- 春日部で40年。あなたの街の音楽教室。ミュージックファームぷりま

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黒鍵ペンタトニック 「春よ、来い」(松任谷由実)

「春よ、来い」(松任谷由実)

さて「春よ来い」がタイトルになる曲を紹介するのはこれで3回目(正確には今回の曲名には句点が入ります。)。やはり春を待ち乞う気持ちはつい5音のペンタトニックで表したくなってしまうのでしょう。

さてこの曲の作者は「ユーミン」こと松任谷由実です。ユーミンと前回触れた「はっぴいえんど」とは縁が深く、荒井由実としてデビューしてからしばらくバックバンドを務めたのが、解散した「はっぴいえんど」の細野晴臣・鈴木茂が新たに立ち上げた音楽ユニットであるキャラメル・ママ(ティン・パン・アレー)。ちなみにドラムに林立夫、キーボードに松任谷正隆が参加します。ジブリ映画でもおなじみの「ひこうき雲」「やさしさに包まれたなら」の演奏はこのメンバーの手によります。さらに「はっぴいえんど」の元ドラマーで、作詞家に転身した松本隆が実質的にプロデュースした松田聖子プロジェクトにもユーミンは、呉田軽穂のペンネームで作曲陣に加わり、「赤いスイートピー」等のヒット曲を連発。

さてこの曲は1994年に発表された松任谷由実名義のシングル曲です。曲全体は自然短音階(ラシドレミファソラ)で出来ています。自然短音階の名曲は多く、藤山一郎「青い山脈」、ジュディ・オング「魅せられて」等、枚挙にいとまがありません。そしてこの曲はサビで二六抜き短音階となり、上記の譜面は黒鍵だけで弾けるのです。

ぷりま音楽歳時記 2-18.嬰ト短調

嬰ト短調

嬰ト短調の調号は♯が5つ。黒鍵を5つ全て使うので、ピアノ曲に人気がありそうだけれど今一つです。導音(第7音)ファがダブルシャープになることが多く、譜読みが面倒になるのも不人気の原因かもしれません。

<嬰ト短調の曲>

展覧会の絵「古城」(ムソルグスキー

組曲「展覧会の絵」で「古城」と「ビドロ(牛車)」が嬰ト短調。管弦楽に編曲する際、ラヴェルはピアノ原曲通りに嬰ト短調のまま編曲します。管弦楽にとって鳴らしにくい調にも関わらず原調の嬰ト短調のまま編曲したのはやはり驚きです。今回はピアノ原曲版を、1951年録音、ホロヴィッツの演奏を紹介します。

今月の一冊 『キャンティ物語』(野地秩嘉著)

今月の一冊 『キャンティ物語』(野地秩嘉著)

ユーミンと言えば、やはり飯倉のレストラン「キャンティ」を思い浮かべます。オーナーの川添浩史・梶子夫妻に可愛がられたユーミン。2枚目のアルバム「ミスリム」では、梶子所有のピアノの前で、梶子が用意したドレスをまとったユーミンのポートレイトがアルバムジャケットになりました。

ユーミンをはじめ数多くの文化人が通う社交場でもある「キャンティ」のノンフィクションを今回は紹介します。

インナーマッスルを鍛えてみよう

ウォーキングや足ツボもみのおかげか、ここ数年、ギックリ腰にならずに過ごせています。ただまだ腰が抜けそうになる一歩手前でギリギリ何とかとどまる瞬間もあり、まだまだ油断できない状況と言えそうです。

そこで腰回りを鍛えて、筋肉のコルセットを身にまとおうと思い、腹筋運動でもしてみるかと腰を上げてみました。学生時代は軽々出来ていたので簡単に出来るであろうとタカをくくっていました。ところが、実施にやってみると全く歯が立たず。いわゆる腹筋運動であるシットアップは一回もできず。その衰えぶりには我ながら愕然としました。さすがにこのままではマズいと思い、何かできることはないかと探してみました。

先ず取り組んでみたのが「フロントプランク」です。うつ伏せの状態から身体を浮かせ、その姿勢をキープさせるトレーニングです。まずは「30秒キープ、10秒休憩」の3セットから始めてみました。これなら楽々できると思いましたが、そうは問屋が卸しません。30秒キープですらやっとの思い、そしてその翌日には結構な筋肉痛。情けない限りですが、やはり現実を直視せざるを得ません。

とはいえ、このプランクは布団の中でも出来るので、起床直後、就寝直前のルーティンになりました。「腹横筋」(インナーマッスル)に効果があるということなので、しばらく継続したいと思います。腹筋を6パックに割るなんていうのは夢のまた夢、まずはシットアップを1回でも成功させることを目標にします。

黒鍵ペンタトニック 「春よ来い」(はっぴいえんど 作曲:大滝詠一)

「春よ来い」(はっぴいえんど

前回に引き続き大滝詠一です。大滝詠一は伝説の「日本語ロック」バンド、「はっぴいえんど」のボーカルでデビューします。他のメンバーはベース、後にY.M.O.でも名を馳せる細野晴臣、ドラム、後に人気作詞家となる松本隆、ギターは編曲家・スタジオミュージシャンとして活躍する鈴木茂の4名です。

松本が作る日本語詞に、残りのメンバーで作曲し各々が歌うのが、このバンドの基本形態でした。そして1970年のデビュー当時、バンドの方向性を決定づけたのが、大滝の作曲術だと考えます。従来の歌謡曲にない和音進行や転調と難しい技術を駆使しますが、かといって聞き馴染みしやすいメロディを紡ぎ、まるで魔法のような作曲術といえます。そこで肝になるのが曲中で使用される音階です。特に初期の大滝作「12月の雨の日」「春よ来い」「かくれんぼ」のメロディには一般的な長調や短調ではなく、「レ」から始まる「ドリア旋法」(レ ミ ファ ソ ラ シ ド レ)が使用されています。なおこのドリア旋法はイギリス民謡の「グリーンスリーブス」や日本の「君が代」でも用いられています。

さらに「春よ来い」「かくれんぼ」は「二六抜きのドリア旋法」(レ ファ ソ ラ ド)で二六抜き短音階と同じ音程構造になります。ですから上記、黒鍵だけでメロディが弾けるのです。

半音程がない5音階での曲では、ロマンティックな声質も持ち合わせる大滝詠一のシンガーとしての魅力が最大限引き出せず、少し勿体ないようにも個人的には思います。

ぷりま音楽歳時記 2-17.嬰ハ短調

嬰ハ短調

嬰ハ短調の調号は♯が4つ。管弦楽では響きにくい調なので人気は今一つですが、黒鍵4鍵を活用できるのでピアノではロマン派以降の曲でよく使われています。

<嬰ハ短調の曲>

前奏曲 嬰ハ短調op.3-2「鐘」(ラフマニノフ)

浅田真央選手がトリノ五輪のフリー演技の際、使用したことでも有名なこの曲。ラ・カンパネラ(リスト)は♯5つの嬰ト短調。黒鍵の音色は鐘の音に近いのかもしれません。今回は作曲者ラフマニノフ自身による1919年の録音を紹介します。

 

今月の一冊 『ニッポンの音楽(増補決定版)』(佐々木敦)

『ニッポンの音楽(増補決定版)』(佐々木敦)

昨今の出版不況で文庫・新書であってもすぐに絶版になってしまう中、元々新書だったものが文庫として増補版で復活したのがこの本です。

昭和40年代の「はっぴいえんど」を出発点に「J-pop」がどのように生まれ、変化し、そして現在に至っているのか?おおよそ日本のポピュラー音楽の半世紀の歴史を眺めています。

今度は絶版にならず何とか踏みとどまってほしいものです。

アルファベットのコードネームとローマ数字の和音記号

最近、アナリーゼが楽しくて仕方ありません。アナリーゼとはドイツ語、訳すと「分析」となります。私はとりわけ曲中でどのように和音が使われているかに興味があります。和音の使い方にはオーソドックスな定石もあります。ですが、常にその通りではありません。定石の外し方も作曲家毎、時代毎等で異なってきます。その違いをつぶさに見ることで、それぞれの曲のオリジナリティを改めて思い知らされるのです。

アナリーゼの際、私は大譜表の上部にアルファベットのコードネーム、下部に和音記号を付します。コードネームは和音の絶対値を示すのに便利で、和音の明暗・色合い等読み取れます。ローマ数字の和音記号は和音の相対値を示します。文法でいえば、主語・述語のような和音の機能が分かります。絶対値を示すコードネーム、相対値を示す和音記号を駆使すると和音分析が断然楽になります。

そんな面倒なことをせずに、ただ楽譜通りに指を鍵盤にたどらせれば曲は弾けます。でもそれだけでは、は「もったいない」」と思ってしまうのです。楽譜は作曲家が残してくれた過去からのメッセージです。ただただ私はそれを余すことなく味わいたいだけなのです。場合によっては勘ぐりすぎで作曲家の意図から外れることもあるかもしれません。でもあれこれ自由に想像を膨らませることが出来ることこそ、現世を生きる特権だと勝手に思っています。

ただ分析をするだけで満足しても仕方ありません。やはり実際に弾いて体感で得られるインスピレーションこそ何より大切にしていきたいと思います。

黒鍵ペンタトニック 「イエローサブマリン音頭」(PD 大瀧詠一 )

イエローサブマリン音頭」(PD 大瀧詠一

前回も触れたように昭和末ぐらいまでは地域の夏の盆踊りも盛んで新作音頭も作られたものでした。

とりわけその中で取り上げたい新作音頭の作者が大滝詠一です。「風立ちぬ」「夢で逢えたら」等のヒット曲の作者として知られ、自身のアルバム「ア・ロング・バケイション」も大ヒットします。そしていまだにJポップの金字塔として君臨する作品でもあります。

ですがこの直前に大滝が手がけたアルバムが「レッツ・オンド・アゲン」という新作音頭を中心にしたアルバムなのです。残念ながらまるでうれず、稀代の迷盤として一部に熱く支持されるにとどまります。そこで次こそは「売れる音頭」を目標に目をつけたのが、かのビートルズの「イエローサブマリン」。「ア・ロング・バケイション」がヒットした翌1982年にこの曲を音頭に仕立てます。

大滝はプロデューサーとして、この曲中に「軍艦行進曲」「おけさ節」等の日本の古い曲や「抱きしめたい」「デイトリッパー」等、ビートルズの曲の一部を引用することを提案します。それを実行し、実際に編曲をしたのは、大滝が敬愛するクレイジーキャッツでおなじみの萩原哲晶(ちなみにこの作品が遺作に)。日本語訳詞は大滝の盟友である松本隆が担当します。

この曲は中山晋平がいうところ、日本と西洋の「あひ」を狙った和洋折衷の大傑作カバーといえるでしょう。なおこの曲は四七抜き長音階が基調ですのでほぼ黒鍵だけで弾けます。

ぷりま音楽歳時記 2-16.嬰へ短調

嬰へ短調

嬰ヘ短調の調号は♯が3つ。マッテゾン曰く、「苦悩・より活気がなくなる感じ」だそう(私はそれにはちょっと違和感を感じますが…)。管弦楽では響きにくい調ですが、ピアノではよく使用されます。

<嬰へ短調の曲>

ハンガリー舞曲第5番(ブラームス

ピアノ連弾でおなじみのこの曲。ピアノでは嬰ヘ短調ですが、管弦楽用に編曲する時は半音音上のト短調にするのが一般的とのこと。今回紹介するのはハンガリー出身のピアニスト、シフラ編曲によるピアノ独奏版。演奏はもちろんシフラ自身によるものです。

今月の一冊 文藝別冊『大瀧詠一』(増補新版)

文藝別冊『大瀧詠一』(増補新版)

 

歌手・大滝詠一は作曲家としての実績はさることながら、音楽研究家としての功績も見逃せません。特にこのムック中の「分母分子論」は明治以来、日本でどのように洋楽を受容し、そして邦楽としてどう消化・定着していったかを知る面白い音楽文化論です。

こちらの「黒鍵ペンタトニック」もこの論に刺激を受けたところ思いついたものです。なお1995年と1999年にNHKラジオで放送された「大瀧詠一の日本ポップス伝」はこの論のラジオ実践版です。あわせてお薦めいたします。

なぜだか苦手な音、オーケストラヒット

皆さん、苦手な音ってありますか?例えば黒板の上に爪を立ててキーっとひっかく音など、何かしらあると思います。もちろんにも苦手な音があって、最近その名称が分かりました。それは「オーケストラヒット」というシンセサイザーの音です。

この音はマイケル・ジャクソンの「BAD」の冒頭でも使われ、80年代から90年代にかけて流行しました。

元々はストラヴィンスキーのバレエ音楽「火の鳥」の「カスチェイー党の凶悪な踊り」からデジタルサンプリングした音だそう。

オーケストラの生音では何も耳に障らないのですが、このデジタル音のオーケストラヒットはどうにも体が受け付けません。ちなみに私はデジタル音自体は特に苦手ではありません。ですがこの音だけはどうしても苦手なのです。

日本のポップスでも昭和末から平成の初頭にかけて、この音がものすごく流行り、テレビ等の音楽番組で聞かない時はないほどでした。私は当時はヒット曲大好き人間で、「ザ・ベストテン」や「夜のヒットスタジオ」など欠かさず観ていたぐらいだったのに、この「オーケストラヒット」を避けるために次第にヒット曲番組からも疎遠になっていきました。でもおかげでヒットに拘らず、様々な音楽に興味が広がりましたし、自身の音楽に対する趣味趣向もはっきりしてきました。

最後に「BAD」の冒頭のオーケストラヒットのせいで、私はマイケル・ジャクソンをずっと敬遠していました。でもそれは私の完全な聞かず嫌いで、今は深く反省しています。やはり何事も勝手に決めつけるのはよくありませんね。

黒鍵ペンタトニック 「さくら音頭」(中山晋平)

「さくら音頭」(中山晋平

「ドドンガドン」、昭和終わりの私の子供時代、夏の夕方、毎週末になると盆踊り大会がそこかしこの公園で催され、櫓(やぐら)が組まれ、この音頭のリズムが流れてきたものでした。

この「ドドンガドン」のリズムの音頭は太古の昔からあるものだとばかり思っていましたが、そのスタイルが確立したのは昭和初期(詳しくはこちら)。まさに「新民謡」そのものといえます。そしてそのフラッグシップとなったのが「東京音頭」(1933年・昭和8年)。作曲はもちろん中山晋平です。この曲は現在もヤクルトスワローズの応援歌で使われるなど、最も長きに渡りヒットした「新民謡」といえるでしょう。発表当時も熱狂的なブームとなり、その夏、東京中の公園という公園が「東京音頭」一色に塗りつぶされたそうです。惜しくも「東京音頭」は四七抜き短音階の曲なので黒鍵だけでは弾けません。

そこで今回紹介するのは、その翌年、音頭ブームがエスカレートする中で発表された「さくら音頭」です。レコード会社各社、様々な作曲家を擁して競作する中、群を抜いてヒットしたのがこの中山晋平のビクター版でした。

「流行歌」「童謡」「新民謡」と中山晋平の主要創作ジャンルをざっと見渡しましたので、この特集はこれで一区切りしたいと思います。

ぷりま音楽歳時記 2-15.ロ短調

<ロ短調>

ロ短調の調号は♯が2つ。マッテゾン曰く、「奇妙で、喜びを欠き、憂鬱」な調。確かに主音シは白鍵の中では不安定な音。それゆえシリアスさとコミカルさが二律背反せず同居する気もします。

<ロ短調の曲>

「スケルツォ第1番 Op.20」(ショパン

スケルツォとは「諧謔曲」。ショパンのこの曲をシューマンは「冗談」でこれなら「真面目」だとどうなるのか?と評したそう。この曲はその二律背反の要素が同居した好例?今回紹介するのは、1985年、ニューヨークの自宅で収録されたホロヴィッツの演奏です。

今月の一冊 大石始著『ニッポン大音頭時代』

『ニッポン大音頭時代』

大石始著/河出書房社/ISBN(13)978-4309276137

すっかり日本の伝統とばかり思いこんでいた音頭。でも実は比較的最近になって成立したことをこの本で知りました。前回のエントリーと同様、こうした思い込みは身の回りの日常に結構あるのかもしれません。

その成立から現在に至るまでの音頭の変遷を辿ったこの本、大変興味深く読みました。そして音頭は国内にとどまらず、日系人社会を中心に国際的にも広まっていることを知り驚きました。音楽文化の伝播の強靭さ・奥深さを改めて思い知らされました。

録音で「やったつもり」練習にならないように

は普段、必要最低限しか鏡は見ません。セルフポートレイトも苦手で、古くはプリクラ、現在ではスマホの自撮りはほとんどやったことがありません。それどころか写真そのものが苦手で、いまだに撮影されると魂が抜かれるという幕末・明治の迷信を信じているのかも…

でも音楽については別で、ここ数年、練習時、自分の演奏を出来る限りハンディレコーダーを使って録音するようにしています。それも譜読みも済んで、ある程度弾けるようになってからではなく、場合によっては片手ずつで練習する時さえ録音することもあります。そんなに自分の演奏が好きなのか?そうではなく、自分の演奏をできるだけ客観的に聴きたいと思っているからです。

演奏をしながらだと実は自分の発生音は思った以上に聴けていません。自身では強弱の差をはっきりつけて演奏したつもりでも、実際は大して差がつかないことがあります。つまり「やったつもり」で思いこんで練習を進めてしまうことがままあるのです。特に疲れているときは要注意で、酷い場合は音も聴かずただ指だけを動かす事態にも…

ですから録音なのです。録音したものをプレイバックすれば、多少は、冷静かつ客観的に己の演奏を聴けます。録音という一工程が加わることで、確かに練習が面倒にはなります。ですが、そこは「急がば回れ」の精神です。結果的には仕上げまでの時間がかなり短縮されるようです。ただ心がけていても、すぐ楽な「やったつもり」練習に戻ってしまうのです。でもまあ、根を詰めすぎても苦しくなるだけなので、気長に取り組んでいこうと思います。

黒鍵ペンタトニック「三朝小唄」(中山晋平)

「三朝小唄」(中山晋平

中山晋平の創作ジャンル、これまで「流行歌」「童謡」と見てきましたが、三本柱の最後、「新民謡」について、今回から見ていきたいと思います。

明治以降、西洋化を進めた日本の社会ですが、1923年(大正12年)の関東大震災で転機を迎えます。昭和初期にかけて、復古的な文化運動が起こるのです。例えば美術では、1926年(大正15年)に「民藝運動」が始まります。ほぼ時を同じく、音楽では「新民謡運動」がスタートするのです。中山晋平はその運動の中心人物といえました。「新民謡」とはいえ実際は、民謡風の新曲です。いかにも古くからありそうな「ちゃっきり節」(町田嘉章作曲)などが新民謡の典型で、実はこの曲、静岡鉄道のCMの為に作られた新曲なのです。新民謡は地域振興や観光宣伝のためのご当地ソングでもあったのです。

和洋折衷の作曲が得意な晋平には、新作民謡はお手の物、多くの曲をヒットさせます。今回紹介する「三朝小唄」もそんな曲です。1925年(大正14年)、鳥取の三朝温泉に、詩人の野口雨情と旅行をした晋平。旅の宴の余興で、その場で雨情が詩を書き、晋平が曲をつけました。翌々年、それを改作して正式に発表し、ヒット曲になります。1929年(昭和4年)には同名の無声映画も制作、三朝温泉の知名度が全国的になりました。

なおこの曲も、二六抜き短音階をベースに曲が作られています。1か所を除いて黒鍵で演奏することが出来ます。

ぷりま音楽歳時記 2-14. ホ短調

ホ短調

ホ短調は、調号は♯1つ。マッテゾン曰く、「哀愁を帯び、困惑し、悲しい」調。ギターの6弦のうち2弦を押さえれば主和音Em(ミソシ)が鳴ることでもおなじみです。

<ホ短調の曲>

ピアノ協奏曲第1番(ショパン)

この曲はショパンが故郷のワルシャワを去り、ウィーンへ旅立つ際の告別演奏会で自らの手で初演された曲です。まさにホ短調に相応しい曲と言えるでしょう。今回紹介するのは、ピアノが、M.アルゲリッチ、指揮・C.デュトワによるNHK交響楽団による1996年の演奏です。

今月の一冊 小沼純一著『ミニマル・ミュージック』

『ミニマル・ミュージック』

小沼純一著/青土社/ISBN(13)978-4791755783

前回のエントリーで触れたミニマル・ミュージックにハマりだした頃に、ガイド本として大変お世話になりました。

テリー・ライリーの他、スティーブ・ライヒラ・モンテ・ヤングフィリップ・グラスの4人の作曲家がやはり私にとってミニマル四天王です。そして4人とも米寿近くの高齢にもかかわらずみな健在で、ミニマルはもしかしたらご長寿音楽かもしれないと思う今日この頃です。

ミニマルは、久石譲氏にも多大な影響を与えています。宮崎駿のジブリ作品(特に初期)や北野武映画の音楽ではかなりミニマル的な手法を用いているので、久石譲作品がお好きな方は、ミニマルを聴くのに挑戦してもよいかもしれません。

災い転じて福となす~テリー・ライリーの日本移住

は学生時代にミニマルミュージック(以下ミニマルと略)という現代音楽が好きになり、すっかりハマっている時がありました。ミニマルはクラシック音楽から派生した音楽ですが、いわゆる前衛的な音楽に比べると、ポップで聴きやすい面もあり、テクノやロックなどのポピュラー音楽との相互交流もその特徴と言えます。ある一定の音素材を重ねたり、ずらしたり、「音楽の万華鏡」という例えが、私にはしっくりきます。

そのミニマルの雄にテリー・ライリーという作曲家がいます。アメリカ出身で現在、88歳。なぜか、今、日本・山梨に住んでいるのです。移住の経緯が大変興味深く、ライリー氏は自身が参加する予定の「さどの島銀河芸術祭」の視察のために、2020年2月に来日。ところがそこで新型コロナウイルスが世界的流行となります。特にアメリカの状況は酷かったので、ライリー氏は帰国せずそのまま日本に滞在。滞在中にすっかり日本を気に入ってしまい、アーティストビザまで獲得し、今や日本を音楽活動の拠点としています。こんなレジェンドが日本を拠点に活動するなんて、驚きと共に強い喜びを感じます。

つい「コロナさなければ…」とついネガディブに考えがちな中で、この話題で私は気持ちがとてもポジティブになりました。そしてこのエピソードこそ「災い転じて福となす」好例ともいえ、大変勇気づけられました。最後にインタビューよりライリー氏の言葉を引用します。

「85歳にして人生の新たな章が始まるとは想像もしていませんでしたが、私の仕事や人生観全般において、もっとも活力に満ち、最も刺激的な時期の一つになっています。」

2023年10月13日 京都・東本願寺の能舞台でのLIVEのダイジェスト映像

 

黒鍵ペンタトニック 「あめふり」(中山晋平)

「あめふり」(中山晋平

昭和初期の童謡運動では「赤い鳥」や「金の星」等の児童雑誌がその中心を担いました。楽譜が雑誌に掲載されることで、多くの人に曲が知られていったのです。同様に大きな影響力を持ったのがレコードです。昭和初頭に、コロムビアやビクターなど外資大手が日本に本格参入すると、レコード業界は急成長。重要なメディアとなり、童謡ブームを下支えしました。

なおコロムビアは「七つの子」等で有名な本居長世と、一方ビクターは中山晋平と専属作曲家契約を締結します。レコード会社と作曲家の間で専属契約する仕組みは、戦後暫くまで残存し、歌謡界の骨子ともなったのです。

中山晋平の場合、レコードの吹込みには、歌姫・佐藤千夜子はもちろん、童謡歌手・平井英子が常連となります。晋平と共に平井英子も、歌手として日本ビクターの設立と同時に専属契約を結びます。その時、わずか10歳、まさに子役スターとして数多くの童謡を録音します。(大変なご長寿で2021年、103歳でご逝去されます。)

前回紹介した「肩たたき」同様、今回も平井英子によって吹き込まれた「あめふり」を紹介します。なおこの曲も黒鍵だけで弾ける四七抜き長音階で作られています。

1931年(昭和6年)平井英子の歌唱による録音。

ぷりま音楽歳時記 2-13. イ短調

イ短調

イ短調は調号なし。マッテゾン曰く「むしろ沈痛で、辛抱強い。」意外にも金管楽器があまり得意としない調です。弦楽器は開放弦を使えるので、よく用いられます。

<イ短調の曲>

アルペジョーネソナタ第1番(シューベルト

アルペジョーネとは、シューベルトの時代に存在したチェロとギターをかけ合わせたような楽器です。今回紹介するのは、アルペジョーネはN.デルタイユ、フォルテピアノがA.ルディによる当時のオリジナル楽器での2012年の演奏です。

今月の一冊 山下洋輔著『新編 風雲ジャズ帖』

『新編 風雲ジャズ帖』

山下洋輔著/平凡社/ISBN(13)978-4582765021

山下洋輔トリオでの公演旅行記を収録したのがこの本。前回のエントリーで触れた乱入ライブについても、もちろん触れられています。

山下トリオ(初代)の最大の功績は、ツアー先の福岡で素人時代のタモリを発掘し上京させたことだと勝手ながら思っています。もちろんそのタモリとの出会いのエピソードも書き記されています。

抱腹絶倒のエピソードが満載な一方、さりげなく真面目な「ブルーノート研究」も収められて、大変読み応えがあります。

半世紀以上の時を越え「山下洋輔トリオ再乱入ライブ」

コロナでなかなか外出することが出来ず、家にいる時間が長くなった時期を境に、インターネット経由で配信ライブを購入して楽しむようになりました。コロナ禍以降、配信ライブは、ウォーキングと同様、私の生活習慣に新たに加わり、すっかり定着してしまいました。

その中で特に印象に残ったのが、およそ2年前に開催された「山下洋輔トリオ・再乱入ライブ」です。これは元々1969年に早稲田大学4号館で行われたのものの再演!?となります。

ジャズピアニスト・山下洋輔を当時、取材してテレビドキュメンタリーを制作していたのが田原総一朗。「ピアノを弾きながら死ねたらいい」という山下の発言を受けて田原が準備した舞台が学生運動真っ只中の早稲田大学の構内。黒ヘル「反戦連合」が、大隈講堂のピアノを担ぎ出し、対立する「民青」が占拠する4号館地下ホールに運搬しコンサートを強行開催したらどうなるだろう?拠点を奪われた「民青」、ピアノを盗まれた大学等、きっと黙っていられず暴動となるはずだ。そして火炎瓶とゲバ棒が飛び交う中、暴動に巻き込まれた山下はピアノを弾きながら死んでいくだろう。田原はそう目論み、山下もその依頼を受諾します。

コンサート当日、やはり対立するセクト同士が集結し一発触発状態に。にもかかわらず暴動は起こらず、会場全体で静かに演奏を聴いてしまい、山下洋輔トリオは無事に完奏。田原の計画はものの見事にとん挫するのです。それから半世紀以上経ってから、当時と同じ演奏者で同じ早稲田大学で行われたのがこの「再乱入ライブ」なのです。

敵対関係であっても、一時的とはいえ、その関係を忘れさせてしまう音楽の力は偉大です。加えて熱量の高い山下洋輔トリオの演奏に圧倒されました。年輪を重ねても、精進を怠らなければ、更なる高みにたどり着くことも学びました。

黒鍵ペンタトニック 「肩たたき」(中山晋平)

「肩たたき」(中山晋平

さて中山晋平と子ども達との関りはとても深いものでした。晋平は高等小学校を卒業すると18歳で上京するまでの約2年間、尋常小学校の代用教員を務めます。

晋平の教授法はユニークだった。≪鉄道唱歌≫を教えるとき、生徒にオルガンの周りにエンジンを作らせた。子供達に、ぐるぐると回りながら、リズムをとりながら歌わせた。(菊地清磨著「中山晋平伝」34頁)

上京してから晋平は、作家・島村抱月の書生と東京音楽学校の学生との二足の草鞋を履きましたが、卒業後も抱月主宰の劇団「芸術座」の座付き作曲家と浅草・千束尋常小学校での音楽専科の教員との二重生活を送ります。抱月の死去後、1919年に「芸術座」が解散。晋平は生活の糧となる車輪の片輪を失います。

ですが、時は童謡運動の隆興期を迎え、小学校教員の晋平にも光明が差します。1921年、雑誌「少女の友」での「てるてる坊主」の発表を皮切りに童謡の作曲に本格的に進出し、多くのヒット曲を残します。

今回取り上げるのは1923年に雑誌「幼年の友」で発表した「肩たたき」。この曲は晋平が得意とした四七抜き長音階で作られています。子供の日常生活に見事にフィットしたリズムも絶妙です。

1930年(昭和5年)平井英子の歌唱による録音です。

ぷりま音楽歳時記 2-12.へ長調

ヘ長調

ヘ長調は♭が1つ。マッテゾン曰く「寛容さ、忠実さ、愛」。特に管楽器であるホルンが得意とする調で、のどかで牧歌的な曲に用いられることが多い印象です。

<ヘ長調の曲>

交響曲第6番「田園」第1楽章(ベートーヴェン

弦楽器・木管楽器とホルンで演奏されるこの曲。ホルンが角笛のように響き、のどかな田園風景が醸しだされます。今回は、カラヤン指揮、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団による演奏で、1967年撮影の動画を紹介します。やや前衛的なカメラ編集の映像が時代を感じさせます。

今月の一冊(本)映画『愛情物語』(1956年)

『愛情物語』

今回紹介するのは本ではなく映画です。1956年のアメリカ映画『愛情物語』をお勧めします。実在のピアニスト、エディ・デューチンの生涯を描いた物語。カーメン・キャバレロのアレンジによるショパンのノクターン第2番が劇中に用いられ、この曲は一躍人気曲になります。

私にはややロマンティック過ぎる気もしますが、まあそれもたまにはいいでしょう。

※最近は、古いアメリカ映画を観ることが多くなりました。今の殺伐とした世情の中、観るだけで心が洗われる思いになります。

 

フィジカルもメンタルもセルフケアが欠かせません

相変わらずウォーキングは継続しています。そして歩き方を見直してから、腰痛はかなり軽減しました。ですがあちら立てればこちら立たずで、しばらくは足裏が妙に痛むようになりました。きっと若い頃なら寝るだけで回復していた疲れも、今ではそうもいかなくなったようです。

そこで夜、寝る前に足裏のマッサージを始めました。ツボ押し棒を使ってしっかり押し込むと効果があったようで、1週間程度で足裏の痛みがおさまりました。すっかり足裏揉みは就寝前のルーティンとなり、日々のウォーキングも快適になってきました。つくづく身体のセルフケアの大切さを身に染みる今日この頃です。

これは何もフィジカル面に限らず、メンタル面でも同様、セルフケアは欠かせません。コロナ禍以降、特に社会情勢はかつてないほど荒んでいるように感じます。どことなく不安な気持ちに苛まれやすいとも言えます。そこで音楽の力が有益なのは言うまでもありません。

もちろんコンサートへ出かけたり、部屋でイヤホン越し音楽を聴くだけでもある程度はリフレッシュできるでしょう。でもそれだけでは受け身で、どこか他人まかせになってしまっているとも言えます。

自らが演奏し、その響きを自ら浴び、気分一新!そのように能動的に自身のメンタルケアが出来れば理想的だと思います。そのためには自分自身が気持ちよく感じる音色で楽器を響かせることを最優先にしたいものです。それは「楽譜通りに間違えずに弾く」や「技術的に上達する」以上に大切なことだと思います。

黒鍵ペンタトニック 「鉾をおさめて」(中山晋平)

「鉾をおさめて」(中山晋平

東京行進曲」をはじめ、中山晋平のヒットした流行歌の多くは四七抜き音階でも短音階を使ったものが主流となります。代表曲「船頭小唄」や「波浮の港」も四七抜き短音階で作られています。

さて四七抜き短音階とは?白鍵の音だけで示せるイ調の短音階で見てみます。音階の4,7番目の音を抜くと「ラシドミファラ」との5音階になります。この音階での有名曲を上げると、「さくらさくら」「美しき天然」など、音階中の半音「ミファ」「シド」の音程が何とも言えない哀愁を漂わせるように思います。晋平が得意とした四七抜き短音階による曲作りは、古賀政男に引き継がれ「人生劇場」「悲しい酒」等々、いわゆる演歌の基礎となります。不思議なもので前世代の晋平の曲の方がモダンに聴こえ、後世の古賀の曲の方が復古調に聴こえてしまいます。

これはどうも歌唱法にも原因があると思います。晋平の曲をレコードに吹き込む常連歌手、佐藤千夜子は東京音楽学校声楽科出身、西洋式の発声法で歌うためモダンに聴こえるのかもしれません。今回紹介するのは、その男性版、オペラ、藤原歌劇団の創設者、藤原義江が歌唱する晋平作曲の「鉾をおさめて」(1928年)です。なおこの曲は全編、四七抜き長音階で出来ているので、黒鍵だけで弾けます。

ぷりま音楽歳時記 2-11.変ロ長調

<変ロ長調>

変ロ長調は♭が2つ。マッテゾン曰く「気を晴らし、壮大」。管楽器が鳴らしやすい調で、弦楽器もソフトに響くので、ストレスの少ない調と言えるでしょう。

<変ロ長調の曲>

ピアノ協奏曲第2番ブラームス

「気を晴らし、壮大」に相応しいのがこの曲。ブラームスが初めてのイタリア旅行で得たインスピレーションを基に作曲されました。ピアノがポリーニ、指揮がアバド(共にイタリア人)によるウィーンフィルの演奏(1976年)を紹介します。

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