- 春日部で40年。あなたの街の音楽教室。ミュージックファームぷりま

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ぷりま音楽歳時記 2-9.変イ長調

変イ長調の調号は♭が4つ。作曲家スクリャービンはこの調を「ライラック色」と色聴。作曲家リムスキー=コルサコフも「灰色がかった紫色」と似た色で色聴しています。

<変イ長調の曲>

ワルツ第9番 op.69-1ショパン

ショパンのワルツは遺作を含めて、19作品と知られています。そのうちの5曲がこの変イ長調。特に第9番は「別れのワルツ」との通称で人気があります。今回紹介するのは、1950年録音のディヌ・リパッティによる演奏です。

今月の一冊 近藤憲一著『1日1曲365日のクラシック』

1日1曲365日のクラシック

近藤憲一著/ヤマハミュージックメディア/ISBN(13)978-4636972283

以前のエントリーの通り、動画サイトで音楽を視聴するのがすっかり当たり前となりました。ただ異様なほど大量の曲があり、どこを糸口に音楽を聴きはじめたらいいのか迷うことも。そんな時、適切なガイドが欲しくなってしまいます。

クラシック音楽の入門ガイドにぴったりなのがこの本。日めくりカレンダーのように1日1曲を紹介。ふと思いたった日のページをめくり、動画サイトで検索すると、きっと新たな音楽に出会えるのではないでしょうか?

ベランダ菜園と「おすそわけ」と音楽

教室でベランダ菜園を始めてもう6年以上。元々は猛暑に備えてグリーンカーテンを作るためにゴーヤ栽培をはじめたのをきっかけで、今や通年で何かしら栽培するまでになりました。

菜園を始めて実感するのは、こちらの思う通りに野菜が育たない事です。スーパーの商品のようにはそろわず、曲がったり、大きさもまばらな野菜が育ちます。しかも旬になると収穫が集中。生鮮食品なので保存にも限界があり、自分だけではとても食べきれません。見た目は悪くとも大切に育てた野菜、捨てるに忍びなく、周囲へ「おすそわけ」したくなるのです。

この「おすそわけ」ってとても面白くて人と人との関係の潤滑油にもなったりします。もしこれが保存や貯蔵が可能であればそんな気も起きないかもしれません。期限のある生鮮野菜だからこそ、「おすそわけ」のこころが生じるのだと思います。

音楽もこうした生鮮野菜に相通じるところがあると思います。今や音楽も録音で保存可能ですが、本質的には一度音を鳴らせば消えてしまう、やはり限りあるものです。

自身だけで音楽を奏で楽しむのも面白い。けれども、それをさらに皆で共有し「おすそわけ」するのも楽しい。それが発表会など、人前で演奏する面白さだと思います。

もちろん当教室の発表会はプロの品評会ではありません。たとえ傷があっても、粒がそろわなくても、一人一人が大切に育んできた音楽を共有して楽しんでいく機会にしたいと思います。

今育てている野菜の一部、セロリブロッコリーチンゲンサイ

  

黒鍵ペンタトニック 「男はつらいよ<映画主題歌>」(渥美清)

男はつらいよ<映画主題歌>」渥美清山本直純作曲)

昭和のノベルティソングを特集してきましたが、今回で一段落です。特集のトリを飾るのに相応しいのが映画「男はつらいよ」の主題歌を除いて他はありません。

「男はつらいよ」は1969年に制作がスタート。1995年までに48作、主演の渥美清がなくなって以降さらに3作も制作された、他に例を見ない多作の映画シリーズです。お盆と年末年始、年2回公開されることが多く、まさに昭和の日本の風物詩ともいえる映画でした。

この主題歌、実は映画シリーズに先立って制作されたテレビドラマ(1968年)から使用されています。作詞は演歌界の大御所、星野哲郎氏です。星野氏は「急いで書いてくれ、といわれドラマの粗筋を基に、4,5日で書いた。当時はファックスもないから速達で送った。」と練る間もない仕事だったと振りかえっています。作曲した山本直純氏について、星野氏は「やさしいメロディーで、クラシックの人がうまく演歌を書いたって思いました。」と称賛しています。

まさにこの曲はソフトな演歌。四七抜き音階のペンタトニック(5音階)に「ピョンコ節」の付点のリズムは、明治・大正の唱歌・童謡にも相通じるように思います。

ぷりま音楽歳時記 2-8. 変二長調

変二長調

変二長調の調号は♭が5つ。この調もすべての黒鍵を用います。作曲家スクリャービンはこの調を「すみれ色」と色調しています。この調も黒鍵5つ全て使えるのでピアノ曲に人気です。

<変二長調の曲>

op.32 D550(シューベルト

シューベルトの人気の歌曲。さらさらとした清流のようなピアノ伴奏は確かに「すみれ色」といった寒色を想起させるかもしれません。今回紹介するのは、早世のテノール歌手、フリッツ・ヴンダーリヒの1966年発表の録音です。

今月の一冊 松村正人著『前衛音楽入門』

『前衛音楽入門』

松村正人著/Pヴァイン/ISBN(13)978-4909483133

前回のエントリーでも触れた前衛的な音楽は、どうしても難しさや分かりにくさが先立ち、メディア等でも滅多に取り扱われません。たとえ興味を持ったとしても、その入り口にすらなかなか辿りつきにくいのが現状なのかもしれません。

この本はそんな取り扱いが面倒そうな前衛音楽の歴史を、出来る限り概観しようと試みた意欲作だと思います。クラシックの文脈からのみならず、ジャズの文脈からも歴史を紡ぎだしているのが特によいと思います。

予定調和じゃない想定外の感動~クリスチャン・マークレー展にて

コロナが小康状態になってからすっかり楽しくなったのが、展覧会での鑑賞です。(声を出すわけでもないので、飛沫感染等の恐れも少なく安心だったせいもあります。)

特にこの2年はよく展覧会に通いました。その中でも特に気に入ったのが、「クリスチャン・マークレー/トランスレーティング[翻訳する]」。会期中に2度も東京都現代美術館に足を運びました。(もう2年も経つのですね。)

展示内容を簡潔に言葉にするのは難しいのですが、音楽的な美術、または美術的な音楽ともいえる前衛的なものでした。聴覚の芸術「音楽」と視覚の芸術「美術」の融合はそう容易くないのに、いとも簡単にやってのけているようで大きな衝撃を受けました。加えて前衛的な内容なのに難しくなく、日本のマンガ文化にも影響を受けたクリスチャンの作品は驚くほどポップに仕上がっていて、その親しみやすさにも感心してしまいました。

一般的に抽象的で分かりにくいといわれるモダンアート、かえってその分かりにくさがにはクセになっています。分からず理解できなくてもまずは作品に触れてみる。すると何が何だか原因不明だけれど作品に魅きこまれる時があり、えも言えない幸福感に包まれます。

この幸福感は起承転結や喜怒哀楽がはっきりしたものからは味わうことのできない想定外の感動で、モダンアートに触れるとその感動にめぐり合うことがままあります。そしてそれは予定調和にはいかない人の営みそのものにも感じられます。

黒鍵ペンタトニック 「初めての街で<菊正宗CM>」

「初めての街で<菊正宗CM>」(中村八大 作曲 西田佐知子 歌)

日曜日の夕方のテレビといえば、5時半から日本テレビで「笑点」、間をおいて6時半からフジテレビで「サザエさん」と続くのが昭和末の定番。(平成以降は、その間の6時から「ちびまる子ちゃん」が加わり、現在の令和に至ります。)

昭和末に子ども時代を過ごした私の記憶が確かなら、「笑点」と「サザエさん」の間に印象的なCMがありました。それが日本酒「菊正宗」のCMです。「笑点」「菊正宗」「サザエさん」と連なると、楽しかった休日が終わってしまう悲しみがドっと押し寄せたものでした。

さてこの「菊正宗」のCM曲は「初めての街で」というタイトルです。1975年からCMで使われ、1979年にはレコードも発売。歌うのは「アカシアの雨が止むとき」でおなじみの西田佐知子。作詞は永六輔、作曲は前回に続き中村八大、「六八コンビ」による曲なのです。ちなみにこの曲も全編、5音階(四七抜き長音階)によるメロディです。

「サザエさん」の主題歌を作曲したのは、この「黒鍵ペンタトニック」の常連の筒美京平(「サザエさん」のメロディは残念ながら5音階ではありませんが…)。「笑点」「菊正宗」は共に中村八大が作曲。日曜日の夕方のテレビは昭和のヒットメーカーの曲で彩られているといえるでしょう。

CMバージョン(宣伝用非売品レコード!)

懐かしのCMです

ぷりま音楽歳時記 2-7. 変ト長調

変ト長調

変ト長調の調号は♭が6つ。作曲家スクリャービンはこの調を「鮮やかな青」と色聴(正確には異名同音調の嬰へ長調について)。この調は黒鍵を全て使えるのでピアノ曲に多いのが特徴です。

<変ト長調の曲>

前奏曲集第1巻第8曲「亜麻色の髪の乙女」(ドビュッシー

亜麻色とは薄い黄褐色ですが、亜麻の花はなんと「鮮やかな青」です。(ちょっとこじつけ気味ですが…)今回紹介するのはイタリアの名ピアニスト、ミケランジェリの1978年の演奏です。

今月の一冊(本) 映画『ライフ・イズ・ビューティフル』

映画『ライフ・イズ・ビューティフル』

ロベルト・ベニーニ監督/角川書店/ASIN ‏ : ‎ B002TUEW5I

コロナがひと落ち着きしたら、今度は戦争。ニュース映像ばかり見ていると気が滅入ってしまうので、最近は読書より視覚インパクトのある映画鑑賞ばかりして気を紛らわしています。

今回も先月に引き続き紹介するのは映画。「ライフ・イズ・ビューティフル」、悲惨なホロコースト下での物語です。どんなに厳しい極限状態に追い込まれても、やはり人間にはエンターテイメントが欠かせないのだと、この映画を観ると思い知らされます。

 

忘れる為に覚えなさい?!~百閒の「忘却論」

よく生徒さんたちから「一生懸命練習してせっかく弾けるようになった曲が、次の曲を取り組みだすとすっかり忘れてしまい情けなくなる」との嘆きの声を聞きます。ずっと弾き続けていれば、確かに覚えていられるが、それでは次の新しい曲には進めない。新曲に進めば、やはり前の曲は疎かになる。でも完全に忘れることはなく、リハビリ練習さえすれば、前回より時間をかけずに弾けるように戻るのです。ただこの説明だけではどこか不足があるようで、私自身もどこか腑に落ちませんでした。

以前、ラジオ番組か何かで内田百閒(小説家・随筆家)の「忘却論」が話題に。早速読んでみました。ドイツ語教師も勤めた百閒は『自らの経験から詰め込み主義を奉じ、学生にぎゅぎゅう容赦なく詰め込む』教育方針。私はちなみに詰め込み主義は大の苦手ですが、なぜ覚えさせるか、以下の百閒の説明に妙に納得してしまいました。

『覚えていられなかったら忘れなさい。試験の答案を書くまで覚えていればいいので、書いてしまったら忘れてもいい。しかし覚えていない事を忘れるわけには行かない。知らない事が忘れられるか。忘れる前には先ず覚えなければならない。だから忘れる為に覚えなさい。忘れた後に大切な判断が生じる。語学だけの話ではない。もとから丸で知らなかったのと、知っていたけれども忘れた場合と、その大変な違いがいろいろ忘れて行く内にわかって来るだろう。』(「間抜けの実在に関する文献」<ちくま文庫>)

これを読んだらすっかり忘れることの不安がなくなってしまいました。

黒鍵ペンタトニック 「笑点のテーマ」(中村八大)

笑点のテーマ」中村八大

日本を代表するバラエティ番組といえば「笑点」。もともとは放送開始の1966年にヒットしたドラマ「氷点」をもじって命名。「ネタ」のつもりがすっかり「ベタ」となり、半世紀以上も続く超長寿番組になりました。

これまで出演する落語家は度々メンバーチェンジしてきましたが、不変なのはこのテーマ曲。放送開始当初こそ立川談志が歌う「笑点音頭」でしたが、談志降板後の1969年から、上掲「笑点のテーマ」が一貫して使われています。最初は歌詞付きの歌だったのですが、評判が芳しくなく、インストルメンタルになり定番化し現在に至ります。(以下の動画の通り時代に応じて度々アレンジは変わります。)

なお作曲は「上を向いて歩こう」でもおなじみの中村八大。「上を向いて歩こう」と同様、この曲もペンタトニック(5音階)で作られています。ジャズピアニストでもあり、お洒落なイメージが強い八大氏の曲ですが、民謡や演歌でもよく用いる四七抜き長音階(田舎節)も巧みに用います。

日曜日の夕方、翌日の通勤通学を憂い、気分が落ちることを「サザエさん症候群」とよく言いますが、私はどちらかと言えば「笑点症候群」。こんな陽気な曲なのに、この曲を聴くと何とも言えず切ない気分になってしまいます。

ぷりま音楽歳時記 2-6. ロ長調

ロ長調

ロ長調の調号は#は5つ。マッテゾン曰く、「矛盾していて、硬く、不快で、絶望的」な調。確かに管弦楽器にとっては演奏しにくい調ですが、ピアノでは黒鍵を全て使えるので、意外に人気のある調です。

<ロ長調の曲>

ノクターン 第17番 Op.62-1ショパン

ショパンのノクターン全21曲中3曲もがロ長調の曲なのは興味深いところ。絶望の中で「夜想曲」という希望をショパンは見出したのかもしれません。今回は1966年録音のルービンシュタインの演奏を紹介いたします。

今月の一冊(本) 映画『アマデウス~ディレクターズカット版』

映画『アマデウス~ディレクターズカット版』

ミロス・フォアマン監督/ワーナーホームビデオ/ASIN ‏ : ‎ B003GQSYIA

久しぶりに今月の1冊(本)ではなく1枚(映画)です。

かつては長尺の映画はあまり得意ではありませんでした。ですが、コロナの外出制限時、時間のゆとりがあったおかげですっかり楽しく観れるようになってしまいました。そこで久しぶりに観返し、感心したのが映画「アマデウス」。ディレクターズカット版だと丸々3時間かかるのに、観始めたらあっという間。息つく間もない展開に食い入るように観てしまいました。

当時の楽器(鍵盤の白黒が現在とは逆)が登場する等、細部まで時代考証されているのもとてもいいですね。

ピアノを弾く時は普段使わない筋力を使います

私と腰痛との付き合いはもう30年。少しでも症状を軽くと思い、近年始めたのがウォーキング。ようやく生活習慣化しました。それでも季節の変わり目などで痛みが出ることはあったので、それほど効果がないものかと半ばあきらめていました。

ところが歩き方を見直したら、効果てきめん!今のところ痛みが出ずに済んでいます。これまでは無意識にですが足を引きずって歩いていたようです。それを行進するつもりで太ももを持ち上げて歩いてみました。でも悲しいかな、鏡に映っている己の姿、思ったほど上がっていません…。「もも上げ」歩きをした翌日はひどい筋肉痛になりました。ですがそれがインナーマッスルの腸腰筋に効果があったのか、かなり腰回りが楽になりました。

今も歩き方はいろいろ工夫していて以下の動画を参考にしたり、いろいろ試行錯誤は続いています。

「歩く」という日常動作ですら意識をして初めて動かす筋肉がある有様。ましてやピアノを弾くといった非日常的な動作である楽器演奏では、さぞや使ったことのない筋肉や未知なる身体の使い方があるように思います。(以前紹介したこちらの本もおすすめです→リンク

ですから、上手く弾けないことをそれほど嘆かなくてもいいと思うのです。むしろピアノを弾くという特別な動作によって、自らの秘められた身体の可能性を開拓し、それを楽しみたいところ。習い始めはやっとのことで広げていたオクターヴ幅も次第に筋肉がつき、いつしか楽に届くようになるのも「ピアノあるある」です。ですから時間をかけ、焦らず、じっくりと「ピアノ筋」をつけたいきたいものです。

 

 

黒鍵ペンタトニック 「いい湯だな」(ザ・ドリフターズ)

「いい湯だな(ビバノン・ロック)」ザ・ドリフターズいずみたく作曲)

前回がクレージーキャッツとくれば、今回は、ザ・ドリフターズにいくしかありません。

ドリフの曲で、いの一番に私の頭に思い浮かんだのが、やはりこの「いい湯だな」です。「8時だョ!全員集合」や「ドリフ大爆笑」の番組エンディングでもおなじみの曲です。お風呂に入るとつい「ババンババンバンバン」と思わず口をついて出てしまいます。

この曲は元々、日本全国のご当地ソングを作るという企画、「にほんのうた」シリーズ(作詞・永六輔、作曲・いずみたく、歌・デュークエイセス)の中の1曲で群馬県のご当地ソングとして1963年に発表されました。このシリーズは他にも「筑波山麓合唱団(茨城)」や「女ひとり(京都)」がよく知られています。

この企画自体が昭和初期の「新民謡運動」(作曲家・中山晋平、詩人・西條八十らが中心人物)の影響を受けているせいもあるのか、この「いい湯だな」も田舎節(四七抜き長音階)の5音階で作られています。

なおザ・ドリフターズも元々はミュージシャン。1966年のビートルズの来日公演では、ブルー・コメッツやブルージーンズ、内田裕也、尾藤イサオらと前座を務めます。そこで注目を集め、翌1967年6月に「ズッコケちゃん/いい湯だな(ビバノン・ロック)」でレコード・デビューするのです。

ぷりま音楽歳時記 2-5. ホ長調

ホ長調

ホ長調の調号は#が4つ。作曲家リムスキー=コルサコフはこの調を「煌びやかなエメラルド色」と色聴しています。なるほど自然光のような明るさの調と感じても面白いかもしれません。

<ホ長調の曲>

ペールギュント第1組曲第1曲「朝」グリーグ

のどかな朝の情景を描写したかのようなこの曲。エメラルド色のホ長調と朝の光はとてもフィットするように思います。今回は2015年、ズービン・メータ指揮、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏を紹介いたします。

 

 

今月の一冊  團伊玖磨著『パイプのけむり選集 食』

『パイプのけむり選集 食』

團伊玖磨著/小学館文庫/ISBN(13)978-4094083903

以前も紹介しました日本を代表する作曲家、團伊玖磨氏。その曲もさることながら、特に私が好きなのは氏のエッセイ。今回紹介するのは、雑誌「アサヒグラフ」の名物コラム「パイプのけむり」の選集。これはテーマが「食」に絞られています。

音楽家ならではのリズム感溢れる文章で読んでいてウキウキしてきます。こんなセンスのある文章を私も書いてみたいところですが、とても及びそうにありません。特に「金平糖」の話が私のお気に入りです。

山と同じくピアノも頂き高く懐深い

私は年に数回、山歩きをします。そのほとんどは夏の避暑が目的です。普段のウォーキングの延長で、ややアップダウンある道を少し長い距離歩く程度です。そして歩き終えた後、その疲れをとるために温泉に浸かるのが何よりの楽しみなのです。同じ山遊びでも、寒い雪山でのスキーなどのウィンタースポーツや山小屋に泊まるような本格的な山登りにはあまり興味はありません。私はともあれ、山の楽しみ方は本当に多種多様で奥が深い。湖畔を眺めるだけでも楽しいし、その一方、命懸けで最高頂を目指す挑戦まであります。まさに頂き高く懐深い。

ピアノも山のような多様性があると思います。ジャンルにしてもクラシック、ジャズ、ポップス等種々多彩。同じクラシックでもバロック、古典派、ロマン派、近現代と時代毎にスタイルが異なります。もちろん作曲家毎にも作風は異なります。膨大なレパートリーの中から自分に合った音楽を探し出すのも本当に楽しいものです。そしてコンクール等、極限状態の中、技術的な頂きを目指すこともできます。発表会などで多少の緊張感を味わいながら演奏を楽しむこともできます。もちろん家で一人で心安らかに弾くのも楽しいです。

私はそんな頂き高く裾野が広く懐深いピアノのガイド役です。皆さんがピアノを楽しめるように、適切なコースを案内したいものです。もちろん私が知りうるピアノの魅力はたかが知れています。でも少しでも多くの魅力に私自身も気づいていけるように日々学んでいきたいと思います。

(数年前に撮影した奥日光・刈込湖の写真。涼しかった~♪)

黒鍵ペンタトニック 「ホンダラ行進曲」(クレージーキャッツ)

ホンダラ行進曲クレージーキャッツ/萩原哲晶 作曲

日本のノベルティソングで欠かせないのは、何といってもクレージーキャッツでしょう。「昭和」の高度経済成長真っ盛りの折、国中を笑いに包みこんだコントグループです。しかもただの「お笑い」グループではなく、メンバー全員、進駐軍のキャンプ回りで、その名を轟かせた腕利きのミュージシャンでもあります。

そもそも現在名だたる芸能事務所、渡辺プロ・ホリプロ・サンミュージック・田辺エージェンシーは、みな進駐軍のキャンプ回りのミュージシャンをを経て創業しました。クレージーキャッツは渡辺プロの屋台骨を支え、映画・テレビで大活躍するのです。

クレージーキャッツの陽気で「C調」な曲は、実にペンタトニック(特に四七抜き長音階)の曲が多く、どの曲を選ぶか悩むほどです。ですが、今回は「ホンダラ行進曲」を取り上げたいと思います。

この曲はイントロで「軍艦行進曲」と「丘を越えて」を掛け合わせたパロディ行進曲。どこかへ行進したい抗しがたい気持ち、平和な現世でどこへ行進したらよいかも分からない。けれど「ホンダラッタホイ」と進もう(ラジオ「大瀧詠一の日本ポップス伝」より)。

前回のオリンピックの翌年、1965年に発表のこの曲。どこか今の世相にも通じるところもあるかもしれません。

 

ぷりま音楽歳時記 2-4. イ長調

<イ長調>

イ長調の調号は♯3つ。マッテゾン曰く、「輝かしくあるが、また同時に痛ましく心を打つ」とのこと。これはとても私にはしっくりきます。弦楽器が得意とする調です。

<イ長調の曲>

美しく青きドナウ」(ヨハン・シュトラウス2世

「輝かしくあるが、また同時に痛ましく心を打つ」に相応しいのがこの曲。この曲で真っ先に思いつくのが映画「2001年宇宙の旅」のシャトルと宇宙ステーションのドッキングシーンです。なお演奏はカラヤン指揮、ベルリン・フィルハーモニーによる演奏が用いられています。

今月の一冊  ジム・フジーリ著『ペット・サウンズ』

『ペット・サウンズ』

ジム・フジーリ著/村上春樹訳/新潮文庫/ISBN(13)978-4102179611

ザ・ビーチ・ボーイズの傑作アルバム「ペット・サウンズ」。この本はその制作過程やバンドの中心であるブライアン・ウィルソンの波乱万丈の人生に迫ったノンフィクションです。

暴露的であったり批判的な内容が多いこの手のジャンルの中で、この著者のこのアルバムやブライアンに対する偏愛ともいえる深い愛情を感じられ、読後、心地よい幸福感に包まれました。

文中に出てくる曲を動画サイトで探して、聴きながら読むのがおすすめです。訳者はかの村上春樹です。

日常に欠くことのできない音楽「At My Piano」

最近ブライアン・ウィルソンのアルバム「At My Piano」をよく聴きます。ブライアン・ウィルソンはお馴染みの「ザ・ビーチ・ボーイズ」のリーダーでシンガーソングライターです。ですがこのアルバムでは、なぜか歌なしのピアノだけのインストゥメンタルの曲集になります。

私が衝撃を受けたのはその響きです。今や解像度の高いハイレゾな音が巷に溢れる中、昔懐かしのモノラルで録音されています。これは4K・8Kと画質がよくなったカラー液晶のテレビで、白黒の番組放送されることと同様と言えるでしょう。普通の古いモノラル録音でもピアノの場合、不思議と自然な響き(左から低音、右から高音)を感じるのですが、このアルバムでは最後の1曲を除き、すべての音域が中央に集まるように意図されているようです。中央に音が集中し固まっても、うるさくなく、それぞれの音域で音色の濃淡が異なるので、まるで水墨画のような深遠な音世界を感じたのです。これまで味わったことのない「古くて新しい」響きに、驚きと共に溢れる歓びを感じました。

私にとって音楽を聴くことは、日常生活において欠くことができません。そしてもっと深く音楽を味わいたいものです。私が演奏技術を学び続けるのも、クリエイターの創意を少しでも肌身で感じたいからです。聴く分には簡単に思える技術でも、実際に演奏してみると意外に難しく苦戦することがあります。こうした実体験を重ねる毎に、演奏家をはじめクリエイターの皆さんに対する経緯が深まるのです。これからも今まで以上に大切に音楽を聴いていきたいと思います。

黒鍵ペンタトニック 「ワンサカ娘」(レナウンCM)

ワンサカ娘(レナウンCM/小林亜星

昨今、世代を超えて全国的にヒットする曲が出にくくなりました。とはいえ、近々でも「うっせぇわ」がヒット。詞の内容がこの世相を皮肉る面もあり、「滑稽な持ち味」の音楽、いわゆるノベルティソング(コミックソン)の一種と言えます。このタイプの曲は数年おきに流行し、まさに「歌は世につれ、世は歌につれ」といったところでしょう。

ノベルティソングにはペンタトニック(5音階)の四七抜き長音階がよく用いられます。この音階は元々「田舎節」とも呼ばれ、音階そのものにどこかコミカルな雰囲気があるのかもしれません。今回よりしばらく映画・テレビ・CM等で使用される曲で、5音階を用いて作られらたのベルディタイプのものを、懐かしい曲を中心に紹介していきたいと思います。

まずスタートは、懐かしのCM曲、レナウンの「ワンサカ娘」です。1961年に発表され、弘田三枝子やシルヴィ・ヴァルタン等様々な歌手に歌われ、1990年代まで放映され続けたCM界きっての名曲です。時代の変化に応じたアレンジに耐えうる骨太さが5音階のメロディにはあるのでしょう。なおこの曲の作詞・作曲は小林亜星氏。この曲が作曲家としての出世作となりました。

 

弘田三枝子のバージョン

 

シルヴィ・ヴァルタンのバージョン

ぷりま音楽歳時記 2-3. ニ長調

<ニ長調>

ニ長調の調号は、#が2つ。マッテゾン曰く、「むしろ鋭く、頑固」。ニ短調同様、「Deus」(神)の頭文字を持つ調なので祝祭的な曲に用いられることが多いのが特徴です。

<ニ長調の曲>

ジムノペディ第1番(サティ

ピアノ曲にはあまり人気のないニ長調。あえて挙げればこの曲です。古代ギリシアの神々を讃える祭典「ギュムノペディア」に由来するこの曲、まさに祝祭的と言えます。今回は、1956年に録音のチッコリーニによる演奏を紹介いたします。

今月の一冊  細川周平著『近代日本の音楽百年 第1巻 洋楽の衝撃』

『近代日本の音楽百年 第1巻 洋楽の衝撃』

細川周平/岩波書店/ISBN(13)978-4000272261 

コロナ禍で出版された音楽書で、が個人的に最も衝撃を受けたのがこの本。江戸末期から第二次世界大戦までの日本の大衆音楽史をまとめた全4巻の大著です。

ジャンル・時代等々、各論的に大衆音楽を扱う本は多いですが、通史としてまとめたのがこの本の驚異的なところです。

難点は専門書なので高価なこと、気軽に手を出せません。ですが心配ご無用。春日部市立図書館に無事所蔵されましたので、ご興味のある方はぜひ借りてお読みください。

西洋の楽器ピアノにフィットしたい東洋人の私

以前、私はひどい蕁麻疹に悩まされたことがありました。病院の皮膚科で抗ヒスタミン剤を注射しても、薬を処方してもらっても効かず。困って東洋医学的な治療をする病院に変えて漢方薬を処方してもらったら即改善。やはり西洋式の治療だけでは東洋人の私には不十分なこともあるのだと、この時思い知りました。

ピアノに対してもこれに似たような感覚に陥る時があります。東洋人の私には、この西洋の楽器はどこかフィットしきらないと感じてしまうのです。その違和感はごくわずかなのですが、一体それが何なのか?よく分かりません。

その点、歌謡曲をはじめとした邦楽ポップスでは「言葉」という明確な文化的な違いがいつも問題となりました。洋楽曲を原語そのまま直輸入するのではやはり不十分で、メロディをそのままに歌詞だけわたしたちに通じる日本語に翻訳されることが一般的です。ただし原語から直訳ではメロディに日本語がきれいに乗らないことも多いのです。だから意訳をする等、あの手この手で創意工夫されました。そして洋楽のメロディと日本語の歌詞がフィット。明治以降のこうした試行錯誤の延長線上に現在のJ-popは連なるのです。

邦楽ポップスでの先人の創意工夫を知ることは私自身大変勉強になります。ピアノは器楽なので、直接的には言葉の問題はありません。ですが、やはり直訳的に理解しようとするには限界があると感じています。あの手この手を尽くし、意訳的な創意工夫で自分の身体とピアノが違和感なくフィットしたいものです。そしていつか深く掘り下げてピアノを弾いてみたいものです。

坤輿万国全図(17世紀初めイタリア人の宣教師マテオ・リッチが作成した漢訳版世界地図)

 

黒鍵ペンタトニック 「YOUNG MAN」(西城秀樹)

「YOUNG MAN(Y.M.C.A)」(西城秀樹/J.Morali)

2018年年末、レコード大賞で、優秀作品賞を授与された「U.S.A」。その受賞パフォーマンスで、DA PUMPが曲中に「YOUNG MAN」の振り付けをして話題になりました。

なぜ彼らが「Y.M.C.A」と踊ったのか?ここからの勝手な推測になります。この2曲とも外国曲のカヴァーでダンスナンバー。しかもメロディの主要部が共にヒット曲の鉄則ともいえるペンタトニック(5音階)。先達の「YOUNG MAN」に倣ってヒットした「U.S.A」。DA PUMPがその年に亡くなった西城秀樹に弔意を示すのは尤もです。しかも「YOUNG MAN」は「ザ・ベストテン」で歴代最高得点を記録するほど、1979年を代表する曲だったのに、外国曲であったせいで、レコード大賞にはノミネートすらされなかったのです。当時の無念を晴らす意味もきっとあったのでしょう。

なおこの「YOUNG MAN」は当時、西城秀樹のバックバンドだったメンバーがハワイに行った時に、現地で流行しているのを覚えてきて、そのままレコーディングしたとのこと。そのバックバンドこそ後の「SHŌGUN」です。この曲のヒットの直後、自らも表舞台に立つことになります。松田優作主演のドラマ「探偵物語」の主題歌、「BAD CITY」等でヒットしました。

ぷりま音楽歳時記 2-2.ト長調

<ト長調>

ト長調は調号は#1つ。マッテゾン曰く、「ほのめかすようでいて、雄弁」。なるほど冗舌とかおしゃべりというイメージということでしょうか。

<ト長調の曲>

アイネ・クライネ・ナハト・ムジークK.525(モーツァルト)

冗舌な曲といえば、モーツァルトの代表曲であるこの曲を取り上げないわけにはいきません。今回紹介するのは2005年、ドイツ・ザクセン州、ラメナウ城でのゲヴァントハウス弦楽四重奏団の演奏です。

 

今月の一冊  養老孟司・久石譲著『耳で考える』

『耳で考える』

養老孟司・久石譲/角川文庫/ISBN(13)978-4047102057

音楽専門書も好きですが、音楽家と異業種のプロによる対談本も好んでよく読みます。

今回紹介するのは、ジブリアニメをはじめ映画音楽でもすっかりおなじみの久石譲氏と「バカの壁」のベストセラーでも有名な解剖学者、養老孟司氏との対談本です。

対談(おしゃべり)から縦横無尽に話題が広がり、その内容に興味は尽きません。

養老先生が、仕事中はずっと音楽を流しっぱなしの「ながら族」であることが分かり、大変共感してしまいました。

 

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2025年3月30日
黒鍵ペンタトニック「ファイアークラッカー」(Y.M.O.)
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「ファイアークラッカー」(Y.M.O.) さて今回からいよいよY.M.O.(イエロー・マジック・オーケストラ)を取り上げたいと思います。次... 続きを読む

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2025年4月13日
今月の一冊『見えないものに、耳をすます』
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『見えないものに、耳をすます―音楽と医療の対話-』 またしても対談本の紹介です。2017年にEテレ「SWITCHインタビュー達人達」の放送... 続きを読む
2025年4月6日
12の鍵盤全て触りましょう~ナチュラルポジション全調練習
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西洋の七音階、長調と短調は、12の鍵盤どの音からでも構成できます。その長短調全24調を身覚えてしまえればこれ程心強いことはありません。教則本「ハ... 続きを読む
2025年3月30日
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