半世紀以上の時を越え「山下洋輔トリオ再乱入ライブ」
コロナでなかなか外出することが出来ず、家にいる時間が長くなった時期を境に、インターネット経由で配信ライブを購入して楽しむようになりました。コロナ禍以降、配信ライブは、ウォーキングと同様、私の生活習慣に新たに加わり、すっかり定着してしまいました。
その中で特に印象に残ったのが、およそ2年前に開催された「山下洋輔トリオ・再乱入ライブ」です。これは元々1969年に早稲田大学4号館で行われたのものの再演!?となります。
ジャズピアニスト・山下洋輔を当時、取材してテレビドキュメンタリーを制作していたのが田原総一朗。「ピアノを弾きながら死ねたらいい」という山下の発言を受けて田原が準備した舞台が学生運動真っ只中の早稲田大学の構内。黒ヘル「反戦連合」が、大隈講堂のピアノを担ぎ出し、対立する「民青」が占拠する4号館地下ホールに運搬しコンサートを強行開催したらどうなるだろう?拠点を奪われた「民青」、ピアノを盗まれた大学等、きっと黙っていられず暴動となるはずだ。そして火炎瓶とゲバ棒が飛び交う中、暴動に巻き込まれた山下はピアノを弾きながら死んでいくだろう。田原はそう目論み、山下もその依頼を受諾します。
コンサート当日、やはり対立するセクト同士が集結し一発触発状態に。にもかかわらず暴動は起こらず、会場全体で静かに演奏を聴いてしまい、山下洋輔トリオは無事に完奏。田原の計画はものの見事にとん挫するのです。それから半世紀以上経ってから、当時と同じ演奏者で同じ早稲田大学で行われたのがこの「再乱入ライブ」なのです。
敵対関係であっても、一時的とはいえ、その関係を忘れさせてしまう音楽の力は偉大です。加えて熱量の高い山下洋輔トリオの演奏に圧倒されました。年輪を重ねても、精進を怠らなければ、更なる高みにたどり着くことも学びました。