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黒鍵ペンタトニック 「さくら音頭」(中山晋平)

「さくら音頭」(中山晋平

「ドドンガドン」、昭和終わりの私の子供時代、夏の夕方、毎週末になると盆踊り大会がそこかしこの公園で催され、櫓(やぐら)が組まれ、この音頭のリズムが流れてきたものでした。

この「ドドンガドン」のリズムの音頭は太古の昔からあるものだとばかり思っていましたが、そのスタイルが確立したのは昭和初期(詳しくはこちら)。まさに「新民謡」そのものといえます。そしてそのフラッグシップとなったのが「東京音頭」(1933年・昭和8年)。作曲はもちろん中山晋平です。この曲は現在もヤクルトスワローズの応援歌で使われるなど、最も長きに渡りヒットした「新民謡」といえるでしょう。発表当時も熱狂的なブームとなり、その夏、東京中の公園という公園が「東京音頭」一色に塗りつぶされたそうです。惜しくも「東京音頭」は四七抜き短音階の曲なので黒鍵だけでは弾けません。

そこで今回紹介するのは、その翌年、音頭ブームがエスカレートする中で発表された「さくら音頭」です。レコード会社各社、様々な作曲家を擁して競作する中、群を抜いてヒットしたのがこの中山晋平のビクター版でした。

「流行歌」「童謡」「新民謡」と中山晋平の主要創作ジャンルをざっと見渡しましたので、この特集はこれで一区切りしたいと思います。

黒鍵ペンタトニック「三朝小唄」(中山晋平)

「三朝小唄」(中山晋平

中山晋平の創作ジャンル、これまで「流行歌」「童謡」と見てきましたが、三本柱の最後、「新民謡」について、今回から見ていきたいと思います。

明治以降、西洋化を進めた日本の社会ですが、1923年(大正12年)の関東大震災で転機を迎えます。昭和初期にかけて、復古的な文化運動が起こるのです。例えば美術では、1926年(大正15年)に「民藝運動」が始まります。ほぼ時を同じく、音楽では「新民謡運動」がスタートするのです。中山晋平はその運動の中心人物といえました。「新民謡」とはいえ実際は、民謡風の新曲です。いかにも古くからありそうな「ちゃっきり節」(町田嘉章作曲)などが新民謡の典型で、実はこの曲、静岡鉄道のCMの為に作られた新曲なのです。新民謡は地域振興や観光宣伝のためのご当地ソングでもあったのです。

和洋折衷の作曲が得意な晋平には、新作民謡はお手の物、多くの曲をヒットさせます。今回紹介する「三朝小唄」もそんな曲です。1925年(大正14年)、鳥取の三朝温泉に、詩人の野口雨情と旅行をした晋平。旅の宴の余興で、その場で雨情が詩を書き、晋平が曲をつけました。翌々年、それを改作して正式に発表し、ヒット曲になります。1929年(昭和4年)には同名の無声映画も制作、三朝温泉の知名度が全国的になりました。

なおこの曲も、二六抜き短音階をベースに曲が作られています。1か所を除いて黒鍵で演奏することが出来ます。

黒鍵ペンタトニック 「あめふり」(中山晋平)

「あめふり」(中山晋平

昭和初期の童謡運動では「赤い鳥」や「金の星」等の児童雑誌がその中心を担いました。楽譜が雑誌に掲載されることで、多くの人に曲が知られていったのです。同様に大きな影響力を持ったのがレコードです。昭和初頭に、コロムビアやビクターなど外資大手が日本に本格参入すると、レコード業界は急成長。重要なメディアとなり、童謡ブームを下支えしました。

なおコロムビアは「七つの子」等で有名な本居長世と、一方ビクターは中山晋平と専属作曲家契約を締結します。レコード会社と作曲家の間で専属契約する仕組みは、戦後暫くまで残存し、歌謡界の骨子ともなったのです。

中山晋平の場合、レコードの吹込みには、歌姫・佐藤千夜子はもちろん、童謡歌手・平井英子が常連となります。晋平と共に平井英子も、歌手として日本ビクターの設立と同時に専属契約を結びます。その時、わずか10歳、まさに子役スターとして数多くの童謡を録音します。(大変なご長寿で2021年、103歳でご逝去されます。)

前回紹介した「肩たたき」同様、今回も平井英子によって吹き込まれた「あめふり」を紹介します。なおこの曲も黒鍵だけで弾ける四七抜き長音階で作られています。

1931年(昭和6年)平井英子の歌唱による録音。

黒鍵ペンタトニック 「肩たたき」(中山晋平)

「肩たたき」(中山晋平

さて中山晋平と子ども達との関りはとても深いものでした。晋平は高等小学校を卒業すると18歳で上京するまでの約2年間、尋常小学校の代用教員を務めます。

晋平の教授法はユニークだった。≪鉄道唱歌≫を教えるとき、生徒にオルガンの周りにエンジンを作らせた。子供達に、ぐるぐると回りながら、リズムをとりながら歌わせた。(菊地清磨著「中山晋平伝」34頁)

上京してから晋平は、作家・島村抱月の書生と東京音楽学校の学生との二足の草鞋を履きましたが、卒業後も抱月主宰の劇団「芸術座」の座付き作曲家と浅草・千束尋常小学校での音楽専科の教員との二重生活を送ります。抱月の死去後、1919年に「芸術座」が解散。晋平は生活の糧となる車輪の片輪を失います。

ですが、時は童謡運動の隆興期を迎え、小学校教員の晋平にも光明が差します。1921年、雑誌「少女の友」での「てるてる坊主」の発表を皮切りに童謡の作曲に本格的に進出し、多くのヒット曲を残します。

今回取り上げるのは1923年に雑誌「幼年の友」で発表した「肩たたき」。この曲は晋平が得意とした四七抜き長音階で作られています。子供の日常生活に見事にフィットしたリズムも絶妙です。

1930年(昭和5年)平井英子の歌唱による録音です。

黒鍵ペンタトニック 「鉾をおさめて」(中山晋平)

「鉾をおさめて」(中山晋平

東京行進曲」をはじめ、中山晋平のヒットした流行歌の多くは四七抜き音階でも短音階を使ったものが主流となります。代表曲「船頭小唄」や「波浮の港」も四七抜き短音階で作られています。

さて四七抜き短音階とは?白鍵の音だけで示せるイ調の短音階で見てみます。音階の4,7番目の音を抜くと「ラシドミファラ」との5音階になります。この音階での有名曲を上げると、「さくらさくら」「美しき天然」など、音階中の半音「ミファ」「シド」の音程が何とも言えない哀愁を漂わせるように思います。晋平が得意とした四七抜き短音階による曲作りは、古賀政男に引き継がれ「人生劇場」「悲しい酒」等々、いわゆる演歌の基礎となります。不思議なもので前世代の晋平の曲の方がモダンに聴こえ、後世の古賀の曲の方が復古調に聴こえてしまいます。

これはどうも歌唱法にも原因があると思います。晋平の曲をレコードに吹き込む常連歌手、佐藤千夜子は東京音楽学校声楽科出身、西洋式の発声法で歌うためモダンに聴こえるのかもしれません。今回紹介するのは、その男性版、オペラ、藤原歌劇団の創設者、藤原義江が歌唱する晋平作曲の「鉾をおさめて」(1928年)です。なおこの曲は全編、四七抜き長音階で出来ているので、黒鍵だけで弾けます。

黒鍵ペンタトニック 「紅屋の娘」(中山晋平)

「紅屋の娘」(中山晋平

中山晋平が作曲家のキャリアを劇中歌の作曲でスタートしたのは、「ゴンドラの唄」を紹介した時に述べた通りです。

昭和になり、新メディアである映画の誕生以降、晋平についてまわるのが映画での「劇中歌」です。1928年、アメリカの無声映画「マノンレスコオ」に日本独自の主題歌「マノンレスコオの唄」を晋平が作曲してヒット。以降、国内制作の映画でも主題歌を作るのが習慣化します。その最初が映画「東京行進曲」(1929年)で主題歌を晋平が作曲します。映画公開に先立ちレコードを販売したところ、25万枚の売上げを越える大ヒットとなります。映画とタイアップした晋平作曲の主題歌は「愛して頂戴」「唐人お吉の歌」「アラその瞬間よ」「この太陽」等々次々とヒットしていきます。(ただしこれらのヒット曲はみな四七抜き短音階で作られているので、残念ながら黒鍵だけでメロディを弾くことはできません。)

今回は晋平最大のヒット曲「東京行進曲」のカップリングのB面、「紅屋の娘」を紹介します。この曲は四七長音階で出来ているので、黒鍵だけで演奏できます。なおこの曲のレコードでピアノ伴奏を務めるのは作曲家である晋平自身です。

黒鍵ペンタトニック 「証城寺の狸囃子」(中山晋平)

証城寺の狸囃子」(中山晋平

今エントリーからしばらく中山晋平を特集します。

中山晋平の曲は、大きく3分類できると思います。第1が「流行歌」、第2が「新作民謡」、そして第3が「童謡」。この分類毎に数曲ずつ眺めていきたいと思います。まず今回はそのイントロダクションです。

今回取り上げる「証城寺の狸囃子」はやはり中山晋平の代表作だと強く思うのです。この曲は前述の3分類の要素を全て含むからです。一応この曲は「童謡」とされますが、「新作民謡」の要素も含みます。そして何といっても強力な「流行歌」でもあります。近年でも2021年放送のNHK朝の連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」でこの曲が使用され、大正末期の曲が時代を超え、令和の現在にも通用。改めてこの曲が骨太なポップソングであることを思い知らされました。

なおこの曲は何かと英語と縁の深い曲でもあります。1946年、ラジオ「カムカム英語」の主題歌に用いられたことはもちろん、1951年には、日本にジャズブームの火をつけたジーン・クルーパ・ジャズトリオがこの曲を録音します。さらに1955年にはアーサー・キットが英語詞で歌唱しています。

なお、この曲は1か所を除いて、四七抜き長音階で作られていて「晋平節」そのものといえます。

黒鍵ペンタトニック 「砂山」(中山晋平)

「砂山」(中山晋平)

文学か音楽かでその進路を悩んでいた中山晋平が、東京音楽学校に進学して何をしたかったのか?

郷里の兄への手紙にその一端が垣間見えます。「小生はピアノや唱歌がアマリ上等の口ではなけれど幾分文学的の素養があるため来年から特に技術部の外に楽歌部といふ主に作歌作曲の科を置いて貰へることに略交渉がまとまりかけて候」。晋平のいう「作歌作曲」とは高尚な芸術音楽ではなく人々が口ずさめる歌を作ることを指します。若き晋平には新たな分野を開拓すべく学校に交渉するまでの強い情熱がありました。(残念ながらこの交渉は失敗に終わりますが…)

卒業後、流行歌の若手作曲家として一躍台頭した晋平は、学生時代のその思いを実現に移していきます。折しも児童文学の機運も高まり、1918年に雑誌「赤い鳥」が創刊。従来の「唱歌」とは異なる新たな「童謡」が誕生します。晋平も1919年までには本格的に童謡の作曲に携わります。そして数々の名作を残すことになります。今回はその中で1922年に作曲した「砂山」を紹介します。この曲は晋平がお得意の5音階(ペンタトニック)で作られていますので黒鍵だけで演奏できます。なお作詞は北原白秋。同じ詩に山田耕筰も曲をつけているのは大変興味深いところです。

中山晋平の「砂山」(歌唱は渥美清)

山田耕筰の「砂山」(歌唱は同じく渥美清)

黒鍵ペンタトニック 「ゴンドラの唄」(中山晋平)

ゴンドラの唄」(中山晋平)

前回記した山田耕筰は、歌曲の作曲のみならず、日本初の交響曲を作り、交響楽団を率いるなど正統的にクラシック音楽の道を歩んでいきました。

その山田と、同い年で、同じ東京音楽学校出身の作曲家が中山晋平です。(ちなみに1908年に山田は卒業、入れ違いで同年、中山が入学しています。)

中山の歩みは山田とは対照的でした。中山は音楽か文学科で進路に悩む青年で、劇作家の島村抱月の書生を務めました。その傍らに音楽学校に通うという少し変わり種の音楽学校生でした。

その中山の作曲家としてのキャリアは島村主宰の劇団「芸術座」の舞台での劇中歌(現在でいうドラマ主題歌に相当)の作曲から始まります。「カチューシャの唄」「ゴンドラの唄」「さすらいの唄」と立て続けに、レコード・楽譜販売でヒットを飛ばします。今回はその中からペンタトニック(5音階)で作られたゴンドラの唄を取り上げます。

なおこの3曲とも歌唱してレコードに吹き込んだのは、「芸術座」の看板女優、松井須磨子でした。須磨子は1918年にスペイン風邪を患い急逝した島村の後を追ってしまいます。座長と看板女優を失った「芸術座」はそのまま解散します。

ですが中山晋平はこの一連の劇中歌のヒットを足がかりに近代日本の流行歌の礎を築いていきます。

 

1915年(大正14年)6月 松井須磨子歌唱によるレコード(ニッポノホン) 

1952年(昭和27年) 映画「生きる」劇中 志村喬による歌唱

 

 

黒鍵ペンタトニック 「てるてる坊主」(中山晋平)

てるてる坊主」(中山晋平)

黒鍵4音で弾けるわらべうたの第4弾です。

2019年のレコード大賞曲は、「パプリカ」でしたが、実はこの曲はペンタトニック(5音階)をベースにメロディが作られています。(曲中にはもちろん、一般的な7音階を使っている所もあるので、そう単純な曲ではありませんが…)

作者の米津玄師が作る他の曲も含め、ここ数年のヒット曲の多くにペンタトニックが用いられる傾向があると思います。

そのペンタトニックで流行歌を作曲する元祖が今回紹介する中山晋平です。1912年(明治45年)に東京音楽学校本科ピアノ科を卒業。島村抱月が旗揚げした劇団「芸術座」に参加し、1914年(大正3年)に作曲した劇中歌「カチューシャ」が大当たりして一躍、流行作曲家として有名になります。

中山晋平は本当に多くの曲をペンタトニックで作曲していますのでこのコーナーで取り上げることも多くなります。その都度、エピソードを少しずつ紹介していこうと思います。

さて、「てるてる坊主」ですが、この曲は1921年(大正10年)に「少女の友」にて発表されました。当初の3番の歌詞は、童謡らしからぬ過激な詩の内容のため、後に削除されました。

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