今月の一冊 川瀬泰雄他著 『ニッポンの編曲家』
川瀬泰雄他著/DU BOOKS/ISBN(13)978-4907583798
歌謡曲において、作曲家・作詞家が注目されることは、ままあります。ですが、その周囲の編曲家やスタジオミュージシャンまでは、なかなかスポットライトは当たりません。この本では70&80年代に歌謡曲を支えた、そうした裏方スタッフの皆さんのインタビューを中心にまとめています。1曲がどのようなチームワークによって完成へ向かっていくのかが分かる良著です。
川瀬泰雄他著/DU BOOKS/ISBN(13)978-4907583798
歌謡曲において、作曲家・作詞家が注目されることは、ままあります。ですが、その周囲の編曲家やスタジオミュージシャンまでは、なかなかスポットライトは当たりません。この本では70&80年代に歌謡曲を支えた、そうした裏方スタッフの皆さんのインタビューを中心にまとめています。1曲がどのようなチームワークによって完成へ向かっていくのかが分かる良著です。
團伊玖磨著/NHK出版/ISBN(13)978-4140841013
この本は、1997年にNHKで放送された、作曲家・團伊玖磨氏によるテレビ講座のテキストに加筆したものになります。團氏は、「ぞうさん」「ラジオ体操第二」の作曲家としても私たちにもおなじみです。また、雑誌「アサヒグラフ」でエッセイ「パイプのけむり」を36年間に渡り長期連載するなど、随筆家としても筆が立ちました。なおこの本は絶版本ですが、中古本であれば比較的入手しやすいと思います。(2022年5月現在)
古関裕而著/集英社文庫/ISBN(13)978-4087440591
今回は、NHKの朝の連続テレビ小説「エール」の主人公のモデルになった、作曲家・古関裕而の自伝を。私の勝手なイメージでは古関氏は「応援歌」の達人。プロ野球、巨人の「闘魂こめて」、阪神の「六甲おろし」も古関氏が作曲しています。(ちなみに中日の初代応援歌も。)たとえライバル同士であっても、党派を越えて作曲依頼に応じる古関氏の応援精神の由来に興味を持ち、この自伝を読みました。後半の劇作家・菊田一夫氏との対談で、古関夫妻の仲睦まじさを、菊田氏に暴露されているのが、大変ほほえましかったです。
渡辺裕著/中公文庫/ISBN(13)978-4122056077
今回は、四半世紀ぶりに私が読み直したばかりの本を紹介いたします。このコロナ禍で音楽の聴取には大きな変化が生じています。これまでは当たり前のようにあったコンサート文化は今、大きな打撃を受けています。この本はバブル全盛期に書かれたポストモダンの音楽文化論で、近代でのコンサート文化の成立について丁寧に記されています。コロナ後の音楽文化を考える上で、手がかりになる何かがこの本には潜んでいる気もします。
皆川達夫著/講談社/ISBN(13)978-4062919371
この本はタイトル通り、ヨーロッパの中世・ルネサンスの音楽について書かれておりますが、巻末の結びの章でこちらで触れた生月島のオラショについても書かれています。初めて私がこの話を知った時、音楽と人とはそれこそ「縁は異なもの味なもの」だと深く感心したものです。著者の皆川達夫先生はこのオラショの研究における第一人者です。92歳でご逝去される直前の2020年の3月まで、NHKラジオの「音楽の泉」で昭和の終わりから令和の始めまでパーソナリティを生涯現役でつとめられました。
(バーバラ・コナブル著/誠信書房/ISBN(13)978-4414402803)
日常生活では、つい無意識に体を当たり前のように使っています。ところが楽器を演奏してみると、いかに普段の生活で使っていない体の部位があるかを思い知らされます。知っているようで意外に知らない自分の体、まさに「灯台下暗し」といったところです。この本では演奏時に、どのように体を使うかをイラスト付きで、分かりやすく説明しています。(翻訳書なので日本で少し分かりにくいところがあるのは仕方ありませんが…)
(H・グッドール著/白水社/ISBN(13) 978-4560081136)
今回紹介するのは、5つの発明(楽譜・オペラ・平均律・ピアノ・録音技術)を基点に西洋音楽の歴史を眺めるとてもユニークな視点の本。著者が5大発明の中にピアノをチョイスしてくれたのは、本当にうれしい限りです。第4章ではピアノ史を、楽器が誕生した約300年前から古典派・ロマン派・近現代・ジャズといった具合に概観できるのでお勧めです。黒鍵ペンタトニックで記した「メリーさんの羊」のエピソードもこの本で知りました。
(上月正博・酒井博美著/風間書房/ISBN(13) 978-4759922899)
第3号で「ながら聞き」をおすすめしましたが、この本はまさしく日常生活の中へ上手に音楽を取り入れ、豊かに暮らす術が紹介されています。ストレス解消・安眠・認知症予防など、東北大学大学院医学系研究科の先生方によって書かれたものです。付録には音楽CDがついていて、演奏は私の師匠である角聖子先生が担当しています。最近はCD付きの音楽書も増えてきて、読んで良し、聴いて良し、楽しみが倍増します。
この本は「ピアノはいつピアノになったか?」という全8回のレクチャーコンサートを基に、補筆され書籍化したもの。毎回講師が異なり、おおよそ時代毎に現在とは構造が異なる当時の楽器を取り上げ、300年に及ぶピアノの歴史が紐解かれていきます。特に第5講の「ショパンとオペラ」は大変興味深い観点から切り込んでいるように思います。何より嬉しいのは、CDが付録され歴史的なピアノの音を聴けることです。
(岡田暁生著/中央公論新社/ISBN(13) 978-4121018168)
西洋音楽史の入門におすすめの一冊です。特定の時代に偏り過ぎることもなく、出来るだけコンパクトに平易な言葉で書かれている良書です。私が気に入っているのは著書の歴史観。最終章で「ポピュラー音楽の多くが、19世紀のロマン派音楽をそのまま踏襲している」という指摘は、実に的確だと思っています。さて著者は2013年から放送大学のラジオ講座で音楽史の授業を担当しておりました。ラジオ講座では、授業に沿って実際の音楽が聴けたのもとても良かったです。
(吉松隆著/ヤマハミュージックメディア/ISBN(13) 978-4636909302)
当ブログのコーナー「ぷりま音楽歳時記」のアイディアの元になったのがこの本です。「調性」(西洋音楽の音階の体系)はなかなか理解しにくいところです。楽典を読んでも分かるようで分からない…。この本では様々な角度から「調性」についてアプローチしていて、説明もかゆいところに手が届くような非常に親切な本です。私が特に興味を持ったのが、第2章の「楽器からみた調性」です。楽器によって、得手不得手な調があるという視点は、まさに目から鱗でした。
(芥川也寸志著/岩波新書(E57)/ISBN(13)978-4004140573)
この本は新旧入れ替わりが激しい新書にもかかわらず、初版の1971位年から、おおよそ半世紀も現役で売れ続けているベストセラー本です。著者は作曲家で、かの文豪、芥川龍之介の実子でもあります。言葉では説明しにくい音楽理論の基礎を分かりやすく、しかも作曲家としてのオリジナリティある視点からも描かれていて、とても面白く読み進められます。私は冒頭の「静寂」が特に好きな文章で、度々読みかえしています。
「今月の一冊」は毎月発行するおたよりの1コーナーです。
日々の限りあるレッスン時間では、どうしても演奏指導に追われてしまいます。ですが日々の練習に加え、幅広く音楽に触れることはとても大切だと思っています。このコーナーでは毎月、音楽に関係するおすすめの本や映画などを紹介していきます。日々のレッスンに少しでも彩りが添えられれば幸いです。