人前の演奏で緊張するルーツは宮廷舞踊にあり?
クラシック・バレエのルーツはフランス絶対王政下の宮廷舞踊です。ピアノでもおなじみのメヌエットやガボットもその舞曲名です。この宮廷舞踊には舞踏譜という譜面があり、ステージ上での踊り手の軌道とステップ、足のポジションが示されています。つまり踊り手は子の譜面に忠実に踊ることを求められたのです。
クラント<オード風ブランル>より 1709年

そして王侯貴族の社交には宮廷舞踊が必要不可欠でした。
『王侯貴族の結婚や王子、王女の誕生、戦争の勝利、そして主要な人物の来訪に際して催される祝祭の中で、数多くの舞踏会、グラン・バルは開かれた。~略~グラン・バルにおけるダンスは貴族としてのステイタスを誇示するために極めて重要であった。数多くの厳しい視線の中で、マナーや知性、技量、すべてを完璧に示さなければならなかったのである。』
「栄華のバロック・ダンス」(浜中庸子著 音楽之友社)P.18
本書ではさらに、社交界にデビューすべく舞踏会に臨んだ新米貴族が最初の挑戦で失敗し、再挑戦もうまくいかず、周囲に嘲笑され深いトラウマを背負ってしまうエピソードも紹介されています。
市民革命以降、貴族文化である舞踏会は消滅し、新たな市民文化が勃興します。ただその象徴ともいえるピアノにでさえ、西洋貴族文化が持つ辛辣さの残滓を感じてしまいます。
だから発表会等ピアノを人前で弾く時の緊張は、弾き手の精神力に起因するのではなく、歴史を積み重ねてきてしまった文化そのものに孕んでしまったのだと考えるようにしています。
