- 春日部で40年。あなたの街の音楽教室。ミュージックファームぷりま

ピアノ・声楽・ギター・バイオリン・フルート・クラリネット

今月の一冊 『ニッポンの音楽(増補決定版)』(佐々木敦)

『ニッポンの音楽(増補決定版)』(佐々木敦)

昨今の出版不況で文庫・新書であってもすぐに絶版になってしまう中、元々新書だったものが文庫として増補版で復活したのがこの本です。

昭和40年代の「はっぴいえんど」を出発点に「J-pop」がどのように生まれ、変化し、そして現在に至っているのか?おおよそ日本のポピュラー音楽の半世紀の歴史を眺めています。

今度は絶版にならず何とか踏みとどまってほしいものです。

今月の一冊 文藝別冊『大瀧詠一』(増補新版)

文藝別冊『大瀧詠一』(増補新版)

 

歌手・大滝詠一は作曲家としての実績はさることながら、音楽研究家としての功績も見逃せません。特にこのムック中の「分母分子論」は明治以来、日本でどのように洋楽を受容し、そして邦楽としてどう消化・定着していったかを知る面白い音楽文化論です。

こちらの「黒鍵ペンタトニック」もこの論に刺激を受けたところ思いついたものです。なお1995年と1999年にNHKラジオで放送された「大瀧詠一の日本ポップス伝」はこの論のラジオ実践版です。あわせてお薦めいたします。

今月の一冊 大石始著『ニッポン大音頭時代』

『ニッポン大音頭時代』

大石始著/河出書房社/ISBN(13)978-4309276137

すっかり日本の伝統とばかり思いこんでいた音頭。でも実は比較的最近になって成立したことをこの本で知りました。前回のエントリーと同様、こうした思い込みは身の回りの日常に結構あるのかもしれません。

その成立から現在に至るまでの音頭の変遷を辿ったこの本、大変興味深く読みました。そして音頭は国内にとどまらず、日系人社会を中心に国際的にも広まっていることを知り驚きました。音楽文化の伝播の強靭さ・奥深さを改めて思い知らされました。

今月の一冊 小沼純一著『ミニマル・ミュージック』

『ミニマル・ミュージック』

小沼純一著/青土社/ISBN(13)978-4791755783

前回のエントリーで触れたミニマル・ミュージックにハマりだした頃に、ガイド本として大変お世話になりました。

テリー・ライリーの他、スティーブ・ライヒラ・モンテ・ヤングフィリップ・グラスの4人の作曲家がやはり私にとってミニマル四天王です。そして4人とも米寿近くの高齢にもかかわらずみな健在で、ミニマルはもしかしたらご長寿音楽かもしれないと思う今日この頃です。

ミニマルは、久石譲氏にも多大な影響を与えています。宮崎駿のジブリ作品(特に初期)や北野武映画の音楽ではかなりミニマル的な手法を用いているので、久石譲作品がお好きな方は、ミニマルを聴くのに挑戦してもよいかもしれません。

今月の一冊 山下洋輔著『新編 風雲ジャズ帖』

『新編 風雲ジャズ帖』

山下洋輔著/平凡社/ISBN(13)978-4582765021

山下洋輔トリオでの公演旅行記を収録したのがこの本。前回のエントリーで触れた乱入ライブについても、もちろん触れられています。

山下トリオ(初代)の最大の功績は、ツアー先の福岡で素人時代のタモリを発掘し上京させたことだと勝手ながら思っています。もちろんそのタモリとの出会いのエピソードも書き記されています。

抱腹絶倒のエピソードが満載な一方、さりげなく真面目な「ブルーノート研究」も収められて、大変読み応えがあります。

今月の一冊(本)映画『愛情物語』(1956年)

『愛情物語』

今回紹介するのは本ではなく映画です。1956年のアメリカ映画『愛情物語』をお勧めします。実在のピアニスト、エディ・デューチンの生涯を描いた物語。カーメン・キャバレロのアレンジによるショパンのノクターン第2番が劇中に用いられ、この曲は一躍人気曲になります。

私にはややロマンティック過ぎる気もしますが、まあそれもたまにはいいでしょう。

※最近は、古いアメリカ映画を観ることが多くなりました。今の殺伐とした世情の中、観るだけで心が洗われる思いになります。

 

今月の一冊 柳瀬博一著『国道16号線』

『国道16号線』

柳瀬博一著/新潮社/ISBN(13)978-4103537717

当教室のある春日部にも通る「国道16号線」。この環状道路沿いには1100万にもが居住しているとのこと。この道沿いでどのように社会・経済・文化が作られてきたか?道路という社会インフラに注目した視点が大変面白い文明論です。

第3章が「戦後日本音楽のゆりかご」と丸々、音楽論に充てられています。戦前は軍用の物資の運搬も担ったこの道は、戦後、進駐軍に接収され米軍基地が出来ると、アメリカ文化の発信通路ともなったのです。

今月の一冊 岡野弁著『メッテル先生』

『メッテル先生』

岡野弁著/リットーミュージック/ISBN(13)978-4845633401

日本のポップスで服部良一の存在は大変に重要です、氏の登場で曲のアレンジ技術が飛躍的に向上したのは間違いありません。その服部良一に作曲理論を指南したのが、この本の主人公、「メッテル先生」。服部はメッテルから学んだ技術を、上京した際に惜しげもなく仲間に伝えます。それが服部の私塾「響友会」です。メッテルは服部に、「習ったことは全部人に伝えなさい。教えることはあなたの勉強になります。」と伝え服部はそれを実践したのです。

今月の一冊 松村正人著『前衛音楽入門』

『前衛音楽入門』

松村正人著/Pヴァイン/ISBN(13)978-4909483133

前回のエントリーでも触れた前衛的な音楽は、どうしても難しさや分かりにくさが先立ち、メディア等でも滅多に取り扱われません。たとえ興味を持ったとしても、その入り口にすらなかなか辿りつきにくいのが現状なのかもしれません。

この本はそんな取り扱いが面倒そうな前衛音楽の歴史を、出来る限り概観しようと試みた意欲作だと思います。クラシックの文脈からのみならず、ジャズの文脈からも歴史を紡ぎだしているのが特によいと思います。

今月の一冊(本) 映画『ライフ・イズ・ビューティフル』

映画『ライフ・イズ・ビューティフル』

ロベルト・ベニーニ監督/角川書店/ASIN ‏ : ‎ B002TUEW5I

コロナがひと落ち着きしたら、今度は戦争。ニュース映像ばかり見ていると気が滅入ってしまうので、最近は読書より視覚インパクトのある映画鑑賞ばかりして気を紛らわしています。

今回も先月に引き続き紹介するのは映画。「ライフ・イズ・ビューティフル」、悲惨なホロコースト下での物語です。どんなに厳しい極限状態に追い込まれても、やはり人間にはエンターテイメントが欠かせないのだと、この映画を観ると思い知らされます。

 

今月の一冊(本) 映画『アマデウス~ディレクターズカット版』

映画『アマデウス~ディレクターズカット版』

ミロス・フォアマン監督/ワーナーホームビデオ/ASIN ‏ : ‎ B003GQSYIA

久しぶりに今月の1冊(本)ではなく1枚(映画)です。

かつては長尺の映画はあまり得意ではありませんでした。ですが、コロナの外出制限時、時間のゆとりがあったおかげですっかり楽しく観れるようになってしまいました。そこで久しぶりに観返し、感心したのが映画「アマデウス」。ディレクターズカット版だと丸々3時間かかるのに、観始めたらあっという間。息つく間もない展開に食い入るように観てしまいました。

当時の楽器(鍵盤の白黒が現在とは逆)が登場する等、細部まで時代考証されているのもとてもいいですね。

今月の一冊  團伊玖磨著『パイプのけむり選集 食』

『パイプのけむり選集 食』

團伊玖磨著/小学館文庫/ISBN(13)978-4094083903

以前も紹介しました日本を代表する作曲家、團伊玖磨氏。その曲もさることながら、特に私が好きなのは氏のエッセイ。今回紹介するのは、雑誌「アサヒグラフ」の名物コラム「パイプのけむり」の選集。これはテーマが「食」に絞られています。

音楽家ならではのリズム感溢れる文章で読んでいてウキウキしてきます。こんなセンスのある文章を私も書いてみたいところですが、とても及びそうにありません。特に「金平糖」の話が私のお気に入りです。

今月の一冊  ジム・フジーリ著『ペット・サウンズ』

『ペット・サウンズ』

ジム・フジーリ著/村上春樹訳/新潮文庫/ISBN(13)978-4102179611

ザ・ビーチ・ボーイズの傑作アルバム「ペット・サウンズ」。この本はその制作過程やバンドの中心であるブライアン・ウィルソンの波乱万丈の人生に迫ったノンフィクションです。

暴露的であったり批判的な内容が多いこの手のジャンルの中で、この著者のこのアルバムやブライアンに対する偏愛ともいえる深い愛情を感じられ、読後、心地よい幸福感に包まれました。

文中に出てくる曲を動画サイトで探して、聴きながら読むのがおすすめです。訳者はかの村上春樹です。

今月の一冊  細川周平著『近代日本の音楽百年 第1巻 洋楽の衝撃』

『近代日本の音楽百年 第1巻 洋楽の衝撃』

細川周平/岩波書店/ISBN(13)978-4000272261 

コロナ禍で出版された音楽書で、が個人的に最も衝撃を受けたのがこの本。江戸末期から第二次世界大戦までの日本の大衆音楽史をまとめた全4巻の大著です。

ジャンル・時代等々、各論的に大衆音楽を扱う本は多いですが、通史としてまとめたのがこの本の驚異的なところです。

難点は専門書なので高価なこと、気軽に手を出せません。ですが心配ご無用。春日部市立図書館に無事所蔵されましたので、ご興味のある方はぜひ借りてお読みください。

今月の一冊  養老孟司・久石譲著『耳で考える』

『耳で考える』

養老孟司・久石譲/角川文庫/ISBN(13)978-4047102057

音楽専門書も好きですが、音楽家と異業種のプロによる対談本も好んでよく読みます。

今回紹介するのは、ジブリアニメをはじめ映画音楽でもすっかりおなじみの久石譲氏と「バカの壁」のベストセラーでも有名な解剖学者、養老孟司氏との対談本です。

対談(おしゃべり)から縦横無尽に話題が広がり、その内容に興味は尽きません。

養老先生が、仕事中はずっと音楽を流しっぱなしの「ながら族」であることが分かり、大変共感してしまいました。

 

今月の一冊  近田春夫著『筒美京平 大ヒットメーカーの秘密』

『筒美京平 大ヒットメーカーの秘密』

近田春夫/文藝春秋/ISBN(13)978-4166613250

週刊文春の人気コラムだった「考えるヒット」でおなじみの音楽家、近田春夫。この本は2020年に亡くなった筒美京平についての近田の論考です。年代順に追っていてしかも会話調の文体なので大変読み易いです。この本で一番衝撃を受けたのが、小学生になったばかりの筒美が初めて作曲した「さんぽかいのうた」の楽譜。処女作にして全編、5音階(ペンタトニック)で作曲しているのです。ペンタトニックでの曲作りは、まさに「三つ子の魂百まで」だったのです。

今月の一冊 伊藤友計著 『西洋音楽の正体 調と和声の不思議を探る』

『西洋音楽の正体 調と和声の不思議を探る』

伊藤友計/講談社/ISBN(13)978-4065227381

このコロナ騒ぎの中、私にとっては近年まれにみる音楽本の出版ラッシュ、読みたい本が続々と出版され嬉しい限りです。その中でも特に驚き、深く感心したのがこの本です。前回のエントリーで触れたマッテゾンの「新設のオルケストラ」についても触れられています。一般書ではありますが、少し内容が難しいので、ご興味のある方は前々回のこのコーナーで触れた「古楽のすすめ」を読んでから挑戦すると、多少理解しやすくなるかもしれません。

今月の一冊 細馬宏通著 『うたのしくみ 増補完全版』

『うたのしくみ 増補完全版』

細馬宏通/ぴあ/ISBN(13)978-4835646251

流行歌は意外にも歌詞・メロディ・リズム・コード進行(伴奏の和音)等、様々な要素があり複雑に出来ています。分析する時はそれぞれの要素だけを、つい抜き出しがちに。ですが、この本では複雑な「うたのしくみ」について各章一曲ずつ丁寧に解説しています。にもかかわらず難しい専門用語もあまり用いず、分かりやすい言葉で書かれているのが、大変素晴らしいです。はシーズン2の12「おどけた軍歌」の話が特に気に入っています。

今月の一冊 金澤正剛著 『新版 古楽のすすめ』

『新版 古楽のすすめ』

金澤正剛/音楽之友社/ISBN(13)978-4276371057

私たちが普段あたり前のように使っている階名「ドレミファソラシ」や記号「#・♭・♮」などは、いつ、どこで、どのように使われだしたのか?その起源を気にすることはあまりないと思います。

この本ではその疑問について応えてくれています。本のタイトルだけだとやや馴染みにくく見えてしまいますが、「バッハ以前の音楽」である「古楽」に興味を持つと、また異なる観点から現在の音楽を眺められ、面白いかもしれません。

今月の一冊 小泉文夫著 『歌謡曲の構造』

『歌謡曲の構造』

小泉文夫/平凡社/ISBN(13)978-4582761658

この本を読み、日本のポップスが、明治・大正の唱歌・童謡と同様に頻繁にペンタトニック(5音階)を用いていることを知りました。そして平成のJ-pop、そして令和の現在もその傾向に変わりありません。そして黒鍵だけで「四七抜き長音階」「二六抜き短音階」のメロディを弾けることに気づけました。まさにこの本は「『黒鍵ペンタトニック』の父」とも言えます。巻末にある曲目リストがありがたく、大変重宝しております。

 

 

今月の一冊 村上春樹著 『意味がなければスイングはない』

『意味がなければスイングはない』

村上春樹/文藝春秋/ISBN(13)978-4167502096

クラシック、ポップス、ジャズ等、音楽ではジャンルが確立していて、それぞれの専門家がいるせいか、ジャンルをまたがって一冊にまとめる音楽本は意外に少ないように思います。なのでこうしたジャンルを横断した音楽エッセイは、偉大なる門外漢、小説家・村上春樹ならではの仕事だと思います。

私は特に「ゼルキンルービンシュタイン・二人のピアニスト」と「ブライアン・ウィルソン」の章が特に気に入っています。

今月の一冊 小沼純一著 『バッハ「ゴルトベルク変奏曲」』

『バッハ「ゴルトベルク変奏曲」世界・音楽・メディア』

小沼純一/みすず書房/ISBN(13)978-4622083160

この本は対話形式で書かれていて、とても読みやすいです。がその内容はバッハの「ゴルトベルク変奏曲」という200年以上前の曲を通して、歴史的な背景や楽曲の構造、後世に与えた影響等、音楽と社会の関係を分野を越えて重層的かつ横断的に考察している良著です。

曲を弾けるようになることはもちろん純粋に楽しいですが、その音楽の周辺にある事柄に触れ、知り学ぶことで、一層深くその曲を理解できるようになるのも実に楽しいことです。重層的かつ横断的に音楽と接することは私にとっては一つの理想でもあります。

今月の一冊  斎藤孝著 『自然体のつくり方』

『自然体のつくり方』

斎藤孝/太郎次郎社/ISBN(13)978-4811806624

「自然体」、漠然としたイメージは思い浮かびますが、実際にはどのような状態か?分かるようよく分かりません。

この本は、身体技法として「自然体」を身につけるための具体的で分かり易い手引きと言えます。

著者は「声に出して読みたい日本語」でおなじみの斎藤孝氏、先々週の「2分間丹田呼吸法」もこの本より引用しました。ピアノを弾くにもやはり身体は大切。出来るだけ良い状態にしていきたいものです。

今月の一冊  岡田暁生著 『音楽の危機《第九》が歌えなくなった日』

『音楽の危機《第九》が歌えなくなった日』

岡田暁生/中央公論新社/ISBN(13)978-4121026064

コロナになって音楽も否応なしに、その形態を考えざるをえない事態は続いています。今もって何が正解かも分からず、まだまだ手探り状態が続いているといえます。

そんなコロナ禍中に、この本は音楽書の刊行ラッシュの口火を切ったとも言えます。内容についての是非は様々考える余地があると思います。ですが私にとっては今後の音楽を考えるのに充分な問題提起となりました。

特に第3章の「録楽」という概念にはとても興味がひかれました。

今月の一冊  市川宇一郎著 『リズムに強くなるための全ノウハウ』

『リズムに強くなるための全ノウハウ』

市川宇一郎著/ドレミ楽譜出版社/ISBN(13)978-4285150490

「私はリズム感がないので」と嘆かれる方が多いです。ですがリズム感自体は誰にも備わっています。問題はピアノなどの西洋音楽のリズムと日本人が古来より育んできたものとが大きく異なることです。

この本は、まず序章で「日本人のリズム的特徴」を理解してから、西洋的なリズム感を知り、実践的なトレーニングへと進んでいきます。

初版より四半世紀以上経ち、出版社の変更もありますが版を重ねてきた隠れたベストセラーです。

今月の一冊  川瀬泰雄他著 『ニッポンの編曲家』

『ニッポンの編曲家』

川瀬泰雄他著/DU BOOKS/ISBN(13)978-4907583798

歌謡曲において、作曲家・作詞家が注目されることは、ままあります。ですが、その周囲の編曲家やスタジオミュージシャンまでは、なかなかスポットライトは当たりません。この本では70&80年代に歌謡曲を支えた、そうした裏方スタッフの皆さんのインタビューを中心にまとめています。1曲がどのようなチームワークによって完成へ向かっていくのかが分かる良著です。

今月の一冊(本)  黒澤明監督 映画『生きる』

映画『生きる』

黒澤明監督/東宝/EAN:4988104095794

今回紹介するのは、1953年公開、黒澤明監督の映画「生きる」です。作品中で主人公の志村喬が「ゴンドラの唄」を2度歌います。物語の中盤にジャズバーのシーンで市村俊幸のピアノ伴奏で歌うシーンがとても印象深く、私の心の中に残っています。この曲の作曲家、中山晋平は、公開年の12月2日にこの映画を鑑賞しています。「ひどく感動したようだ」という周囲の証言も残っています。この映画を見届けた晋平は同年12月30日にこの世を去っています。

今月の一冊 團伊玖磨著『私の日本音楽史』

『私の日本音楽史』

團伊玖磨著/NHK出版/ISBN(13)978-4140841013

この本は、1997年にNHKで放送された、作曲家・團伊玖磨氏によるテレビ講座のテキストに加筆したものになります。團氏は、「ぞうさん」「ラジオ体操第二」の作曲家としても私たちにもおなじみです。また、雑誌「アサヒグラフ」でエッセイ「パイプのけむり」を36年間に渡り長期連載するなど、随筆家としても筆が立ちました。なおこの本は絶版本ですが、中古本であれば比較的入手しやすいと思います。(2022年5月現在)

今月の一冊 古関裕而著『鐘よ鳴り響け』

『鐘よ鳴り響け』

古関裕而著/集英社文庫/ISBN(13)978-4087440591

今回は、NHKの朝の連続テレビ小説「エール」の主人公のモデルになった、作曲家・古関裕而の自伝を。私の勝手なイメージでは古関氏は「応援歌」の達人。プロ野球、巨人の「闘魂こめて」、阪神の「六甲おろし」も古関氏が作曲しています。(ちなみに中日の初代応援歌も。)たとえライバル同士であっても、党派を越えて作曲依頼に応じる古関氏の応援精神の由来に興味を持ち、この自伝を読みました。後半の劇作家・菊田一夫氏との対談で、古関夫妻の仲睦まじさを、菊田氏に暴露されているのが、大変ほほえましかったです。

今月の一冊 渡辺裕著『聴衆の誕生』

『聴衆の誕生』

渡辺裕著/中公文庫/ISBN(13)978-4122056077

今回は、四半世紀ぶりに私が読み直したばかりの本を紹介いたします。このコロナ禍で音楽の聴取には大きな変化が生じています。これまでは当たり前のようにあったコンサート文化は今、大きな打撃を受けています。この本はバブル全盛期に書かれたポストモダンの音楽文化論で、近代でのコンサート文化の成立について丁寧に記されています。コロナ後の音楽文化を考える上で、手がかりになる何かがこの本には潜んでいる気もします。

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