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今月の一冊 吉松隆「調性で読み解くクラシック」

「調性で読み解くクラシック」

(吉松隆著/ヤマハミュージックメディア/ISBN(13) ‏  978-4636909302)

当ブログのコーナー「ぷりま音楽歳時記」のアイディアの元になったのがこの本です。「調性」(西洋音楽の音階の体系)はなかなか理解しにくいところです。楽典を読んでも分かるようで分からない…。この本では様々な角度から「調性」についてアプローチしていて、説明もかゆいところに手が届くような非常に親切な本です。私が特に興味を持ったのが、第2章の「楽器からみた調性」です。楽器によって、得手不得手な調があるという視点は、まさに目から鱗でした。

ぷりま音楽歳時記 2. ト長調

<ト長調>

ト長調は、#が1つ。明るいトーンで健康的な印象があります。弦楽器が鳴らしやすいのも特徴です。

<ト長調の曲>

ゴールドベルク変奏曲/J.S.バッハ

バッハの弟子、鍵盤楽器奏者のゴールドベルクが不眠症で悩む貴族のために演奏したという逸話から、この曲の愛称に。

紹介するのは、この曲を一躍人気曲にした立役者グレン・グールドの演奏。グールドはこの曲をデビュー時にモノラルで、晩年近くにステレオで、二度、スタジオ録音をしています。今回は2度目の録音時に平行して記録された映像を紹介します。(6:20位から演奏が始まります。)

深く掘り下げるためのあの手この手

今回は音楽から少し逸れた話から。私が高校生の時に強烈なインパクトを受けたのが、駿台予備校の名物講師であった奥井潔先生の英文読解の授業です。(短期講習のわずか数日間ではありますが。)

課題は数行の短い英文で、表面的な直訳や文法、単語についての解説だけであれば、授業はわずか数分で済むはずです。ですが、奥井先生の講義はそこでとどまりません。英語特有の表現をいかに的確な日本語表現に置き換えるか?となると、もはや英語ではなく、国語の講義へと化していきます。また、課題英文は名文ばかりなので、その歴史的背景について解説がはじまれば、もはや英米文学史へと変貌していきます。わずかな英文から、縦横無尽にインテリジェンスのクモの巣を張りめぐらせる先生の講義は、多感な少年期の私には大変刺激的なものでした。

この経験は、その後の私の音楽の学び方に多大な影響を与えました。ピアノの場合、楽譜通りに運指ができてもそれではまだ道半ばです。曲を深く理解するには、やはり反復練習をして掘り下げる必要があります。ただ繰り返すだけではやはり飽きますので、この時の経験を活かし様々な角度から掘り進めるようにしています。例えば、楽曲分析をしてみたり、同じ作曲家の同時代の他の器楽作品を聞いたみたり、同時代の美術作品を鑑賞したりもします。

やはり行き詰る時もありますが、そこは諦めずにあの手この手を尽くしていくと、ある日突然、源泉を掘り当てます。まさに知の泉が湧きだす瞬間です。このブレイクスルーこそ、練習を続けてきた甲斐を感じる時でもあります。そしてその時に身に着けた技術は、どんな曲にも通用する普遍的な底力に繋がるように感じています。

(2019年11月第2号)

黒鍵ペンタトニック 「蛍の光」

「蛍の光」

1789年(明治12年)に、文部省音楽取調掛が創設され、学校教育に西洋音楽が本格的に導入されます。

1884年(明治17年)に小学生用に編纂された「小学唱歌集」が音楽取調掛によって発行されます。全33曲が収録され、その中に「蛍の光」(当時のタイトルは「蛍」)もありました。他にも「見わたせば」(現在の「むすんでひらいて」)、「蝶々」、「君が代」などよく知られた曲も収録されていました。

当時、まだまだ国産のメロディは少なく、輸入したメロディに日本語の歌詞をのせることが一般的でした。今まで挙げた4曲でも「君が代」以外は外国曲になります。「蛍の光」はスコットランド民謡、「むすんでひらいて」はフランスのルソー作曲、「蝶々」はスペイン民謡といった具合です。

しかも当時の人々にとっては、西洋の「ドレミファソラシ」の7音階は難しく、もともと日本にあった音階に近い、4番目「ファ」と7番目「シ」を省略した「四七抜き音階」が重用されます。「蛍の光」は「四七抜き音階」を用いた最初期の唱歌であり、現在も卒業式や閉店時のBGMとして親しまれ続けています。

黒鍵ペンタトニック はじめに

明治になり西洋音楽が本格的に導入されおおよそ150年。導入当時、人々は西洋の「ドレミファソラシ」の7音の音階にはなかなか馴染めませんでした。そこで従来の音楽との違和感ができるだけないように、2音を省いてできる5音の音階、ペンタトニックが重用されました。ペンタトニックは、唱歌や童謡はもちろん、演歌やポップスなどでも用いられ、現在まで広く愛用されています。

このコーナーでは、黒鍵の5音だけで構成される音階(四七抜き長音階、二六抜き短音階)を「黒鍵ペンタトニック」と呼び、毎月1曲楽譜とともにその曲にまつわるエピソードを紹介します。

もちろん楽譜のメロディは全て黒鍵で弾けます。伴奏には、どうぞお好みの黒鍵を即興でお使いください。

今月の一冊 芥川也寸志「音楽の基礎」

「音楽の基礎」

(芥川也寸志著/岩波新書(E57)/ISBN(13)978-4004140573)

この本は新旧入れ替わりが激しい新書にもかかわらず、初版の1971位年から、おおよそ半世紀も現役で売れ続けているベストセラー本です。著者は作曲家で、かの文豪、芥川龍之介の実子でもあります。言葉では説明しにくい音楽理論の基礎を分かりやすく、しかも作曲家としてのオリジナリティある視点からも描かれていて、とても面白く読み進められます。私は冒頭の「静寂」が特に好きな文章で、度々読みかえしています。

今月の一冊 はじめに

「今月の一冊」は毎月発行するおたよりの1コーナーです。

日々の限りあるレッスン時間では、どうしても演奏指導に追われてしまいます。ですが日々の練習に加え、幅広く音楽に触れることはとても大切だと思っています。このコーナーでは毎月、音楽に関係するおすすめの本や映画などを紹介していきます。日々のレッスンに少しでも彩りが添えられれば幸いです。

ぷりま音楽歳時記 1. ハ長調

<ハ長調>

ハ長調は、#や♭の黒鍵もなく、すべて白鍵だけで構成されています。純白、純真無垢で、とてもピュアな響きになると思います。(あくまでの主観ですが…)

<ハ長調の曲>

ビル・エヴァンス/ピース・ピース

ジャズピアニスト、ビル・エヴァンスドキュメンタリー映画を観た時に印象に残ったのが、このピアノソロ曲。左手はシンプルな和音伴奏のループで、右手はドビュッシーなどの印象派の作曲家に通じる美しい響きで大変心地のよい曲です。

ぷりま音楽歳時記 はじめに

「ぷりま音楽歳時記」は毎月発行するおたよりの1コーナーです。

普段私たちが接する音楽で主に用いられる音階は、12の長調と短調です。この「12」は日時を表す単位でもあります。

そこでこのコーナーでは12の長調と短調を「季語」になぞらえ、毎月一つの調を取り上げ、その調を用いた音楽を紹介していきます。

「楽云楽云鐘鼓云乎哉」をめざして

今月より毎月おたより出すことにしました。

普段のレッスンではどうしても弾くことの指導に目一杯時間を使ってしまいます。本当は少し脇道にそれて、音楽を聴いてみたり、音楽に関係する本や映画、音楽理論などの話が出来れば、より彩りある充実したレッスンになると常々思っておりました。このおたよりがその役目の一端を担ってくれればと思っています。拙い文章になりますが、どうぞおつき合い下さい。

さて、タイトルの漢文は、孔子の論語からの引用です。読み下すと「楽(がく)と云(い)い楽(がく)と云(い)うも鐘鼓(しょうこ)を云(い)わんや」となり、意味は「音楽、音楽というが、ただ鐘や鼓を鳴らせばよいのではない」と訳せるのだそうです。2000年以上も前の言葉ですが、現在、私達がピアノ弾く場合にも充分あてはまるように思えてなりません。

ピアノは所定の鍵盤を押せば、ひとまず音は出るので、何となく音楽らしくなるまでは比較的簡単な楽器です。ですが、きちんと仕上げようとすれば奥深く、どこまでも掘り下げられる難しい楽器になります。下手にその深みにハマるとすぐに息詰まってしまいます。

上手に「深める」ためにも、同時に進めたいのが「広げる」作業です。CD、TV、ラジオ、インターネット、コンサートなどで積極的に音楽に触れてみましょう。そして未知なる音楽への興味・関心も大きく広げていきましょう。広く知識や経験が培われれば、多少深みにハマったとしても、また別の角度からアプローチして掘り下げ直すこともできます。

このおたよりが、少しでもみなさんの音楽経験を豊かに「広げる」きっかけになれれば幸いです。

(2019年10月第1号)

 

 

ブログをはじめます

教室では2019年10月より、毎月『楽云楽云鐘鼓云乎哉』というおたよりを生徒の皆さんに配布しています。

このブログではそのバックナンバー1号(1月)分を、月に4回に分けて更新していきます。どのような教室かをお知り頂く参考として、ぜひお読みいただけたら幸いです。

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