- 春日部で40年。あなたの街の音楽教室。ミュージックファームぷりま

ピアノ・声楽・ギター・バイオリン・フルート・クラリネット

BLOG

今月の一冊  斎藤孝著 『自然体のつくり方』

『自然体のつくり方』

斎藤孝/太郎次郎社/ISBN(13)978-4811806624

「自然体」、漠然としたイメージは思い浮かびますが、実際にはどのような状態か?分かるようよく分かりません。

この本は、身体技法として「自然体」を身につけるための具体的で分かり易い手引きと言えます。

著者は「声に出して読みたい日本語」でおなじみの斎藤孝氏、先々週の「2分間丹田呼吸法」もこの本より引用しました。ピアノを弾くにもやはり身体は大切。出来るだけ良い状態にしていきたいものです。

ぷりま音楽歳時記 18.嬰ト短調

<嬰ト短調>

嬰ト短調の調号は♯が5つ。黒鍵を5つ全て使うので、ピアノ曲に多く見られます。ただし他の弦・管楽器では鳴らしにくい調となります。

<嬰ト短調の曲>

「ラ・カンパネラ」パガニーニによる大練習曲第3番

パガニーニの原曲(ヴァイオリン協奏曲第2番)のキー設定はロ短調です。ピアノ用にアレンジした時に嬰ト短調に設定したリストの審美眼こそ、「ピアノの魔術師」の呼称に相応しいと思います。今回は1982年録音のホルヘ・ボレットの演奏を紹介いたします。

マスクのおかげ 口呼吸から鼻呼吸へ

マスクがすっかり身体の一部のようになってしまいました。当初は常に息苦しく感じていましたが呼吸の方法を見直し、「口呼吸」から「鼻呼吸」へと私自身変えました。するとマスクでの息苦しさもなくなり、肩こりなどの小さな不調も解消されたように感じます。

さて鼻の中はフィルターで、ウイルスや菌を直接吸い込むのを防ぐそうです。しかも断熱効果もあり適温で身体に空気を取り込む大変な優れものだそう。https://www.taikyo.co.jp/memo/vol17/

ですから鼻呼吸はいいことずくめ。ですが私は習得するまでかなりてこずりました。特に鼻から吐くのに苦労しました。ちなみに吐く時は副交感神経が働きリラックスするそう。だから出来るだけ時間をかけて息を吐きたい。息の出口が口ならば、すぼめる等、息の量を楽に調整できますが、鼻ではそうはいきません。そこで私がまず取り組んだのが「2分間丹田呼吸法」です。やり方は3秒鼻から吸い、2秒止め、15秒かけて少しずつ口から吐きます。これを6回繰り返すとちょうど2分になります。(斉藤孝著「自然体の作り方」を参照にしました。)ポイントは吐く時に下っ腹(丹田)を触ることです。途中で吐く息が不足しても、下っ腹を軽く押すと更に吐き出せます。この丹田で息を押し出す感じが分かったので、吐き出す息を口から鼻に置き換える時も楽にできました。そして私はようやく鼻呼吸ができるようになったのです。

これはあくまでも私の個人的な経験談ですが、一応書き残しておきます。鼻呼吸もいろいろなアプローチがあると思いますが、以下の「鼻だけ腹式呼吸」も参考にされるとよいかもしれません。

なおこの鼻呼吸への見直しが、ピアノを弾く時にも大い役立ったのですが、それについてはまた来月。

 

 

 

黒鍵ペンタトニック 「青い眼の人形」

「青い眼の人形」(本居長世 作曲)

劇作家、島村抱月の書生との二足の草鞋で、東京音楽学校で学んだ中山晋平。当然その生活は楽ではなく、ピアノ科に進んだもののピアノは所持していませんでした。

その晋平に助け舟を出したのが、先輩で東京音楽学校の教員になったばかりの兄貴分、本居長世(1885~1945)でした。長世は自身が所有する古くなったピアノを安価で晋平に譲渡すると言うのです。さっそく晋平は郷里の兄に手紙で相談します。が、やはり大金であったためその時は断念せざるを得ませんでした。

本居長世は、国学者、本居宣長に連なり、祖父もまた国学者でした。国学者になってもらいたい祖父の期待に反し、長世は音楽家への道を進みます。当初はピアニストを目指しますが、脳溢血の後遺症で断念。以降作曲家として活躍します。「七つの子」「赤い靴」「十五夜お月さん」等、数多くの童謡の名曲も残します。長世の曲のメロディは半音進行を用いることで、色彩感を出すのが特徴なので、ペンタトニック(5音階)だけで書かれた曲はあまりありません。

ですが、「青い眼の人形」の主要部はペンタトニック(5音階)で作られているので、今回紹介いたします。(曲の中間部で転調し、曲調が大きく変化してしまいますので、その触りだけ。)

なお長世の東京音楽学校の主要な教え子には、中山晋平はもちろん、弘田龍太郎も含まれます。

(1921年ニッポノホン 歌うのは長世の長女みどり、ピアノ伴奏は作曲者である長世本人)

今月の一冊  岡田暁生著 『音楽の危機《第九》が歌えなくなった日』

『音楽の危機《第九》が歌えなくなった日』

岡田暁生/中央公論新社/ISBN(13)978-4121026064

コロナになって音楽も否応なしに、その形態を考えざるをえない事態は続いています。今もって何が正解かも分からず、まだまだ手探り状態が続いているといえます。

そんなコロナ禍中に、この本は音楽書の刊行ラッシュの口火を切ったとも言えます。内容についての是非は様々考える余地があると思います。ですが私にとっては今後の音楽を考えるのに充分な問題提起となりました。

特に第3章の「録楽」という概念にはとても興味がひかれました。

ぷりま音楽歳時記 17.嬰ハ短調

嬰ハ短調

嬰ハ短調は♯が4つ。平行調が全調の中でも特に明るいホ長調なので、その対比として、特にピアノではよく用いられる人気の調です。

<嬰ハ短調の曲>

ピアノソナタ第14番「月光」Op.27-2 第1楽章(ベートーヴェン)

明るさの象徴である「太陽」の対比としてふさわしいのが、まさに「月光」。ドイツの詩人かつ音楽評論家であったルートヴィヒ・レルシュタープは見事この曲にふさわしい愛称をつけたと思います。今回紹介するのは、1991年に録音されたポリーニの演奏。クールな魅力が特に光る演奏だと思います。

 

コロナ禍の今、音楽書が熱い

コロナ禍以降、すっかり家にいる時間も長くなり、いつも以上に私の読書熱が高まっています。その熱のせいかもしれませんが、コロナ騒動になってから、興味深い音楽書が次から次へと出版されているように思えてなりません。もちろんこの時期を狙ったわけでなく、執筆・編集と長い準備期間を経て、ようやく出版されたのが偶然この時期に重なった本も多いでしょう。ですが近年稀にみる音楽書の出版ラッシュは嬉しい限りで、私の読書はまるで追いつきません。

ここで思い出されるのが、欧州復興開発銀行の初代総裁を務めたフランスの経済学者で思想家のジャック・アタリです。アタリは芸術にも大変深い造形を持ち、その著作の中で、

音楽は予言である。そのスタイルとその経済組織のなかで、音楽は社会の残余のものに先んずる。

「ノイズ 音楽/貨幣/雑音」(15頁)-

と述べています。この出版ラッシュもきっと著者各々が無意識にこの現況を予知し出版時期を合わせたのではないかと勝手に想像の翼を広げています。

さて社会情勢が芳しくないと、芸術文化は衰えていくと一見思われがちですが、むしろ華開くこともあります。例えば、ショパンが活躍した19世紀前半のフランス。煌びやかなロマン主義の音楽が思い浮かびますが、当時は市民革命の激動期であり、社会情勢はロマンティックとは程遠かったといえます。現在も時代の激動期で転換点。こんなシビアな状況には音楽などの芸術による豊かな創造力が人々には必要不可欠に思えてなりません。

黒鍵ペンタトニック 「砂山」(中山晋平)

「砂山」(中山晋平)

文学か音楽かでその進路を悩んでいた中山晋平が、東京音楽学校に進学して何をしたかったのか?

郷里の兄への手紙にその一端が垣間見えます。「小生はピアノや唱歌がアマリ上等の口ではなけれど幾分文学的の素養があるため来年から特に技術部の外に楽歌部といふ主に作歌作曲の科を置いて貰へることに略交渉がまとまりかけて候」。晋平のいう「作歌作曲」とは高尚な芸術音楽ではなく人々が口ずさめる歌を作ることを指します。若き晋平には新たな分野を開拓すべく学校に交渉するまでの強い情熱がありました。(残念ながらこの交渉は失敗に終わりますが…)

卒業後、流行歌の若手作曲家として一躍台頭した晋平は、学生時代のその思いを実現に移していきます。折しも児童文学の機運も高まり、1918年に雑誌「赤い鳥」が創刊。従来の「唱歌」とは異なる新たな「童謡」が誕生します。晋平も1919年までには本格的に童謡の作曲に携わります。そして数々の名作を残すことになります。今回はその中で1922年に作曲した「砂山」を紹介します。この曲は晋平がお得意の5音階(ペンタトニック)で作られていますので黒鍵だけで演奏できます。なお作詞は北原白秋。同じ詩に山田耕筰も曲をつけているのは大変興味深いところです。

中山晋平の「砂山」(歌唱は渥美清)

山田耕筰の「砂山」(歌唱は同じく渥美清)

今月の一冊  市川宇一郎著 『リズムに強くなるための全ノウハウ』

『リズムに強くなるための全ノウハウ』

市川宇一郎著/ドレミ楽譜出版社/ISBN(13)978-4285150490

「私はリズム感がないので」と嘆かれる方が多いです。ですがリズム感自体は誰にも備わっています。問題はピアノなどの西洋音楽のリズムと日本人が古来より育んできたものとが大きく異なることです。

この本は、まず序章で「日本人のリズム的特徴」を理解してから、西洋的なリズム感を知り、実践的なトレーニングへと進んでいきます。

初版より四半世紀以上経ち、出版社の変更もありますが版を重ねてきた隠れたベストセラーです。

ぷりま音楽歳時記 16.嬰へ短調

嬰へ短調

嬰ヘ短調の調号は♯が3つ。主音が黒鍵の音で管・弦ともに鳴らしにくい調。黒鍵数が3つと微妙なので、ピアノでも弾きにくく、あまり人気がありません。

<嬰へ短調の曲>

交響曲第45番「告別」(ハイドン)

鳴らしにくい調であることを逆手にとったこの曲。終楽章では演奏中に次々と奏者が舞台から退場してしまう、まさに「告別」そのもの。さすがアイデアマン、ハイドンならではの曲です。今回紹介するのは、2023年のボン・ベートーヴェン音楽祭での映像です。

 

コロナ禍での新習慣

さてコロナ禍になって、接触感染対策の一環として、私はレッスンでの楽譜への書き込みをやめました。

その代わりに始めたのが、皆さんのレッスン曲の楽譜を予めスキャンしてiPadに取り込み、タッチペンで画面上にする書き込みです。その書き込みをレッスンの終了時にプリントアウトして皆さんにお渡ししています。(自分でプリント出来る環境がある方にはメールでデータを送っています。)

かれこれ2年以上続けてきましたが、コロナが収束した後もこの方法を継続しようと思っています。

その理由の第一は、レッスンの記録がしっかりと手元に残るからです。従来の直接書き込みだとレッスンを受けた皆さんには記録が残りますが、私の手元には残りません。ですから、次のレッスンでは、前回のレッスンで何をやったかを思い出すことから始めなければなりませんでした。ところが記録が手元に残っていれば、その作業は不要。前回からの引継ぎがスムースにできます。

理由の第二が皆さんの楽譜を汚さずに済むからです。やはり自己所有ではない楽譜に私の汚い字で書き込みをするのは、どこか抵抗がありました。ですが、今ではのびのびと遠慮なくタッチペンで自由に書き込みができ、私の精神衛生上とても良いのです。

我ながら面倒かつ回りくどい方法だと思いますが、今後もどうぞお付き合い頂ければ幸いです。

 

黒鍵ペンタトニック 「木綿のハンカチーフ」

木綿のハンカチーフ

前回の今月の一冊で取り上げた『ニッポンの編曲家』で歌謡曲における編曲家やスタジオミュージシャンにスポットライトを当てましたが、やはり何と言ってその中心は作曲家です。特に2020年10月に亡くなった筒美京平は、まさに「歌謡曲の大巨人」でした。氏の曲は私にとって幼少期からテレビなどで浴びるように聴いてきました。いわば私のルーツミュージックといっても過言ではありません。ですから以後、ここでは敬愛を込め「京平先生」と呼称します。

京平先生の作る曲は、世界最先端で流行するサウンドを取り入れつつも、日本人になじみやすいメロディであることが特徴の一つといえます。いわば洋食メニューなのに、ご飯とみそ汁がでてくる、いわば「定食」のような親しみがあります。そして数多くあるヒット曲では、ペンタトニック(5音階)で作ったものもかなりあり、この「黒鍵ペンタトニック」では、今後何曲も紹介することになるでしょう。

そのスタートを飾るのにふさわしいのが、「かすかべ親善大使」である太田裕美さんが歌う「木綿のハンカチーフ」でしょう。この曲は男女の手紙の往復でストーリーを紡ぐ松本隆氏の画期的な歌詞が注目されますが、京平先生の作曲技術も負けていません。冒頭の都会へ旅立つ男性のパートには、素朴なペンタトニックを充て(上記譜面)、田舎に残っている女性が登場するサビになると通常の7音階に切り替わり、男女の心象風景のコントラストを見事にメロディで表現しています。

このペンタトニック(5音階)と通常の音階(7音階)で対比する方法は、「上を向いて歩こう」とも共通し、ヒット曲の黄金パターンの一つといえるでしょう。

今月の一冊  川瀬泰雄他著 『ニッポンの編曲家』

『ニッポンの編曲家』

川瀬泰雄他著/DU BOOKS/ISBN(13)978-4907583798

歌謡曲において、作曲家・作詞家が注目されることは、ままあります。ですが、その周囲の編曲家やスタジオミュージシャンまでは、なかなかスポットライトは当たりません。この本では70&80年代に歌謡曲を支えた、そうした裏方スタッフの皆さんのインタビューを中心にまとめています。1曲がどのようなチームワークによって完成へ向かっていくのかが分かる良著です。

ぷりま音楽歳時記 15.ロ短調

<ロ短調>

ロ短調は、♯が2つ。白鍵の中でも特に不安定な「シ」が主音。16世紀以降になり、ようやく実際の曲でも用いられるようになりました。

<ロ短調の曲>

「白鳥の湖」より「情景」(チャイコフスキー)

言わずと知れた、チャイコフスキーの三大バレエの中の一つ。湖で泳ぐ優雅で儚い白鳥のイメージとロ短調のもつどこか不安定で物憂げな感じはとても相性がよいと思います。今回紹介するのは、カラヤン指揮、ベルリン・フィルによる1972年発表の演奏です。

心身ともに健康を目指していきたいものです

ピアノレッスンの仕事はほぼ内勤といえます。弾く時に辛うじて上半身は使うものの、どうしても運動不足になりがちです。人間の筋肉の7割が下半身に集まっているそう。ですから、ここ数年、意識的に下半身を動かし運動不足の解消に努めるようになりました。ただランニングだとハード過ぎて嫌なので、もっぱらのんびりとウォーキングしています。この1年は1日1万歩を目標にスマホの万歩計アプリを頼りに何とか継続しています。

歩くコースはどうしても似通ってしまい飽きがくるので、いつも新鮮な気持ちでいるために、ヘッドホンやイヤホンで、音楽を聴きながら歩いています。「今日は筒美京平にしよう、70年代のディスコ歌謡がいいな。」などと、聴く曲も日替わりにしています。すると「今日は何を聴くか?」ということがモチベーションとなり、今やウォーキングはすっかり日常の楽しみになってしまいました。いつも歩いているコースも、聴く曲が変化すると、風景も少しだけ違って見え、新たな発見もあったりします。この聴く曲の変化のおかげで飽きずに何とか継続できている気がします。

歩くようになって、夕食を終え、歯磨きを済ます頃には、強烈な睡魔に襲われるようになりました。本当なら、もう一仕事して考え事などもしたいところですが、とりかかってもいつの間にか寝落ちしていることが多くなりました。「コロナうつ」など取り沙汰されますが、心身ともに何とか健康をキープできているのも、運動と音楽のおかげといえましょう。こんな情勢ですが、少しでも元気にやっていきたいものです。

黒鍵ペンタトニック 「ゴンドラの唄」(中山晋平)

ゴンドラの唄」(中山晋平)

前回記した山田耕筰は、歌曲の作曲のみならず、日本初の交響曲を作り、交響楽団を率いるなど正統的にクラシック音楽の道を歩んでいきました。

その山田と、同い年で、同じ東京音楽学校出身の作曲家が中山晋平です。(ちなみに1908年に山田は卒業、入れ違いで同年、中山が入学しています。)

中山の歩みは山田とは対照的でした。中山は音楽か文学科で進路に悩む青年で、劇作家の島村抱月の書生を務めました。その傍らに音楽学校に通うという少し変わり種の音楽学校生でした。

その中山の作曲家としてのキャリアは島村主宰の劇団「芸術座」の舞台での劇中歌(現在でいうドラマ主題歌に相当)の作曲から始まります。「カチューシャの唄」「ゴンドラの唄」「さすらいの唄」と立て続けに、レコード・楽譜販売でヒットを飛ばします。今回はその中からペンタトニック(5音階)で作られたゴンドラの唄を取り上げます。

なおこの3曲とも歌唱してレコードに吹き込んだのは、「芸術座」の看板女優、松井須磨子でした。須磨子は1918年にスペイン風邪を患い急逝した島村の後を追ってしまいます。座長と看板女優を失った「芸術座」はそのまま解散します。

ですが中山晋平はこの一連の劇中歌のヒットを足がかりに近代日本の流行歌の礎を築いていきます。

 

1915年(大正14年)6月 松井須磨子歌唱によるレコード(ニッポノホン) 

1952年(昭和27年) 映画「生きる」劇中 志村喬による歌唱

 

 

今月の一冊(本)  黒澤明監督 映画『生きる』

映画『生きる』

黒澤明監督/東宝/EAN:4988104095794

今回紹介するのは、1953年公開、黒澤明監督の映画「生きる」です。作品中で主人公の志村喬が「ゴンドラの唄」を2度歌います。物語の中盤にジャズバーのシーンで市村俊幸のピアノ伴奏で歌うシーンがとても印象深く、私の心の中に残っています。この曲の作曲家、中山晋平は、公開年の12月2日にこの映画を鑑賞しています。「ひどく感動したようだ」という周囲の証言も残っています。この映画を見届けた晋平は同年12月30日にこの世を去っています。

ぷりま音楽歳時記 14.ホ短調

<ホ短調>

ホ短調は、♯が1つ。平行調のト長調と同様に開放弦が使えるので弦楽器で演奏しやすい調。音楽理論家マッテゾンはこの調を「深く沈み考えこむ調」と性格づけてもいます。

<ホ短調の曲>

ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 Op.64(メンデルスゾーン)

ホ短調の代表曲といったらまず挙げられるのがこの曲。ドイツロマン派、メンデルスゾーンによる大名作です。今回紹介する演奏は、ヴァイオリンがアイザックスターン、ガリー・ベルティーニ指揮、イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団による1986年のライブ録音です

一言でレッスンといっても

一言でテレビドラマといっても様々です。NHK朝の連続テレビ小説のように毎日15分ずつ半年間放送するもの、3か月を1クールで毎週1時間ずつ放映するもの、はたまた2時間以上の長尺でじっくり放送するものと様々です。内容にしても、紆余曲折の恋愛ドラマ、いつも通りの時間に解決する刑事ドラマ、謎が謎を呼ぶサスペンス、壮大なスケールの時代劇、きっと皆さんにも好みのタイプのドラマがあると思います。

こうしたドラマとレッスンは少し似たところがあると思っています。例えば長大な曲を丸一年かけて練習したい大河ドラマタイプの方。逆に1回のレッスンで1曲を済ませたい「水戸黄門」タイプの方もいます。また、3,4か月を1クールで1曲仕上げるペースで複数曲を同時併行していく方もいます。

一言でレッスンといっても、生徒さんそれぞれタイプも異なり、その内容も実は多岐に渡ります。一つのテクニックについて説明の仕方も人それぞれです。100%納得いくまで徹底的に伝えるケースもあります。また80%程度理解できたところで留めるケースもあります。

ただしそこでミスマッチが生じるのはよくありません。マッサージでいえば、患部を揉み足りないのは駄目ですが、強く揉み過ぎて痛くしても駄目なのと同じです。何事も丁度よい加減が肝要です。やはり気持ちよくレッスンが進んでいくのが理想です。それには教わる側、教える側の双方のコミュニケーションが欠かせません。レッスンにおける過不足等ありましたら、ご遠慮なくお声かけ下さい。

黒鍵ペンタトニック 「赤とんぼ」

「赤とんぼ」

前回も触れたNHK朝の連続テレビ小説「エール」が遺作となってしまった志村けん演じるのは小山田耕三。そのモデルは言わずと知れた山田耕筰です。ちなみに柴咲コウが同ドラマで演じるオペラ歌手、双浦環のモデルは三浦環。実際の二人の年齢はドラマとは逆で、三浦環の後輩が山田耕筰。東京音楽学校時代、「自転車美人」として学内のアイドルだった三浦。その憧れの先輩にとうせんぼうなどの悪戯をして冷やかすガキ大将の後輩たちの中に、山田がいたと三浦は述懐しております。

さて山田耕筰は、日本歌曲のモデルを確立した第一人者です。ここからは山田の弟子の作曲家、團伊玖磨の言葉を借ります。『山田耕筰は日本の作曲家として初めて、言葉と音の結びつきについて真正面から取り組み、そして考えぬいた末に「言葉の抑揚と旋律の抑揚の一致」「一音符一語主義」というシステマチックな理論を独力で作り上げました。さらに、その実践として膨大な歌曲を作曲しました。』(團伊玖磨:「私の日本音楽史」<P.273~274>)

言葉の抑揚とメロディラインが一致すると歌詞の意味が格段に伝わり易くなります。「赤とんぼ」はその好例で、後世に残したい童謡で、常に上位にランクするのもその証左といえます。ただし「一音符一語主義」はこのようなゆっくりとした曲には適するものの、より速い言葉、より速い音楽の動きが生まれなくなってしまうと團氏は指摘しています。このことは、日本語でロックンロールを唄う時に再びクローズアップされることになるのですが、それはまた別の機会で。

この「赤とんぼ」は明治の唱歌の作曲手法に倣って四七抜長音階の五音(ペンタトニック)で作られています。ですが、山田の作品で純然な五音階による曲は少数です。ドイツ留学で本格的に西洋クラシック音楽を学んだ影響もあり、あえてその使用を避けたのかもしれません。

1955年の映画「ここに泉あり」では本人役で山田耕筰が出演

映画中、「赤とんぼ」の演奏シーンも

今月の一冊 團伊玖磨著『私の日本音楽史』

『私の日本音楽史』

團伊玖磨著/NHK出版/ISBN(13)978-4140841013

この本は、1997年にNHKで放送された、作曲家・團伊玖磨氏によるテレビ講座のテキストに加筆したものになります。團氏は、「ぞうさん」「ラジオ体操第二」の作曲家としても私たちにもおなじみです。また、雑誌「アサヒグラフ」でエッセイ「パイプのけむり」を36年間に渡り長期連載するなど、随筆家としても筆が立ちました。なおこの本は絶版本ですが、中古本であれば比較的入手しやすいと思います。(2022年5月現在)

ぷりま音楽歳時記 13. イ短調

<イ短調>

今回より短調です。さて最初は調号なしのイ短調です。同主調が非常に明るいイ長調(♯3つ)なので、そのコントラストで一層悲しみが増すように感じます。

<イ短調の曲>

ピアノ協奏曲 作品16 第1楽章(グリーグ)

ノルウェーの作曲家グリーグによるこの曲、冒頭の劇的なピアノソロは、テレビなど「悲劇的」なシーンのBGMでよく耳にするように思います。今回紹介するのは、ルービンシュタインの演奏。1975年の映像で、当時88歳!翌年には演奏活動から引退、晩年の見事な演奏です。

アポロ的・ディオニュソス的

以下「おたより」2020年10月号(第13号)の内容を掲載いたします。

以前、ニーチェの処女作、「悲劇の誕生」を読みましたが、私には難解で内容の理解には程遠かったものの、芸術における「アポロ的」「ディオニュソス的」という対概念を知りました。

アポロとディオニュソスは共にギリシア神話に登場し、アポロは光明と明晰の神で、ディオニュソスは酒と陶酔の神です。ニーチェは『芸術の発展というものは、アポロ的なものとディオニュソス的なものという二重性に結びついているということだ。それはちょうど生殖ということが、たえずいがみあいながらも周期的に和解する男女両性に依存しているのに似ている。』と述べています。つまり理知的な「アポロ的」な面と、本能的な「ディオニュソス的」な面は、芸術にとって車の両輪でどちらも不可欠で、絶妙なバランスで共存した時に、芸術の華が大きく開くのだと、勝手に理解したつもりでいます。

そうなると、このコロナ禍で分が悪いのは「ディオニュソス的」な面です。三密空間で気分を上げて盛り上げるというのは、どうにもはばかれます。どこか冷静になって水を差さねばならず、つい「アポロ的」な面に偏りすぎるかもしれません。すると、どこかつまらぬものに、なってしまわないか?

来年の3月を目標に、発表会イベントを再開させようと思います。現段階では具体的な詳細までは見通せませんが、いずれにしてもコロナ対策を万全に期したいと思います。ただ、その時に気分がしらけず、少しでも心温まるよう工夫して実施したいと思います。(コロナ感染が収束するのがベストなのですが…)

黒鍵ペンタトニック 「船頭可愛や」

「船頭可愛や」

作曲家、古関裕而を主人公のモデルにしたNHK朝の連続テレビ小説「エール」の劇中にも度々登場した曲、「船頭可愛や」を今回は取り上げようと思います。

この曲は「利根の舟歌」に続いて作詞家、高橋掬太郎とのコンビで作った曲で、古関裕而にとっては出世作となりました。「『利根の舟歌』は短調だったが、『船頭可愛や』は瀬戸内海あるいは、遠洋漁業の男を想う歌なので、長調でいわゆる田舎節で作曲し、間奏には再び尺八を使ってみた」(『鐘よ鳴り響け』<54~55頁>)と古関氏が述べている通り、この曲は田舎節つまり「四七抜き長音階」のペンタトニックで作られています。

ただし古関氏の戦後の代表曲、東京五輪の「オリンピックマーチ」や高校野球の「栄冠は君に輝く」などでは、素朴なペンタトニックは使わず、半音階的なモダンな音使いで作曲しています。それもそのはず。古関氏は若かりし頃、近代フランス・ロシアの音楽に夢中で、地元・福島で開催されたレコードコンサートには欠かさず通ったとのこと。また、近代的なの管弦楽法の規範ともいえる作曲家リムスキー=コルサコフの弟子、金須嘉之進にも古関氏は師事し、モダンな音作りにも精通していました。

音丸による歌唱でヒットしました(1935年、昭和10年)。

それを気に入り、世界的なプリマドンナ三浦環もレコーディングしました。(1939年 昭和14年)

今月の一冊 古関裕而著『鐘よ鳴り響け』

『鐘よ鳴り響け』

古関裕而著/集英社文庫/ISBN(13)978-4087440591

今回は、NHKの朝の連続テレビ小説「エール」の主人公のモデルになった、作曲家・古関裕而の自伝を。私の勝手なイメージでは古関氏は「応援歌」の達人。プロ野球、巨人の「闘魂こめて」、阪神の「六甲おろし」も古関氏が作曲しています。(ちなみに中日の初代応援歌も。)たとえライバル同士であっても、党派を越えて作曲依頼に応じる古関氏の応援精神の由来に興味を持ち、この自伝を読みました。後半の劇作家・菊田一夫氏との対談で、古関夫妻の仲睦まじさを、菊田氏に暴露されているのが、大変ほほえましかったです。

ぷりま音楽歳時記 12.へ長調

<ヘ長調>

ヘ長調は♭が1つ。この調は、のどかな自然風景を描写するのに適していると思います。どこかオーガニックな雰囲気を感じます。

<ヘ長調の曲>

イタリア協奏曲 第1楽章(J.S.バッハ

この曲は強弱の変化をつけられる2段鍵盤のチェンバロを想定してバッハが作曲。バッハの鍵盤曲には珍しく作曲者本人が、f、pの強弱記号を明記しています。今回紹介する演奏は、カナダのピアニスト、グレン・グールドによる1959年の録音です。

以下この演奏の録音時の模様を記録したドキュメンタリー・フィルムです。

虎視眈々と次なる準備

ジャズでは第二次世界他薦中に、突如としてビバップという新たな形態が登場します。それまでは、大編成のビックバンドによるダンス音楽であるスウィングがジャズの中心でした。対してビバップは小編成の即興演奏で、テンポも速く、音楽に合わせて踊ろうにも踊れない。人々は音楽に注意深く耳を傾ける他ありません。ジャズが「踊る」音楽から「聴く」音楽へ変化したのです。

元々ビックバンドで演奏していたメンバーは譜面通りに演奏するスウィングに飽きていました。ステージ仕事の後、そのウサ晴らしのためにジャムセッションをしたのが、ビバップのきっかけです。録音技術の発展と共に歩んできたジャズはその最初期から録音が残っています。が、ビバップの草創期は中抜けしてしまいます。なぜなら1942年8月から2年強、音楽家ユニオンがストライキを起こし、録音を拒否したからです。

ストライキ明けの戦後、それまで潜伏して熟成されたビバップのジャズレコードが一挙に発売され、人々は驚かされたのです。そしてここからモダンジャズの時代の幕が上がるのです。

さて、ここからは私の勝手な空想です。当時と現在のコロナ禍の状況はどこか似通っているように感じています。現在、音楽家の多くは潜伏せざるを得ない状況が続いています。が、コロナ収束後、それまで地下で蓄えられたエネルギーが一気に噴出し、新たな音楽の時代がやってくるのではないか?

そして今、新時代に向けて虎視眈々と準備を進めていくことこそ大切なのだと思っています。あくまでも前を向いていこうと思います。

ビバップ草創期1941年5月の貴重な録音「スウィング・トゥ・バップ(別名:ミントン・ハウスのチャーリー・クリスチャン)」

黒鍵ペンタトニック 「うちで踊ろう」(星野源)

「うちで踊ろう」(星野源)

これまでの災害であれば、チャリティイベントなどで音楽はいち早く社会貢献出来ました。ですがこのコロナ禍では、「三密」の問題もあり、その力が発揮しにくかったといえます。

そんな中ミュージシャン星野源氏がインスタグラムで発表した「うちで踊ろう」は多くの人とのコラボレーションで明るい話題となり、音楽が果たした数少ない社会貢献だったと思います。

ではなぜコラボレーションが多くの人にされたのか?この曲のメロディがたった4音でできているのがその要因と考えます。しかも四七長音階のペンタトニック(5音階)の中にこの4音は含まれます。

ブルースやジャズの即興演奏(アドリブ)の基礎はペンタトニックです。5音だけで即興をする分には、どれだけ無茶をしても破綻することなくセッションはできます。こうしたブラックミュージックをルーツに持つ星野氏が、このようなことを踏まえ即興的にコラボレーションし易くするためにあえて4音で作曲し、「お題を出した」のだと思われます。

「恋ダンス」でもおなじみの『恋』をはじめ、星野氏は数々の曲で五音階で作曲するペンタトニックの使い手です。なお元々バンド活動をしていた星野氏のソロデビューを促したのが、前回の「星めぐりの歌」の時にも触れた細野晴臣氏でもあります。なかなかいろいろと意味深な気もします。

今月の一冊 渡辺裕著『聴衆の誕生』

『聴衆の誕生』

渡辺裕著/中公文庫/ISBN(13)978-4122056077

今回は、四半世紀ぶりに私が読み直したばかりの本を紹介いたします。このコロナ禍で音楽の聴取には大きな変化が生じています。これまでは当たり前のようにあったコンサート文化は今、大きな打撃を受けています。この本はバブル全盛期に書かれたポストモダンの音楽文化論で、近代でのコンサート文化の成立について丁寧に記されています。コロナ後の音楽文化を考える上で、手がかりになる何かがこの本には潜んでいる気もします。

ぷりま音楽歳時記 11 .変ロ長調

<変ロ長調>

変ロ長調は♭が2つ。ドと吹くとシ♭が実音として鳴るB♭(ベー)管を中心に管楽器が得意とする調。ストレスなく気持ちよくブラスが響きます。

<変ロ長調の曲>

展覧会の絵』プロムナード(ムソルグスキーラヴェル

ムソルグスキーが作ったピアノ曲を「管弦楽の魔術師」としても名高いラヴェルがオーケストラのためにアレンジ。冒頭の管楽器トランペットの響きがとても印象的です。1980年4月東京のNHKホールでのチェルビダッケ指揮、ロンドン交響楽団の演奏を今回は紹介いたします。

最新ブログ

2025年4月13日
今月の一冊『見えないものに、耳をすます』
image
『見えないものに、耳をすます―音楽と医療の対話-』 またしても対談本の紹介です。2017年にEテレ「SWITCHインタビュー達人達」の放送... 続きを読む
2025年4月6日
12の鍵盤全て触りましょう~ナチュラルポジション全調練習
image
西洋の七音階、長調と短調は、12の鍵盤どの音からでも構成できます。その長短調全24調を身覚えてしまえればこれ程心強いことはありません。教則本「ハ... 続きを読む
2025年3月30日
黒鍵ペンタトニック「ファイアークラッカー」(Y.M.O.)
image
「ファイアークラッカー」(Y.M.O.) さて今回からいよいよY.M.O.(イエロー・マジック・オーケストラ)を取り上げたいと思います。次... 続きを読む

ブログをすべて見る

最新ブログBlog

2025年4月13日
今月の一冊『見えないものに、耳をすます』
image
『見えないものに、耳をすます―音楽と医療の対話-』 またしても対談本の紹介です。2017年にEテレ「SWITCHインタビュー達人達」の放送... 続きを読む
2025年4月6日
12の鍵盤全て触りましょう~ナチュラルポジション全調練習
image
西洋の七音階、長調と短調は、12の鍵盤どの音からでも構成できます。その長短調全24調を身覚えてしまえればこれ程心強いことはありません。教則本「ハ... 続きを読む
2025年3月30日
黒鍵ペンタトニック「ファイアークラッカー」(Y.M.O.)
image
「ファイアークラッカー」(Y.M.O.) さて今回からいよいよY.M.O.(イエロー・マジック・オーケストラ)を取り上げたいと思います。次... 続きを読む

ブログをすべて見る