり着いたのが「メッテル先生」です。
「メッテル先生」、本名エマヌエル・レ・メッテル。大正末期にハルピンから神戸へとやってきた指揮者です。私はずっとロシア人とばかり勘違いしていたのですが、正確にはユダヤ系の亡命ウクライナ人だったのです。メッテル先生が関西音楽界に与えた影響は絶大で、クラシックでは大阪フィルを率いた指揮者、朝比奈隆を指導育成します。ポピュラーでは服部良一にリムスキー=コルサコフ直伝の和声法等の音楽理論を伝授したことでも知られています。
ロシア革命を機に亡命せざるをえなかったメッテル先生の事情をノンフィクションで知り、現在の戦争にもどこか深くで通底していることを感じ大変心が痛みました。とにかく今は一日も早い終戦を願うばかりです。異国の小市民に過ぎない私にできることは些細な事に過ぎません。それは仮に扇情的に戦争を煽られても、それには乗らず自身のメンタルを平静に保つことです。そのためにも音楽を聴き、自身でも演奏するのです。それはごく小さなことではありますが、平和への貢献の一端を担うと考えています。