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共感覚~音や文字から色を感じる?

かねてから私は「共感覚」に興味がありました。その共感覚とは、読んだ本によれば、

音や文字に色を感じたり、色から音を感じたり、味から形を感じたりする現象のことである。つまり刺激に含まれていないはずの感覚を感じるというのだ。

(『ドレミファソラシは虹の七色?』<光文社新書>P.25)

このブログのコーナー「ぷりま音楽歳時記」では、毎月「調」を一つずつ取り上げています。そして各々の調に色を感じる作曲家、スクリャービンやリムスキー=コルサコフ等の感じ方を時には紹介しています。彼らこそ「共感覚」の持主といえます。面白いのはその感じ方が主観的なので、それぞれ色が異なることです。例えばイ長調、スクリャービンは「緑」と感じ、コルサコフは「バラ色」といった具合です。彼らに限らず、感性の鋭い作曲家であれば、「調」における「共感覚」を持ちあわせていたとしても何ら不思議はありません。

作曲家は、曲毎に異なる調を使います。長調・短調の24調を基本に、民族的な音階等を使うこともあります。場合によっては無調ということもあります。曲中での転調は当たり前で、度が過ぎれば、1拍毎に転調することさえあります。共感覚に乏しい私は、ダブルシャープやダブルフラット等の臨時記号が溢れる曲の楽譜を見ると、もっとシンプルに書けないものかとつい作曲家を恨めしく思ってしまいます。

でもそんな時一息。白黒の楽譜を絵画に見立てて、作曲家がその曲をどんな色で彩ろうとしたのかに思いを巡らせるようにしています。するとほんの少しだけ恨めしい気持ちも晴れやかになるのです。

黒鍵ペンタトニック「大空と大地の中で」(松山千春)

大空と大地の中で」(松山千春)

1970年代のフォーク&ニュー・ミュージックの台頭で、俄然注目されたのがシンガー・ソング・ライターの存在です。従来は作曲家・作詞家・歌手と分業制が一般的でしたが、自作自演の音楽が大幅に増加したのです。その中でこれまで以上に大役を果たすのが編曲家の存在です。

さて今回取り上げるのは、1977年、松山千春のファーストアルバムに収録されたペンタトニック(5音階)の大名曲「大空と大地の中で」です。シングルA 面曲ではないのにも関わらず、松山千春の代表曲の一つとえ言えるでしょう。この曲はスタジオ再録音を2度しています。まずは1998年、シングル「この世で君が一番好き」のカップリング曲として再録されます。そして2006年、デビュー30周年企画アルバム「再生」の中でも再録されました。

1977年のオリジナル版のキーは、上記の変ト長調(嬰へ長調)なので、メロディは全部黒鍵で弾けます。ただしこの調は管弦楽器が響きにくいので、せっかくの名手・青木望の管弦アレンジも鳴りを潜めてしまいます。(ドラム・ベース・ギター・ピアノといったバンドの音が前面に出るのでタイトな響きになる良さもあります。)

一方、再録版のキーは1998年版、2006年版共に半音低いヘ長調なので、管弦のアレンジがよく響きます。

1998年版は「木綿のハンカチーフ」「風の谷のナウシカ」等でもおなじみの「音の魔術師」萩田光雄が編曲を担当。ゴージャスで華麗な管弦アレンジが聞き物です。

2006年版はオリジナルの青木望版を元に、松山千春のツアーのバンマスでもある夏目一朗がさらにアレンジを加えたものと思われます。半音下がっただけで、オリジナルの青木望の管弦アレンジの良さが本領発揮され、とてもよく響くようになりました。たった半音の違いですが、曲の印象は大きく変わるのです。

ぷりま音楽歳時記 3-14. ホ短調

ホ短調

ホ短調は、調号は♯1つ。マッテゾン曰く、「哀愁を帯び、困惑し、悲しい」調とのこと。私はこの調に「郷愁」を強く感じることがあります。

<ホ短調の曲>

交響詩「わが祖国」第2曲『モルダウ』(スメタナ)

ボヘミア楽派の作曲家というとつい「郷愁」を感じさせるこの調を思い浮かべます。ドヴォルザークの交響曲第9番「新世界」(第2楽章以外)やスメタナのこの曲がホ短調です。今回は1980年、ショルティ指揮、バイエルン放送交響楽団による演奏を紹介します。

今月の1冊『栄華のバロック・ダンス』

栄華のバロック・ダンス

この本は先月取り上げた「東京大学のアルバート・アイラ―」の「キーワード編」での紹介から知りました。

私自身、バッハ以前のバロック音楽を学ぶ機会は少なく、恥ずかしながら、この本で前回のエントリーで触れた「舞踏譜」の存在を知りました。

踊りの種類ごとに多くの舞踏譜が掲載されています。幾何学模様の譜面は眺めているだけでもなかなか面白いものです。

左右対称の模様も多く、やはり西洋の美ではシンメトリーが重んじられていることがよく分かります。

人前の演奏で緊張するルーツは宮廷舞踊にあり?

クラシック・バレエのルーツはフランス絶対王政下の宮廷舞踊です。ピアノでもおなじみのメヌエットやガボットもその舞曲名です。この宮廷舞踊には舞踏譜という譜面があり、ステージ上での踊り手の軌道とステップ、足のポジションが示されています。つまり踊り手は子の譜面に忠実に踊ることを求められたのです。

クラント<オード風ブランル>より 1709年

そして王侯貴族の社交には宮廷舞踊が必要不可欠でした。

『王侯貴族の結婚や王子、王女の誕生、戦争の勝利、そして主要な人物の来訪に際して催される祝祭の中で、数多くの舞踏会、グラン・バルは開かれた。~略~グラン・バルにおけるダンスは貴族としてのステイタスを誇示するために極めて重要であった。数多くの厳しい視線の中で、マナーや知性、技量、すべてを完璧に示さなければならなかったのである。』

栄華のバロック・ダンス」(浜中庸子著 音楽之友社)P.18

本書ではさらに、社交界にデビューすべく舞踏会に臨んだ新米貴族が最初の挑戦で失敗し、再挑戦もうまくいかず、周囲に嘲笑され深いトラウマを背負ってしまうエピソードも紹介されています。

市民革命以降、貴族文化である舞踏会は消滅し、新たな市民文化が勃興します。ただその象徴ともいえるピアノにでさえ、西洋貴族文化が持つ辛辣さの残滓を感じてしまいます。

だから発表会等ピアノを人前で弾く時の緊張は、弾き手の精神力に起因するのではなく、歴史を積み重ねてきてしまった文化そのものに孕んでしまったのだと考えるようにしています。

 

 

黒鍵ペンタトニック「裸の心」(あいみょん)

裸の心」(あいみょん)

昨今のJ-popで、フォークソングの系譜を継ぐミュージシャンの代表格といえば、「あいみょん」が挙げられるでしょう。その人気は若者にとどまらず、比較的高い年齢層にも支持されているように思います。特にこの「裸の心」はかつての「日本有線大賞」の後継ともいえる「USEN HIT総合年間1位(2020年)」でフォーク世代の心をもつかんでいるといえます。この曲のアレンジャーはトオミヨウです。前回紹介した「夏色2024」(ゆず)や朝の連続テレビ小説「虎に翼」の主題歌「さよーならまたいつか!」(米津玄師)でも編曲を担当する当代きってのミュージシャンです。

この曲に関わったスタッフのルーツをたどるとかの矢沢永吉に行きつくのが何とも興味深いところです。あいみょんを発掘したのが、ラストラム・ミュージックエンタテイメントの社長の村田積治です。村田はかつて矢沢のマネージャーでした。さらに加え、トオミヨウの実父は、尾崎豊のプロデューサーも務めた須藤晃。須藤の師匠筋にあたる高久光雄が矢沢の担当ディレクターでした。さらにこの「裸の心」はサントリーBOSS「宇宙人ジョーンズ  いつもの自販機篇」のCM曲で、サントリーBOSSの初代CMキャラクターは矢沢永吉。どこか因縁めいていうようです。

なおこの曲のAメロが四七抜き長音階。黒鍵だけで弾くことが出来ます。

無料体験レッスン「春の種まきキャンペーン」6月分受付けはじめました♪

2026年6月30日まで「春の種まきキャンペーン」として通常30分で2200円(税込)の体験レッスンが無料となります。

6月分の無料体験レッスン、こちらのページで受付を開始いたしました。

先着順となりますのでお早めにお申し込みください。

※なお、無料体験レッスンの受講はお一人様1回に限ります。複数科目、複数回の受講の際は別途費用がかかりますことご了承ください。

ぷりま音楽歳時記 3-13. イ短調

イ短調

イ短調は調号なし。マッテゾン曰く「むしろ沈痛で、辛抱強い。」とりわけ明るい♯3つのイ長調が同主調だけあって、イ短調による闇はより深く感じられます。

<イ短調の曲>

交響曲第6番「悲劇的」(マーラー)

この交響曲第6番は、「悲劇的」という副題で呼ばれます(マーラーが名付けたかは不明)。「沈痛、辛抱強い」イ短調が3楽章以外で用いられています。今回紹介するのは、バーンスタイン指揮、ウィーン・フィル・ハーモニーによる1976年のライブ映像です。

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今月の1冊『東京大学のアルバート・アイラ― 歴史編』

東京大学のアルバート・アイラ― 歴史編

前回のエントリーで、音楽書の読み直しについて触れましたが、私がその第1弾に選んだのがこの本。2004年度の東大教養学部のジャズ講義の前期分をまとめたものです。ジャズの門外漢である私にとっては、書内で紹介される音楽はあまり耳なじみしないものばかりです。初読時は、字面だけの浅い理解でしたが、音楽を聴きながら、あらためて読み直したら少し理解が深まったような気がします。

「12平均律→バークリー・メソッド→MIDI」という音楽的な経緯はクラシック音楽にも相通ずるように思います。

音楽書は書物であって音楽そのものではない

最近、これまで読んできた音楽書を再読しはじめました。当たり前のことですが、音楽書は書物であって音楽そのものではありません。音楽について言葉で説明を尽くしてあっても、音楽書から直接、音楽が流れてくるわけではありません。

書内で参考資料として楽譜の一部やCDなどの音源の紹介がされることはあります。ただしインターネット以前は、それらの紹介されたものにアクセスするのもそう楽ではありませんでした。CDやレコードを収集するにも結構な財力や労力が要り、以前読んだ時は、実際の音楽を聴ききれないこともままありました。なので聴いたこともない音楽を言葉だけで理解したつもりになるケースも多々あったのです。

ところが、今はインターネットを介し、動画サイトや音楽配信サービスで気軽に紹介された音源にアクセスしやすくなりました。実際に音楽を聴ければ、音楽書での言葉も、よりリアルに深く理解することが出来ます。これまでの浅い理解を反省するとともに、改めて学び直しが楽しくなってきました。

音楽書の字面を目で追うだけであれば、それほど時間はかかりません。ですが紹介された音楽を聴きながら読めば、少なくともその音楽の分の時間は要します。音楽より先に読み終えても、その該当部を繰り返し読み咀嚼して理解を深めてもいいかもしれません。また文章から離れて音楽から直接インスピレーションを受けるのもいいかもしれません。

黒鍵ペンタトニック「夏色」(ゆず)

夏色」(ゆず/北川悠仁:作曲)

前回取り上げた「結婚しようよ」や「神田川」等、70年代の初頭で、ヒットするフォークソングの雛型が出来たといえるでしょう。そしてそこに触発された歌謡界は、貪欲にフォーク・ニューミュージック畑から人材を掘り起こしていきます。その代表格が作詞家・松本隆といえるでしょう。フォークの神様と呼ばれた岡林信康のバックバンドも務めた「はっぴいえんど」の元ドラマーで、バンド解散後は職業作詞家に転身しました。転身直後、チューリップに提供した「夏色のおもいで」(1973)の詞が作曲家・筒美京平の目にとまり、それをきっかけに筒美&松本の名コンビが誕生します。このコンビでの初期の作品には、今や大ベテランとなったThe ALFEEのデビュー曲「夏しぐれ」(1974)もありますが、残念ながらヒットせず。太田裕美の「木綿のハンカチーフ」(1975)でブレイクしてこのコンビが時代の中心に躍り出るのです。

さて今回取り上げるのは、「夏」つながりで、ゆずのデビューシングル「夏色」(1998)です。フォーク歌謡が確立しておおよそ四半世紀後のJ-popの名曲です。そしてそれからさらに四半世紀以上経った2024年に改めて本人たちにより再録音されました(編曲はトオミヨウ)。この曲を作詞・作曲したゆずの北川悠仁は「パンツ一丁で作った曲がこんなに有名になってずっと歌うとは思わなかった」と振り返っていますが、先に挙げたフォーク歌謡のDNAを色濃く受け継いでいるように思えてなりません。なお、この曲のAメロディは、四七抜き長音階、黒鍵だけで弾くことが出来ます。

 

無料体験レッスン「春の種まきキャンペーン」5月分受付開始です!

2026年5/1~6/30まで「春の種まきキャンペーン」として通常30分で2200円(税込)の体験レッスンが無料となります。

5月分の無料体験レッスン、こちらのページで受付を開始いたしました。

先着順となりますのでお早めにお申し込みください。

※なお、無料体験レッスンの受講はお一人様1回に限ります。複数科目、複数回の受講の際は別途費用がかかりますことご了承ください。

「小さな春のコンサート2026」盛会に終わりました♪

先日お知らせしました発表会「小さな春のコンサート2026」を、さる4月19日(日)、教室の305号室で開催いたしました。

延べ30名が出演して、日ごろの練習の成果を披露いたしました。

ほどよい緊張感のなか、大変充実した発表会になりました。

 

当日のプログラムです♪

 

<第1部>それぞれ一人ずつ演奏した後に「フルートアンサンブル」で「野薔薇」を演奏しました♪

 

<第2部>終演後、グランドピアノ2台、電子ピアノ1台、ピアニカ2台で出演者みんなで「茶摘み」を合奏しました♪

 

<第3部>ソロでの演奏に加えて出演者みんなで「夏は来ぬ」「みかんの花く丘」「手のひらを太陽に」を斉唱しました♪

 

ぷりま音楽歳時記 3-12.へ長調

ヘ長調

ヘ長調は♭が1つ。スクリャービンはこの調を「赤い、真紅の」と暖色で色聴しています。♭系を得意としない弦楽器も開放弦を有効に使えるので響きやすい調といえます。

<ヘ長調の曲>

協奏曲第3番ヘ長調 RV 293「四季」より「秋」(ヴィヴァルディ)

秋といえば「真紅」の紅葉が連想されます。となればこの曲の第1&3楽章がヘ長調というのもうなずけます。今回紹介するのは、ヴィヴァルディの「四季」を一躍有名にしたイ・ムジチ合奏団による1970年のライブ映像です。

 

予告♪無料体験レッスン「春の種まきキャンペーン」

2026年5/1~6/30まで「春の種まきキャンペーン」として通常30分で2200円(税込)の体験レッスンが無料となります。

4/24(金)の正午12:00頃にこちらのページで5月分の無料体験レッスンの詳細な日程を発表し、受付を開始します。

先着順となりますのでお早めにお申し込みください。

※なお、無料体験レッスンの受講はお一人様1回に限ります。複数科目、複数回の受講の際は別途費用がかかりますことご了承ください。

小さな春のコンサート2026お知らせ

上記、教室行事、発表会(小さな春のコンサート2026)を実施いたします。どなたも入場無料ですので、当教室にご興味がある方、教室見学もかねてぜひお出かけ下さい。

お電話(038-735-9928)またはこちらからお申込みいただければ幸いです。

SNSをはじめました♪ぜひフォローよろしくお願いします!

SNSをはじめました。

まずは

Instagram(https://www.instagram.com/musicfarm_prima/)です。

教室のビル(3F)で行っているベランダ農園の栽培記録を中心に教室のインフォメーションをしていきたいと思います。

そして

X(https://x.com/musicfarmprima)

主にこのホームページのブログの更新をお知らせすることから始めたいと思います。

皆さんのフォローお待ちしております♪

いかんせんSNS初心者ですので、どうぞお手柔らかにお願いいたします。

今月の1冊『グレン・グールドは語る』

グレン・グールドは語る

前回のエントリーで触れたグレン・グールドへの電話インタビュー(1974年、3日間で計6時間)をまとめたのが本書で、演奏家としてのグールドを知る入門書としておすすめです。

録音時にどうして声を出してながら弾くのか?なぜ椅子を極端に低くして弾くのか?にも言及しています。改めてグールドは天才だけれど変人(笑)だと思った次第です。

ビートルズではなく、同じイギリスの歌手、ペトゥラ・クラークを異様に持ち上げているのも私の趣味に合いました。

グレン・グールドのメディア論が私に与えた影響

の音楽観に強い影響を与えたのが、ピアニストのグレン・グールドです。ただしそれは、彼の誰も真似ようのないピアノ奏法ではなく、録音についてを中心にした彼のメディア論です。

グールドは1955年にプロデビューするも1964年にはコンサート活動から引退します。亡くなる1982年までその演奏活動はラジオ・テレビ・レコードといったメディアを介してのみとなります。コンサート引退後に彼が記したメディア論「レコーディングの将来(1966年)」<『グレン・グールド著作集2』(みすず書房)に所収>が秀逸で私のグールドへの関心の原点となります。ここでグールドはメディアの発達に伴い、音楽において作曲家・演奏家・聴衆といった従来のはっきりとした役割分担の境界がなくなると予測します。確かに現在はインターネット上の動画サイト等で誰もが気軽に自身の演奏を公開できるようになりました。今やAIの手助けさえあれば、素人でも作曲ですら楽々できてしまう時代です。かつての聴衆も容易に表現者になれるのです。

以下「レコーディングの将来(1966年)」からの引用です。

「私の見解では、電子時代がくれば、音楽芸術は今よりはるかに想像力に訴えながらわれわれの生活の一部となり、生活の飾りとしての役割ははるかに少なくなって、ついにはわれわれの生活をもっと深いところから変えるであろう。」(前掲書p.170)

つまり音楽は特別な非日常的な存在ではなく、ごくごく身の回りにある日常的な存在になるとグールドは述べるのです。私もこの点について共感します。音楽が身近だからこそ、その影響力の深度は高まるのです。最後もグールドの言葉を引用して締めくくりたいと思います。

「聴衆が芸術家であり、その生活自体が芸術となるだろう。」(前掲書p.171)

黒鍵ペンタトニック「結婚しようよ」(吉田拓郎)

結婚しようよ」(吉田拓郎)

1970年代に入ると日本での若者たちによる「政治の季節」に陰りが見え、1972年2月の「あさま山荘事件」でその風はすっかりと止んでしまいました。フォークソングも「政治の季節」と決別し、この事件が終結した翌3月にオリコンチャート3位まで駆け上がったのが、よしだたくろう(吉田拓郎)の「結婚しようよ」です。

これまで社会的なメッセージを背負いがちだったフォークソングで、若者たちの等身大の姿を私小説的に表したてんでこの曲は画期的で、翌年発表された「神田川」(かぐや姫)と共に日本のフォークソングの方向性を定めるに加え、従来の歌謡曲にはない新機軸、「ニューミュージック」の嚆矢ともなるのです。

なおこの曲の編曲を務めたのは、加藤和彦です。そして録音には後の「ティン・パン・アレー」の林立夫と松任谷正隆が参加します。なお松任谷はこの曲でレコーディングデビューを果たします。のちにアルバム「ティン・パン・アレー2」(1975)では松任谷アレンジによるこの曲のインストルメンタル版を聴くことが出来ます。

この曲に脅威を感じたのが、歌謡曲の巨人、筒美京平。「たくろうさんの『結婚しようよ』が出た時は、こりゃあ大変だと思った。やっぱり新しかったと思う。」と回想しています。

この曲のメロディは全編、四七抜き長音階で作られています。メロディが5音なのに、そのサウンドが新しかった点に筒美は吉田拓郎の才能を認めたのでしょう。

ぷりま音楽歳時記 3-11.変ロ長調

<変ロ長調>

調号が♭2つの変ロ長調。この調は黒鍵が少ないものの、主音が黒鍵になるので音階の運指も変則的です。弾きにくいせいもあるのか、ピアノの名曲が少ない気もします。

<変ロ長調の曲>

マズルカ Op.7-1(ショパン)

60曲近くあるショパンのマズルカ、そのうち5曲も変ロ長調です。弾きにくい調とはいえ、独特な調の魅力をショパンは感じたのでしょう。今回紹介するのはとくに有名なOp.7-1。スタインウェイ・フランスにて収録、2019年に公開された。ルイサダによる演奏です。

 

今月の一冊『フォークソングが教えてくれた』

『フォークソングが教えてくれた』

学生運動では、考えが近しい党派間ほど仲が悪く「内ゲバ」が起こってしまいました。日本のフォークソングの界隈も、仲間同士それほど仲が良くなくて、面倒で複雑な人間関係をつい思い浮かべてしまいます。そのせいか書籍でもフォークソングを各論的に論じるものはあっても、総論的に論じるものは滅多に目にしません。日本のフォークソングを概観するこの本は、私のような後追い世代にとっては大変分かりやすくありがたいです。

時々の結果に左右されることなく日々粛々と

コロナ禍での緊急事態宣言からはや6年。対面レッスンが出来なくなりその対策に七転八倒していた当時をふと思い出します。その最たるものがリモートレッスンで、あれこれ試したものの結局うまくいかず、徒労感と無念さだけが、当時は残りました。

ただコロナ禍で、SNSを苦手とする私LINEを始めてみたり、教室のホームページを開設したり、仕事でインターネットを活用し始めたのは大きな変化で、今に至る第一歩となりました。レッスンでも変化がありました。それまではレッスン時にボイスレコーダー等で模範演奏を録音して、生徒さんに渡していました。ですが、現在では手元を撮った動画を渡すようになりました。スマホで映した動画をLINEで送るのです。音声に加え、具体的な運指まで確認できるので、まさに鬼に金棒です。模範演奏を音声から動画に切り替えたところ、皆さんの練習効率も上がっているようで、私も大きな手応えを感じています。

このスマホの手元動画を活用できるようになったことで、リモートレッスンでの失敗に対する無念さがようやく晴れたように思います。スマホ用のアームスタンドを準備したり、撮影角度を工夫したり、リモートレッスンに向けての試行錯誤がようやく日の目を見るようになり、当時の労力がやっと報われたように感じたのです。

労力に対してその都度、直接的に報われたいものですが、こうして間接的にめぐりめぐってくることもあるのです。いつ結果が出るか分からないからこそ、それに左右されることなく日々粛々と試行錯誤を続けるに限ります。

いきいきピアノフォーラム VOL.7 無事終了

本日いきいきピアノフォーラムVOL.7、予定座席満席、盛会のうちに終了しました。

ご参加いただいた皆様ありがとうございました。

いずれタイミングをみて今回の内容はこちらのブログにもアップしていきたいと思います。

(今日の講座で使用したプレイリストだけリンクを張っておきます。)

 

 

黒鍵ペンタトニック「白い色は恋人の色」(ベッツィー&クリス)

「白い色は恋人の色」(ベッツィー&クリス/作曲:加藤和彦)

1967年12月「帰ってきたヨッパライ」でデビューしたザ・フォーク・クルセダーズは、翌年12月、シングル「青年は荒野を目指す」を発表し、自ら定めた1年の期間限定の活動を終え解散します。その後、メンバー各々、ソロ活動を始めます。特に加藤和彦の音楽スタイルはフォークにとどまらず、1970年代は、サディスティック・ミカ・バンドを率いてロックスタイルで活動します。70年代末から80年代初頭は、バックバンドにY.M.O.のメンバーを従え「ヨーロッパ三部作」を制作する等、変幻自在にそのスタイルを変えていきます。それに加え、他アーティストへのプロデュースや楽曲提供も行い活躍しました。2009年、62歳で急逝、2024年にはドキュメンタリー映画「トノバン 音楽家加藤和彦とその時代」が公開され、その音楽作品の再評価の機運も高まっています。

加藤の最初のソロアルバム「ぼくのそばにおいでよ」(1969)の発表とほど近い時期にアメリカ人のフォークデュオ、ベッツィ&クリスへ楽曲提供したのが、今回紹介するこの曲。作詞したのは、やはりザ・フォーク・クルセダーズのメンバーだった北山修です。作詞家として成功したのち、精神科医として大学教授としても活躍しました。なお加藤&北山コンビで作られた代表曲が「あの素晴らしい愛をもう一度」(1971)になります。

この曲の冒頭のメロディは四七抜き長音階で作られています。サビで第7音が加わって盛り上がる王道的な展開の曲といえます。

ぷりま音楽歳時記 3-10.変ホ長調

変ホ長調

調号は♭が3つの変ホ長調。この調をマッテゾンは「ただ真面目で、悲しげ」と色聴しています。吹奏楽の曲でこの調はよく使われます。公務員である警察・自衛隊音楽隊は実質、吹奏楽団なので、確かに真面目な印象といえるかも。

<変ホ長調の曲>

星条旗よ永遠なれ(スーザ)

アメリカの「国の公式行進曲」にも制定されているこの曲。作曲したのは「マーチ王」と呼ばれた元海兵隊音楽隊隊長であるスーザ。今回紹介する演奏は作曲家本人が指揮した「スーザ楽団による1909年の歴史的な録音です。

今月の一冊『あの素晴らしい日々 加藤和彦、「加藤和彦」を語る』

あの素晴らしい日々 加藤和彦、「加藤和彦」を語る

前々回のエントリーで取り上げた「悲しくてやりきれない」を作曲した加藤和彦のインタビューをまとめた一冊です。暫く絶版だったのですが、2024年のドキュメンタリー映画の公開に合わせて、タイトルを変更して再発されました。

読めばわかりますが、加藤の音楽活動は変革に次ぐ変革といってもよく、それに伴って協働するスタッフや環境も大きく変化します。

才能ゆえの大きな変革とはいえ、それが叶わなくなった時、絶望的に息詰まってしまったかと思うと勿体なくも感じます。

日々の微調整を続けて幸福度を上げる

日々のウォーキングで欠かせないのが、やはり音楽です。録りためたラジオの音楽番組等を聴きながら歩いています。その際、外音を遮断するイヤホンではなく適度に外音が聞こえる開放型のヘッドホンを使っています。

このヘッドホンは、軽量・安価(円安でだいぶ高くなりましたが…)・程よい音質なので気に入っています。ただ難点は昔ながらの製品なので、省エネで動かす現在のスマホなどのプレーヤーだと、パワー不足で充分に音を鳴らせません。パワー不足を補うためにポータブルのアンプを常用しています。このアンプは中の部品交換が可能で、それに伴い音質も変わります。なので、自分の好みの音に鳴るよう、あれこれパーツ交換しています。ヘッドホンも元々付属していたイヤーパッドだと耳が痛くなるので、別途で汎用品に交換するなど、日々、散歩用の音楽環境を微調整しています。結果、自己満足ではありますが、散歩時の「ながら聴き」の幸福度は格段に上がりました。

これはピアノの練習にも当てはまりそうです。調子が今一つの時は、劇的に練習法を変えたくなります。でも私の経験上、上手くいったためしはありません。スランプ時ほど微妙に練習を変えた方がいいと感じます。いつもより5分間だけ練習時間を長くする等、ほんの些細なことから始めるといいようです。日々での比較では、その差はほとんど感じられなくとも、月・年単位で振り返れば、その違いや成長を実感できると思います。日々の微調整を続けることで、練習での幸福度も上げたいものです。

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